おしらせ

事業実施報告/2019年度ブロック災害対策連絡会

 本協会では、2015年度から4年にわたるモデル事業として「ブロック災害対策連絡会」を、2018年度には全国の災害対策委員(会員ページ)を対象にした「第1回全国災害対策委員講習会」を実施してきました。

 今年度は、本協会の全ブロックにて、「ブロック災害対策連絡会」を開催しました。この連絡会は、「公益社団法人日本精神保健福祉士協会災害支援ガイドライン」(2016年6月Ver.2)に基づき、災害時に備えて、ブロック内での平常時の連携が図れるよう、災害支援ガイドラインを活用し、災害対策委員の役割を確認するとともに、ブロック内連携の構築を目的としたものとなっています。

 本ページでは、各ブロックの出席者または運営する組織強化・災害支援体制整備委員会委員より、会場ごとの感想を掲載します。

北海道ブロック 2019年11月9日(土)開催

     

竹内 亮平/三愛病院(北海道)

 札幌で開催されました「2019年度ブロック災害対策連絡会」に参加させて頂きました。

 今回の連絡会の約1ヶ月前に関東や東北に甚大な被害をもたらす台風災害が起きました。このたびの台風により被害を受けられた皆様、心よりお見舞い申し上げます。1日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

 私は災害対策委員という立場での参加であり、私の担当地区には昨年9月6日に発生した北海道胆振東部地震により多くの被害があった厚真町、むかわ町、安平町があります。約1ヶ月前の台風災害といい、日本では近年稀に見る大規模災害が繰り返されている状況があり、個人的にも関心の高い分野でありました。

 講義の中では、「災害対策委員の役割」と「精神保健福祉士による災害支援活動と役割」について重点的に学びました。災害対策委員の役割として、災害支援ガイドラインに記載されているメーリングリストを活用した情報収集と発信について説明され、災害対策委員として大きな役割となる事が確認されました。私個人としても、日々のメーリングリストによる全国の災害対策委員からの情報は、日々の平時においても常に災害を意識すべきことを再確認できますし、自分自身のできることや災害対策委員の役割について、自分事として感じられます。北海道胆振東部地震にて私自身が情報発信した際に多くの方からレスポンスがあり、全国の災害対策委員の方としっかり繋がっているんだという実感があったことを思い出します。

 研修会の後半は災害時の対応方法についてグループワークを行いました。実際に災害が起きた事を想定し、何ができるのか、何をすべきなのかについて話し合いました。最も印象に残ったことは、「平時より連携がとれていなければ災害時にはその連携不足がより顕著に露呈される」ということです。災害対策は組織強化にも繋がるという考えがあることが実感でき、平時の組織内連携・組織強化を意識した活動が重要であることが分かりました。

 今回の連絡会を機に、改めて災害対策の重要性を実感することができました。災害対策は、なかなか自分事として捉えられない分野のひとつです。大規模災害多発地帯となりつつある日本において、災害はいつでもどこでも自分事であるという認識を持ち、同様の考えを多くの会員にも伝えられる様に日々の支部活動に尽力していきたいと思います。今回の連絡会においてご多忙の中、貴重な経験をさせて頂きました事務局の皆様、講師の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

東北ブロック 2019年12月1日(日)開催

2020年3月のPSW通信No.225にて、報告記事掲載

関東・甲信越ブロック 2019年11月16日(土)開催

       

松田 裕児/成田市社会福祉協議会 暮らしサポート成田(千葉県)

 2019年11月16日に開催された関東・甲信越ブロック災害対策連絡会には千葉県支部からは災害対策委員2名で出席をした。千葉県は2019年9月9日の台風15号および10月25日の大雨により地域によっては甚大な被害を受けており、身につまされる中での当連絡会への出席であった。また、日本精神保健福祉士協会には募金活動を展開していただき全国の構成員からは暖かい声援や寄付をいただいている最中でもあり、この場をお借りして感謝とお礼を申し上げる。

 なお、当連絡会には、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県支部の方々も出席され、台風19号および大雨等によって多くの他都県が被災しており、講義と演習等を通じ災害支援について互いに学び合うと共に情報共有をする機会とすることができた。

 講義1は、講師の横山基樹氏(組織強化・災害支援体制整備委員)から「災害時の実践例」について教示いただいた。茨城県は台風19号により局所的に被害を受けているが2017(平成29)年にも鬼怒川の氾濫により常総市で水害の被害を受け、当該県協会としても支援活動にあたられた経験を有されているため、その実践を改めて聴講した。実は、昨年度は第1回全国災害対策委員講習会が開催され、その時から茨城県協会の取り組みが印象的であった。具体的には、有事の際の支援活動費を確保するため繰越金を積み立て基金化し予算執行ができるような体制整備がなされている。予算化の過程においては、会費を下げそれでも繰越金が発生することを示した上で、災害支援以外の目的であっても流動的に拠出できる仕組みを作られていることは学びが多かった。また、構成員や会員の安否確認をする役割が支部にはあるが一般会員にも名簿を配布していることは災害時にも関連しており、個人情報の取り扱いが難しい時代ではあるが、その必要性を改めて覚えることができた。前述の予算措置については、個人的に昨年と異なり被災県としては強い関心がある事項で、1年前に同じことをお聴きしているが、今回は事実切迫感が異なっており、自身の災害支援に対する認識や取り組みが浅かったことに気づかされた。他県の委員からも予算使途に関する質問も多く出され、支援者支援ではなく一般ボランティアに従事した会員に日当や交通費を支出するのかというより具体的な検討をすることができた。その他、発災後の県協会や支部として災害対策本部を設置する基準や時期、あるいはその本部を閉じることについても話題となり被災県として非常に参考になる内容であった。

 講義2は、講師の島津屋賢子氏(組織強化・災害支援体制整備委員)から「災害対策委員の役割」について教示いただいた。1995年の阪神淡路大震災を契機とした災害支援ガイドラインの作成から改定に至る経緯を知ることで、現ガイドラインの内容は構成員が活動しやすいよう融通性を重視したものであることを教わった。また、全国の災害対策委員が平時から使用できるメーリングリストが存在しているが、発信や交流がしやすくなるように考えられ設置されていることを知ったため、災害対策委員はより積極的に活用していく役割があるということを気づかされた。他団体では会員や構成員等の安否確認までは行わないところもある中、日本協会としては構成員一人ひとりを大切にするといった理念からかと思われるが支援者支援を重視していることについて再認識することができた。それから、災害対策計画は各支部各協会が職能団体として迅速な対応ができるために策定するものであるが、平時の災害対策委員の活動や有事の際の災害本部設置基準づくり、あるいは構成員の安否確認の方法等を確保しておくものであることから、正に災害支援体制整備は組織づくりであるということを知ることができた。

 講義3は、講師の鴻巣泰治氏(元災害支援体制整備委員)から「災害支援活動に関わる平常時及び災害時の連携体制」について教示いただいた。講師の豊富な災害復興支援活動の中から支援者支援を意識することの重要性を教わった。例えば、被災地に限らず地域が異なれば同様の制度であっても運用方法やマンパワー等に違いがあるのは当然のことで、その基本的な理解がなければ押しつけや持続性に懸念のある提案をしてしまう迷惑支援者にならないよう、留意しなければならないということであった。被災地の風土や文化を尊重し、支援に赴いた者が普段地元で使用している言葉にも留意が必要という話をうかがった。講師からは、好事例とみられる支援実践だけではなく、自身の支援がうまくいかなかったという経験談も示され、改めて災害支援の難しさを感じる時間となった。

 演習は、各県の災害対策委員間で「災害支援活動に関わる平時及び災害時の連携体制」をテーマとして、自団体の災害対策計画作成の進捗確認を行い、有事の際に県協会・県支部からの情報発信および会員の状況をどのように得るべきかといった仕組みについて現状と課題を出し合い解決策についても意見交換をすることができた。情報発信・収集に関しては、ホームページの活用で災害専用フォームを整えているところや加入者が少ないという課題はあるがメーリングリストの活用、フェイスブックを運用しているところもあった。今年は災害が多発しているため災害に対する関心は高いとみられるが、数年来県協会で災害に関する研修会を開催しても参加者が集まらないという災害対策委員が抱える悩み等も共有できた。県単位の職能団体として行政や他団体と平時からどのようなつながりを有しているについては、過去に大災害を経験している県では既にその体制ができているというところもあった。職能団体間の連携を強化するため、合同で研修会を開催するようになったというところもあった。その他の県では災害に限定したつながりではなくとも、例えば、若者の自殺対策を契機として県単位の連携が取れているというところもあり、他団体との連携体制については平時からのつながりがあることが重要となり、さまざまな契機を活かしながら連携体制づくりに寄与していくことが災害対策委員としての役割ではないかということを確認しあうことができた。

 総じて当連絡会に出席した委員は先般の災害を経験した方が多く、それぞれが課題意識をもっての受講であったと思われた。当然災害はいつ起こるか分からずいつ自らも被災するか分からないものであり、改めて我がごととして考え取り組むべきものであるということを理解する機会となった。我々の職業柄でもあるが、災害支援というと被災地に赴き支援をする側を想定しがちかもしれないが、当連絡会の講義では受援を意識されている部分がいくつか含まれていた。災害対策委員としては、県協会全体のことではあるが支援をする方とされる方の両面において会員ニーズに対応すべく職能団体としての役割があることを学ぶことができ有意義であった。

東海・北陸ブロック 2019年12月1日(日)開催

2020年3月のPSW通信No.225にて、報告記事掲載

近畿ブロック 2019年11月23日(土)開催

田中 博也/国保野上厚生総合病院(和歌山県)

 和歌山県支部災害対策委員の一員として上記連絡会に参加させていただいた。「ブロック災害対策連絡会」は、災害時に備えて、災害支援ガイドラインを活用し、災害対策委員の役割を確認するとともに、ブロック内連携の構築を目的として開催されている。近畿ブロックのプログラムの構成は3つの講義と150分の演習であった。講習会ではなく、連絡会という観点から、平常時及び災害時の連携体制に関する演習に多くの時間を割いて確認できたことは、この連絡会の特徴であったと感じている。

 講義1、2、3はそれぞれ、災害対策委員の役割、災害時の実践例、精神保健福祉士による災害支援活動と役割の内容で講義をいただいた。災害対策委員の役割は、PSWの災害支援に対する意識喚起や啓発とそれを率先して伝承することにあると改めて感じさせられた。2010年3月に初版された災害支援ガイドラインは、想定を超える広域にわたる被害を与えた東日本大震災での支援活動を踏まえ、要検討事項としてまとめられていた課題や被災現地の現場担当者から聞き取りも行った結果を踏まえて“災害支援ガイドラインVer.2”へと改定がなされている。そのガイドラインを日ごろから手に取って見る機会は、私自身まだまだ少ないと痛感しながら受講していた。各都道府県支部で作成されている災害対策計画においても、その土地や地域性に応じてブラッシュアップし、協会員へ周知していくことが必要である。

 “普段できていない支援や連携が、非常時だけできるわけではありません”という言葉が印象に残っている。日常業務の中でも、院外の事業所と連携する機会は多く、PSWの顔の見えるつながりは、様々な支援の中で活用されている。

 近畿ブロック災害対策委員同士が顔を合わせて意見交換することで、それぞれの府県の地域性に沿った災害対策計画の必要性や作成におけるポイントの知見を得ることもできた。

 今後、近畿圏でも南海トラフ、東海・東南海・南海3連動地震が発生すると言われている。その際には自身が被災することを想定した、あらゆる備えが必要となってくる。府県を超えた精神保健福祉士のつながりは、自分自身、クライエントなど様々な人の生活を守るものだと意識してこれからも続けていきたい。

中国・四国ブロック(合同) 2019年11月23日(土)開催

       

大井 一栄/社会福祉法人丸亀市社会福祉協議会(香川県)

 東日本大震災で甚大な災害が起きて以来、自然災害が激甚化し大規模災害が各地で起きています。2018(平成30)年7月の西日本豪雨災害もそのひとつで、この連絡会の実践報告は、私にとって災害に対する備えについて、しっかりと考える機会となりました。

 実践報告では精神保健福祉士として災害時の心のケアに視点をおいた実践例を聴かせていただきました。被災した他の機関へ支援に行ったことで学んだことを持ち帰り、職員に共有することの大切さ、職場が被災したことでネガティブ思考になっている患者さんや職員へのメンタルケアの必要性から、気持ちに寄添い安心感をもってもらえるよう伴走型支援を行ったこと、外部との綿密な連絡調整など、自身が被災して不安な気持ちを抱えながら職場の再興を願い、患者さんとその家族への安否確認をしたことで、不安の軽減を目指す。他の業務もあり、焦燥感に駆られながらソーシャルワーカーとしての責務を全うし積極的な支援に奔走する行動力は、日々の業務の積み重ねによるものだと感動しました。

 私の住む香川県は、災害による被災の少ない県で住民は災害に対する意識が低く「ぬるま湯に浸かっている」と表現されることがしばしばあり、私もその中のひとりです。

 災害は、どこにでも起きうることを常に意識して会話の中で話題にしてみんなが意識化できるようにする。防災訓練を通じて参加者に意識喚起を促す。自分が被災者になり他方から受援される場合の視点やセルフケア、支援者へのメンタルケアの視点をもつこと等、日ごろからの意識化と心構えが必要です。

 災害時、無力な私にできることがあるのか不安でいっぱいです。機会があればこの連絡会のような災害福祉支援の研修会に参加して学びを深めていきたいと思っています。

九州・沖縄ブロック 2019年11月30日(土)開催

     

園田 烈/社会医療法人ましき会 コスモ(熊本県)

 2019年11月30日、佐賀県にあるサンメッセ鳥栖にて「2019年度九州・沖縄ブロック災害対策連絡会」が開催されました。

 今年も多くの自然災害が発生しました。近年、災害が特別な事ではなく、どの地域でも起こりうることと感じます。被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 連絡会には、九州各県の災害対策委員を中心に18名の参加がありました。

 私は熊本県支部の災害対策委員として参加させていただき、講義1「災害時の実践例」では、熊本地震を体験した者としてお話しさせていただきました。熊本地震の際は多くの皆様からご支援いただきました。何かしらお礼をと思っていましたが、体験談をお話しする事で何かお役にたてればと思い、災害時に感じた素直な気持ちをお話しさせていただきました(予定時間を大幅にオーバーし、ご迷惑をおかけしました)。また、河合岡山県支部長からは、西日本豪雨での岡山県支部の動きをご報告いただきました。

 講義2では「災害対策委員の役割」を木ノ下組織強化・災害支援体制整備委員よりお話を頂き、災害支援ガイドラインの中身について、また、災害対策委員の役割を学びました。

 講義3では「精神保健福祉士の災害支援活動と役割」として、河合組織強化・災害支援体制整備委員より、精神保健福祉士として災害支援に関わる際のポイントを学びました。

 演習では廣江組織強化・災害支援体制整備委員会助言者のコーディネートのもと、宮崎県日向灘で大きな地震が起き、津波も発生するとの想定で、発生直後からどのように動くのかをシュミレーションし、グループワークを行いました。その後、情報交換を行いましたが、各県の共通の懸案事項として、会員の安否確認、情報収集、情報発信の手段について話題となりました。各県試行錯誤しながら取り組みが行われており、今後も他支部の手法を学びながら、自身の県で一番有効で効果的な方法を取り入れて行ければと思います。

 今回の連絡会に参加させていただき、災害発生を想定し、個人として・所属機関の一員として・日本精神保健福祉士協会会員として、災害対策委員として、いろいろな立場で自分がどう動くのか?をシュミレーションしておく必要性を感じました。また、講義の中で「普段出来ていることは非常時にもできるが、普段出来ていない支援や連携が非常時に出来るわけではありません」との言葉が印象に残りました。普段の業務を大切にすることが災害時に役に立つと改めて思いました。今後、災害対策委員として・経験したことを伝える(忘災にならないように)・災害について考える機会を提供できるよう微力ながら尽力していきたいと思います。今回の連絡会はとても充実した学びの多いものでありました。このような機会を頂きましたことを、事務局・講師の皆様に感謝いたします。


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