日本精神保健福祉士協会
会長あいさつ
<2025/01/27>

2024・2025年度 会長あいさつ

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 公益社団法人日本精神保健福祉士協会のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。2024‐2025年度の会長を務めます田村綾子と申します。会長を拝命して3期目となります。

 私たちは、「すべての人のこころの健康と幸せなくらしを実現できる社会」を目指して活動する精神保健福祉士の全国規模の専門職団体です。1964年に日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会として創設され、多職種や利用者のみなさまには「PSW(Psychiatric Social Worker)」という名称で長らく親しまれてきました。その後、1997年の精神保健福祉士法の制定に伴い、国家資格名を冠した団体に名称変更し、公的発言力の強化や社会的責任の明確化を目指して公益社団法人化しました。60年以上の歴史を有する本協会の中心的な目的は、この国に暮らす人々の精神保健福祉の向上と精神障害者の社会的復権・権利擁護であり、2024年現在12000人を超える構成員をはじめ、各都道府県に設置した47支部とともに目標達成に向けた各種事業を展開しております。

 私が大卒後に神奈川県の民間精神科病院でPSWとしての実践を始めたのは平成のバブル期で、人々のメンタルヘルスに対する関心はさほど大きくありませんでした。その後、精神科病院中心から地域生活中心へという国の政策転換や、少子高齢社会の進展と長引く不況、大規模自然災害の多発など社会情勢の変化に伴い、人びとのメンタルヘルス課題への支援ニーズが増幅し、また精神障害者の権利擁護や地域生活支援の充実を含めて共生社会の実現が求められるようになりました。さらに、現代は、生きづらさや将来への不安を抱えて心の健康を損なったり不調が長期化し、生活に支障をきたす人が増えています。

 本協会では2021年9月、コロナ禍の最中に「すべての人にWコノ邦ニ生キル幸セ“を。」というスローガンを掲げ、精神保健医療福祉の将来ビジョンを策定しました。ご覧いただくと、精神保健福祉士の対象範囲の幅広さと、日本社会が抱える精神医療保健福祉の多様な問題がお分かりいただけると思います。実際、私たちの職場は、精神科医療機関(病院・診療所)や障害福祉サービス事業所をはじめ、学校教育場面、司法分野、産業保健分野などに拡大し、幅広い役割が期待されています。そこで本協会では全国組織としての地の利を活かし、実践知の集積に基づく政策提言を行い、また提言を実行できる専門的資質を担保すべく研修企画や研鑽ツールの開発等を行ってまいりました。すでに10万人を超える精神保健福祉士の有資格者がこれらのシステムを十分に活用できるよう、入会者数の増加や都道府県・近隣地区同士の連携強化、精神保健福祉士を養成する大学・専門学校への働きかけ等にも組織的に取り組んでおります。

 さて、国内では自然災害の頻発や格差の拡大、また世界に目を向けると戦争や侵略、差別や排除などにより、いのちやくらしの安寧が脅かされる事態が増しています。将来に希望を抱きづらく、寛容さに欠ける社会への不信は人びとのメンタルヘルスにも影響を及ぼし、いじめや不登校、若者の自死者数の増加など痛ましい事態が引き起されています。他方で2024年は、旧優生保護法の違憲判断が最高裁大法廷で下され、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞するなど、いのちの尊厳の尊重と世界平和の実現を希求し行動し続けることの意義を再確認できる年でもありました。

 現代社会においてメンタルヘルス対策は欠かせない課題です。しかし、単なる対策に留まらず、心の平安や精神的健康の増進のうえで、その人が求める幸せな暮らしを実現できますよう、今後とも私たちはソーシャルワークを展開していきます。また、精神障害のある人びとも地域住民として包括的な支援を受けられることや、必要な方が適切に精神医療にアクセスできるよう体制を整備することをはじめ、長期入院者の退院促進や精神障害者の権利擁護の充実は、本協会の存在意義そのものであり、重要かつ積年の課題です。これらの課題については、精神保健医療福祉に関わる多職種や関係団体のみなさまとも共有できるものと確信します。

 本サイトを通して本協会の活動や情報を引き続き発信してまいりますので、みなさまからのご意見やご要望をお聞かせいただき、ご指導を賜りますようよろしくお願いいたします。

公益社団法人日本精神保健福祉士協会
会長 田村 綾子