お知らせ

<2021/03/10>

【構成員の皆さまへ】「生活保護引き下げ違憲東京国賠訴訟」を傍聴してきました(東京都)

 北海道・静岡の「新生存権裁判(いのちのとりで)」傍聴の報告を受け、東京においても身近で展開されている訴えに耳を傾けていく必要があると考え、公判の情報を調べて傍聴をしてきました。
 そこで知ったのは、「新生存権裁判(いのちのとりで裁判)」以外にも生活保護基準引き下げの違憲を訴える裁判が都内で行われているということでした。
 今回傍聴してきた原告団は2015年6月に提訴したグループで、2013年8月1日以降、1年8カ月というわずかな期間に3回にもわたって生活保護費が引き下げられたという事実を忘れないために「東京はっさく訴訟」という愛称のもと33名の原告により訴訟をスタートしてきたそうです。
 「いのちのとりで」も「はっさく訴訟」も、受給者の人権尊重を前面に押し出した憲法訴訟です。
 扶助費の加算部分ではなく、基盤である保護基準「本体」そのものを引き下げることがどういう意味を持つのか、精神保健福祉士である私たちにとっても非常に身近な問題であり、生活保護を利用されているクライエントの生活を直撃することは容易に理解できますし、黙認できない実情です。
 今回私たちが傍聴してきた公判は原告の意見陳述の回であったため、基準引き下げ前と引き下げ後でどれほど具体的に生活が圧迫されたのか、原告個々の生活事情が語られ、とてもリアルで切実な日々の苦境をうかがい知ることとなり、胸に迫るものがありました。
 このように生活保護基準の「本体」の合憲性が正面から争われるという点においては朝日訴訟以来であり、憲法訴訟として非常に重大な裁判と言えると思います。
 保護費基準引き下げは受給者の生活を脅かす「違憲」であるということについて多くの国民が注目していること、正されるべきだとの世論が醸成されることが、裁判を勝ち抜くための重要な要素です。
 「生きる権利」を守っていくソーシャルワーカーとして、ぜひ、構成員の皆さまにもご自身の地元での裁判の行方に関心を寄せて、裁判の傍聴やカンパなど、裁判に勝つために共にできることについて一緒に取り組んでいただければと思います。

公益社団法人日本精神保健福祉士協会
副会長 洗  成子

■2020年12月23日 東京地裁 生活保護基準引き下げ違憲裁判 傍聴の感想

< 沖野 孝栄(愛誠病院 精神保健福祉士)>

 裁判の傍聴は初めての経験だった。抽選を想定して傍聴券が配布されたが、結局10人程しか集まらず希望者全員が傍聴することができた。大きな法廷に対してわずかな傍聴人の数であることに周知の低さを感じた。

 裁判では原告の三人の意見陳述と反対尋問が行われた。それぞれの方が仕事をしながら疾患を抱え、生活費にかかる出費を抑える努力をされている話を聞いた。特に印象的だったのが皆、食費を切り詰めるために遅い時間にスーパーで見切り品を購入し品数を減らしたり、食事の頻度を減らしているという話だった。保護費の基準が引き下げ前に戻ったら「外食がしたい」との声も聞かれ、自分が当たり前のように考えていた生活とのギャップにショックを受けた。

 原告の語る切実な生活苦のお話を、裁判官はどれだけ現実的なイメージを描くことができているのだろうか。生活保護を受けていれば日常生活が成り立っているというのではなく、当事者に様々な我慢や努力を強いていることを伺い知ることができたが、メディア等による生活保護バッシングなどのネガティブな情報による影響から、世間の多くの人に正しい理解がされていないであろうことに残念に思う。

 人々の暮らしの多様性に対し、どのような制度や施策でも穴や抜け目は出てきてしまうだろう。その様な不備となるものを正していく働きかけは私たちソーシャルワーカーの任務のひとつであり、個人の問題ではなく社会問題として世の中に広く意識・関心を持ってもらうことが必要であると考える。私自身も経済的に困窮されているクライアントの個別の状況を見過ごすことなく、目の前の方の「当たり前に生きる権利」についての視点を忘れずに生活を守る支援を行っていきたいと改めて感じた。

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