<2015/07/02>
国際ソーシャルワーカー連盟(International Federation of Social Workers/IFSW) のルース・スターク会長から第51回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第14回日本精神保健福祉士学会学術集会開会式に寄せられたメッセージ(和訳全文)を掲載いたします。
本日は、日本のソーシャルワークにとって素晴らしい日です。みなさんが2011年以来取り組んでこられた仕事は、世界でも特別な意義を持っています。あの原発事故の際、福島県精神保健福祉センター所長の畑 哲信氏は、次のように述べたと報じられています。
「外からの大規模な援助団が引き上げた後にこそ、私たちの仕事は本格的に始まる」
6月12日、私は、フィンランドのヘルシンキで、「ソーシャルワークにおける勇気」をテーマに掲げた北欧会議に出席しました。ノーウィッチ大学のトム・シェークスピア氏は、その講演で、人々が再び自らの生活に取り組む手助けとなるよう、スキル・知識・専門性を駆使して行っているみなさんの支援を評価していました。みなさんは、災害後のソーシャルワークにおいて、いくつかの独自で大胆な介入を行いました。みなさんが生み出した知識は、今、私たちの最も新しい同僚であるネパールのソーシャルワーカーたちの間に、彼らの協会であるSWANを通じて、広がりつつあります。彼らは、ネパールで地震が起きてから24時間もしないうちにIFSWにコンタクトし、みなさんの知識を活用して復興をプラニングするにはどうしたらよいかと情報を求めてきました。みなさんの知識は、2016年6月にソウルで発表される予定のグローバルアジェンダ報告書(※)にも反映されることでしょう。世界のソーシャルワーク・コミュニティを代表して、ソーシャルワーク専門職に対するみなさんの貢献に感謝します。
IFSWは、この知識を国連、国際労働機関(ILO)、世界銀行、および、世界保健機構(WHO)に伝えます。私たちは、みなさんが提供してくださった知識を活用して、IFSWおよびガーディアン紙のウェブサイトを通して、どのようにソーシャルワークが社会開発に貢献できるのかを広く伝えていきます。私は、特に現場で実践に携わっている方々に、その知識や経験について書いてほしいと考えています。私たちは、今、セイジ出版から出されている雑誌『インターナショナル・ソーシャルワーク』に、国際ソーシャルワーク学校連盟および国際社会福祉協議会と協力して、「実践からの声」と題した新しいコーナーを設けようとしています。また、日本語を含めた多くの言語で本をダウンロードできるオンライン書店を作っているところです。テクロノロジーを活かして世界中で知識を共有し、相互的なコミュニケーションの機会を促進していく試みに、ぜひみなさんも加わっていただきたいと思います。
最後になりましたが、連帯のメッセージです。最近私は、社会権、社会正義および社会的保護について、集中的に、読んだり書いたりしています。そうするうちに、私は、政治家や政策を作る人たちは構造の変化を現実の変化と取り違えているのではないかという懸念を強く持つようになりました。そこで、私は、社会的保護は社会的な関与なしには達成できないということを、最近、強く言うようにしています。私がこのメッセージの最初で述べたように、これこそが、みなさんが特によくなさっていることです。人々が再び自らの生活に取り組む手助けをするにあたって、私たちは、自らを変化の触媒にします。よく走った車、あるいはあらゆる複雑な機械がそうであるように、私たちは、目的を果たすための最適な状態でいるためのメンテナンスを常に必要とします。私たちは、よいワーク・ライフ・バランスを保ち、この非常に複雑で、辛いことも多い仕事において、互いをサポートし合うすべを見出さなければなりません。そこで、ソーシャルワーカーであるみなさんへの、私からの最後のメッセージです。
「自分を、そして仲間たちを、大切にケアしてください。しなくてはならないことは、まだたくさんあるのですから」
大会を楽しんでください。ちょっと立ち止まって考える時間を持ち、リフレッシュして、人々がポジティブな変化に向かっていく手助けとして次はこんなふうにしたらどうだろうと高揚して考えながら、いつもの仕事に戻ってください。
2015年6月18日
IFSW会長
ルース・スターク
(※)この報告書の作成に向けて、アジア太平洋地域オブザーバトリー<=グローバルアジェンダの進行状況をモニターし、促進するために地域ごとにおかれている機関>がエビデンスを集めている。