<2006/12/13>
2006年9月30日(土)、高知市内にある「ふくし交流プラザ」にて、社団法人日本精神保健福祉士協会高知県支部設立記念講演を高知県精神保健福祉士協会主催、社団法人日本精神保健福祉士協会他の後援で開催しました。
講師には山本譲司氏(知的障害者入所施設支援スタッフ/元衆議院議員)を迎え、「塀の中にいる障害者との関わりから見えてきたもの、そして対人援助職に求めるもの」をテーマにご講演いただきました。講師や精神保健福祉に関心をもった一般の方が58名、会員が61名で合計119名の参加がありました。
刑務所には何らかの障害を持った方が多く(統計では平成16年の新受刑者の16人に1人が精神障害者あるいは知的障害者)、その処遇は障害のない一般服役者同様、懲役による工場作業を行います。しかし、懲役による工場作業が行えない場合、未就学児にもできる簡易作業が与えられます。また、その作業もできない場合、独居房に放置されたり、薬により鎮静化した状態でおかれるそうです。
このような何らかの障害を持った方が刑期を終えて社会復帰しようとしても、家族から受け入れを拒否されることも多く、受刑すると障害年金はうちきりになるなど生活資金もなく住居の確保さえも困難で、生きていくために軽犯罪(窃盗や無銭飲食等)を起こし、再び刑務所で服役するケースが多いとのことです。福祉不在の刑務所では障害を持った方が刑期を終えても何のフォローもなく塀の外に出されるため、これでは刑務所に戻っても仕方のないように感じられたそうです。増加する受刑者を受入れている刑務所は過密状態でマンパワー不足が続いており、最低限度必要な医療や福祉も届かないなど多くの問題が山積しており、現代社会の抱える問題が刑務所に凝縮されているようです。
講師の熱のこもったお話を聞いているうちにあっという間に講演終了時間をむかえました。今の私たちはソーシャルワーカーでありながら、社会に存在する数多くの矛盾が見えてなかったり、視野が狭くなったり、諦めたりしているのではないかと反省しました。また、既存の制度や枠組みにとらわれず、必要なものを創り出す力も必要です。まず、障害者への理解が深められるように社会に働きかけることが共存への第一歩です。
今後もこのような一般の方も交えた研修会等を企画し、微力ながらも共存する社会をめざして力を尽くしていきたいと思います。
(文責)高知県精神保健福祉士協会 会長 小松 須美