<2016/1/8>
2016年1月7日(木)16:00〜18:00
厚生労働省 専用第15・16会議室
今回の検討会の構成員は30名。座長は、前回の検討会に引き続き樋口輝彦氏(国立精神・神経医療研究センター総長)。座長代理は、山本輝之氏(成城大学法学部教授)。
第1回では、事務局より検討会の進め方として、第2回で当事者・関係者のヒアリングを行ったうえで、精神保健福祉法の見直しのための「医療保護入院等のあり方分科会」と、精神病床の機能分化、次期医療計画を見据えた精神疾患に係る医療体制のあり方等を検討するための「新たな地域精神保健医療体制のあり方分科会」の2分科会を設けて論点整理を行っていくことが提案され了承された。
なお、検討会は今年夏頃を目途にとりまとめを行う予定。 事務局による資料説明の後、座長の求めで検討会開始にあたっての構成員の意見が表明された。
※資料は厚生労働省の下記URLから確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000108889.html
<伊澤> 精神保健福祉法については、精神障害者のための特別な法律という位置づけからそろそろ脱却することが必要。医療法の枠組みで捉えていく時期に来ているのではないか。精神科特例をクリアしていくための方策を検討してほしい。また、障害者権利条約25条に照らした医療のあり方の検討も必要。今回も医療等の提供者側の構成員が多い。ユーザーの声が反映される仕組みが必要。
<太田> 行政法、社会保障法が専門。精神保健福祉法は座りが悪い。権利擁護のために家族等の同意がはずせない構成となっているが、家族が果たしてアドボカシ―機能を担えるのか。本人の意思のみでは通らないことは承知しているが、私人が私人の判断で強制入院できることは、人身の自由を奪うことであり、医師の判断をレビューすることが必要。しかしながら、医学的な判断を法律家がレビューできるものでもない。医師、法律家、医療関係者が判断すべき。また、措置入院との関係では一本化も視野に入れる時期に来ているのではないか。
<籠本>自治体病院で、精神科救急、医療観察法の入院医療を担っている。医療保護入院については、家族全員にコンタクトをとって全員が同意することは難しい。治療そのものに反対する人、あるいは出してくれるなという人もいる。患者本人の立場に立った場合は、いろいろと困る事例がある。退院請求しても1・2か月かかって診察するのでは遅い。
保健所については、訪問も含めた地域の人の権利を擁護する機能が縮小している。身動きが取れない状況。アウトリーチによる未受診者への訪問については、本人、家族、地域住民との利害関係の調整に難渋する。すみやかに医療の必要性を判断する機関が必要。子どもでは医療ネグレクトの問題もある。行政が介入しても宙ぶらりんな状態になってしまう。こうした問題を検討してほしい。
<河崎> 精神保健福祉法改正に伴う課題について。家族等の同意となり、市町村長同意の厳格化が行われ、医療アクセスの問題が生じている。医療の必要な人への実効性のある医療体制が必要。
精神医療体制のあり方について。これまでの検討会でも同じような議論を続けてきた。現実的に進めていくために、今回事務局に医政局担当の審議官や医政局の精神科医療等対策室長が参加されており、本気で取り組む姿勢と受け止めている。
<神庭> 今回の法改正は、精神医療を一歩進めたと捉えている。退院を意識した治療計画を立てるようになってきた。今後のアドボケーターの活用に期待している。自分の精神病棟(九州大学病院)には、クロザピンを必要とする人が紹介されてくる。クロザピン使用により保護室から出られるようになるが、その先が難しい。こうした人も地域で診ていくことができるように、クロザピン治療が身近にできるように検討してほしい。
地域医療のあり方では、うつ病、双極性障害の病院と地域との連携についても検討してほしい。
<澤田> 前回の検討会では「退院意欲の喚起」について参考人の山本美雪さんが入院患者に対して失礼な表現と指摘していたが残ってしまった。再度検討してほしい。
(2回目の発言)代弁者はいらない。本人の話を聴いてほしい。代弁者は家族の同意以上にややこしい。自由に選べるにしても、この中から選べと言われたら私は嫌だと思う。
<白川> 家族等の同意について。大都市では同意してもらえない人が結構いる。DVの問題もあり、明確にしてほしい。34条の移送も現実的にうまくいっていない。人権擁護という面で2人の医師の診察が必要ではないか。また、調査権の問題も法律に謳われていない。居住地立ち入りの権限の明確化も必要。
<田川> 医療保護入院について。前の検討チームでの議論は家族の負担を軽減し、社会が保障していこうというものだったはず。そこをしっかりと踏まえた見直しの検討を。アウトリーチに関する議論も、長期入院の受け皿問題と、重い統合失調症の人を地域で支えるという問題とでは、アウトリーチの内容が変わってくる。入院の替わりの訪問という捉え方ではなく、アウトリーチがなぜ必要かをきちんとしていくべき。ホスピタルベースドという議論から、これからのグランドデザインを考えるのであれば、重い障害の人たちをコミュニティーベースドで支えるための議論に。
<近森> これまで2回の検討会に出ており、医政局のチーム医療推進方策検討ワーキンググループにも出ているが、精神医療の方は精神科病院の経営の問題と相まってファジーな議論になっている。自分のところでは、精神科病院を総合病院に統合して、大きく変化した。
事務局には、これまでの改革ビジョンやあり方検討会によって精神医療がどう変わったかをデータで示してほしい。入院患者は減っているが、高齢者は増えている。医療を内包した施設や外付けにした施設にしていく対策が必要。
<千葉> 検討会は、精神医療に重きが置かれている。国民の理解の深化、地域生活支援の強化の検討や施策があまりされていない。検討がより必要なのは、保健と福祉の部分。地域で精神障害者を支えることへの国民のコンセンサスが得られる方策がない。それがないと、精神医療の改革も進まない。居住の問題では、具体的にいくつ増やすのか、グループホームの拡充についてもどう保障していくのか。精神保健医療福祉の包括ケアをどうするのかの検討が必要。
<平田> 精神科救急、急性期医療の観点、また司法精神医療、医療審査会にかかわっている立場から2つの提案。(1)法的保護者制度の導入。家族等の同意に代わり、代諾同意の責任が曖昧になった。(2)非自発入院では、初回入院者に対しては、入院できる病院を高規格病院に限定すべき。一般医療で、急性心筋梗塞の人を例えば有床診療所に入れたら大問題になるが、精神科では問題にならない。精神科医療の常識は、医療の非常識になっている。
<広田> 社会的入院の解消、病床削減、精神科特例の撤廃を。クリニックの医師が夜間は病院の診療に協力を。
<本篠> 入院中の処遇における意思決定、意思の表明の支援についてきちんと議論してほしい。家族等の同意要件については、一般医療における医療同意やインフォームドコンセントを参考に検討してほしい。また、「保健」の観点から一般の人の精神保健の問題として検討してほしい。
<伊藤> 社会保障全般が2025年をマイルストーンに検討されていることを念頭において議論を。2年前のOECDの勧告では、プライマリーケアと精神医療の連動が指摘されている。事務局には、特定健診・特定健康指導、保健局の療養病床の在り方に関する検討会での検討状況、介護分野における地域包括ケアに関する資料を出してほしい。
<中原> 保健所長会では、法改正後の2年間について調査した。保健所の設置主体(都道府県、指定都市、中核市、特別区)によって精神保健の関わりに差がある。保健所がどういった取り組みができるのか、やらなければならないことはすべての保健所ができるようにしていきたい。
<岩上> 改革ビジョン以降の検証作業を。社保審障害者部会でも今回精神障害者の支援について突っ込んだ議論が行われているので、その情報も資料として出してほしい。今回の検討会では10年後を見据えた検討をしてほしい。保健所・市町村の精神保健福祉業務運営要領はずっと改正されておらず、実情に合わないものとなっている。
<長野> 法改正は一定の効果はあったと思う。足りないのは本人の権利擁護の仕組み。この10年で使える道具、施策は圧倒的に増えた。しかし、全体像が見えてマネジメントできる人が少ない。
アウトリーチ施策はまだ全国で2桁の取組みに過ぎない。使いにくいのか、人の問題なのか。地域医療構想に関する議論は一般科に近づけるためにも大切。
<座長> 構成員の意見から、改革ビジョンの10年間で何ができて何ができなかったのか資料提出をしてほしい。地域精神保健医療体制のあり方については、総論的な議論はもう必要ないだろう。具体的に進めるための議論にしてほしい。
※次回検討会では、全国病者集団、全国精神保健福祉会連合会、日本精神科病院協会、精神保健福祉事業団体連絡会のヒアリングを行う予定(日程調整中)。
精神保健福祉法の見直しに関する分科会と地域精神保健医療体制分科会に分かれて検討が進められることとなるが、精神保健医療福祉の未来図を具体的に描くための検討の場になることを期待したい。
(文責 木太直人)