<2014/06/10>
日程:2014年6月5日(木)16:00~18:00 場所:厚生労働省 専用第23会議室
第5回の作業チームは、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の在り方について」の中で主に「『生活の場』に近い病床」(資料3、資料4)についてと、「不必要となった病床の有効活用」のうち特に「居住の場」とする場合の条件等(資料6、資料7)について議論された。
冒頭、事務局から配布資料1~7の説明があり、前回資料提供のあった岡山県立精神医療センターの生活訓練棟に関して、同センター副院長の来住由樹氏から報告があり、意見交換が行われた。
生活訓練棟はうまくいっているが、それだけではうまくいかないとまず伝えたい。ニューロングステイを外に出していこうという過程で取り組んだもの。センターには年間1,400人の入院がある。救急・急性期対応が100床あるが、重度かつ慢性の病棟は55床。昨年は1年を超えて入院していた人が7人、転院が20人であり、合わせて全体の2%。重度慢性病棟に毎年少しずつ退院できない人が増えてきて、放っておくと入退院が0となり病棟が施設化してしまう問題に直面した。そのようなことで理解のある不動産屋から住居を借りて生活訓練棟の運用を始めた。
生活訓練棟では、1人で外泊することを基本に、必要に応じて職員も泊まっている。入院患者に利用してもらう際には、家族の合意形成を重視している。近くに住むアパートの住人(当事者)のサポートも得ている。訓練棟のメリットはリアルな生活体験ができること。これまでに22人が利用して18人が退院している。
「重度かつ慢性病棟」では、コメディカルを3人加配し、看護スタッフも救急病棟並みに配置している。その中では、疾病教育を重視し服薬に関して患者が患者に指導している。1年以上保護室を出られない患者と4人部屋で一緒に寝るような試みも。また、つばさ会という7・8人のセミクローズドグループで、メンバーの「外でうどんが食べたい」といった希望を実現する取り組みも行っている。1年以上の在院患者の割合が減ってきて、稼働する病棟を維持できている。
第5回作業チーム配布資料(厚生労働省/0606掲載)
(座長)まずは、来住さんへの質問も含めて資料3と4に関連して「生活の場」に近い病床について議論を。
(伊澤)質問と意見が混在するが。(1)まず、「生活の場に近い病床」という名称は適切なものに変えてほしいと前回も意見があったとろ。地域移行を支援していく病床であることを強調する名称にしてほしい。(2)訓練よりはアセスメントを重視して、必要なサービスをマネジメントしていくことで、短期で退院できるようにすることが重要。(3)来住さんに。生活訓練棟の取り組みはとても有効と感じたが、広がりがどれくらいあるのか、他の病院での取り組みはあるのか?体験無くしては退院意欲も湧かない。(4)前回の作業チームを開いている時間帯に佐賀新聞から、病床を大幅削減、病床を転換して居住の場にする方針といった記事が出た。厚労省側から意図的にリークしたものなのか?
→(来住)(3)について、全国の状況把握できていないが、知っている限りでは旧援護寮での外泊や病院敷地内に2部屋確保して生活訓練を行っているところはある。不動産屋の理解がないとやれないが、こうした取り組みができると実際に福祉施設に入るより地域移行が早く進む。
→(座長)(1)について。名称については最終的に変える予定であることは確認している。
→(事務局)(4)前回の配布資料を見て記事にしたのだと思う。間違った報道がされても、淡々と事実を伝えていくスタンス。
(城所)資料7の最初のところに千葉構成員の意見として「病床の用途転換は、ビジネスの観点からは様々あり得る」と示されているが、この意味は?
→(千葉)病棟であろうと何であろうと建物に変わりはない。仮に廃院した場合は、もうその建物は病院でも病棟でもない。どう利用しようと可能だという意味。逆に用途として使えないものは何なのか、なぜそれはダメなのかを整理してきちんと規制・監査していく仕組みが必要。
(千葉)伊澤構成員の話は王道。しかし、そうなっていない精神医療の50年の歴史がある。日精協の将来ビジョンで介護精神型老健施設の話が出たが、そのときにも同時に介護保険サービスを手厚くしてほしいということを並行して出している。老健施設への転換の話は、日精協の調査で3万人くらいの人が要介護状態にあって、本来は精神科病院ではなく介護保険サービスでみるべき人たちが受け入れられていないという実態があったから。それ以外では重い生活障害の人たち。このまま何も変えないと現状が20年続いてしまう。不適正に入院している人たちを適正にケアできるようにすることが必要。これは経営者たちの怠慢もあるが、過渡期の問題として出てきた方策。
(伊澤)施設として整備してしまったときに、サンセットとはいっても、1回建てると閉じた後に違うメニューで名前を変えてサンライズしていくことを危惧している。
(広田)病院のマンパワーを地域に移行していくことには反対。
(千葉)病院の現状から考えると、急性期・回復期と重度かつ慢性の医療を手厚くするのが精一杯で、地域に移行するのは無理がある。
(岩上)今回いままでの発言を整理した参考資料3を提出。(1)私は「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供及び、長期精神障害者の地域移行支援は国家・国民の課題」とすべきと考えている。1年以上在院者の半数約10万人は65歳以上。介護保険制度の利用を推進するべき。利用申請後の待機者や介護保険の対象とならない高齢者の支援は要検討。平成23年には約5万人退院していて、うち死亡退院が1万1千人。そこで空いた病床は新たな長期入院者で埋めるか急性期の回転率をあげなければ病院が成り立たない構造になっている。急性期を手厚く、診療報酬を高くする必要がある。65歳以上の人たちへの新たな支援と病床削減を早急に並行して考える必要がある。このため、65歳未満と65歳以上の介護保険の対象とならない人の病院内での支援強化、地域相談支援の利用支援が必要。次期報酬改定へのグループホームを増やすための誘導政策の反映と総合支援法の施行後3年を目途とした見直しへの反映が重要。(2)また、要入院者35万人という1954年の実態調査による推計値を長期にわたって国策として追い求めた結果として、いまの精神科医療の問題を、国民が自ら担う共通の課題として認識すべき。これは障害保健福祉部だけで解決できる問題ではなく、老健局、社会・援護局、健康局、保健局や内閣府など他部局・他省庁も取り組むべきことである。
→(蒲原部長)資料8でも示しているが、長期入院の地域移行のためには精神科病院の構造を変えて、使いにくいサービスになっているのであれば一般施策で使えるようにしていくことが重要。すでに老健局とも介護保険が使いにくい状況について話をしている。生活保護行政との関連では救護施設の活用についても検討しているところ。
(座長)最後に、事務局が整理した資料8(これまでの議論の整理)の骨子案について意見を。
(柏木)いま出ていた救護施設の活用については、質の中身の問題もあるので少し慎重に考えてほしい。3ページの「地域生活を支えるサービスの確保」には医療サービスと福祉サービスが示されているが介護保険サービスが示されていない。課題は65歳以上の人なので、介護保険サービスを別枠で強調してもらった方がいい。自分の経験を通して、特別に精神科に特化したことよりも、介護サービスを充実させることで十分に対応できるのではないかと考えている。実際に要介護の人の方がスムーズに退院できている。
→(事務局)介護保険サービスについては、2ページの「本人の意向に沿った移行支援」で示しているところ。
(伊藤)3ページの「医療サービス」に地域医療でACTとか外来医療系の濃いサービスを掲載してほしい。
(事務局)資料8は人の観点からの骨子のみを整理したもの。病院の構造改革に関する骨子案はまだ作成できていない。
(城所)資料5に関連して、入院中の精神科リハビリテーションがきちんと機能していないのではないか。
(千葉)精神科ではそもそも技術料が低く抑えられている。リハビリテーションが評価されていない。病棟で毎日のように行われているトレーニングはまったく診療報酬が付いていない。
(来住)これまでの休息期に休む治療から、適切に活動する治療に転換されていない。
(伊澤)来住さんの参考資料にある「入院環境では生活能力の査定が難しい」ということがやはり重要。実際の生活体験をできる場が必要。
[次回検討会] 6月17日(火)10:00~12:00
地域精神医療への転換が進んだ諸外国と同様に日本も医療の構造転換を図ろうとするとき、やはり民間資本に依存してきたことが、国が思い切った転換策を打ち出せないことにつながっているのであろうか。○年後に長期在院者を対象とする病棟を閉鎖するとできればスッキリする問題も、診療報酬等の政策誘導により段階的に進めざるを得ないため、過渡期としての「地域移行を支援する病床」や「不必要となった病床の有効活用」を検討せざるを得ないということか。
少なくとも、潜在しているものも含めて、長期入院者の意思を無視し、なおかつ他に選択の余地がない形で、不必要となった病床を生活の場に転換することに賛成する人は誰もいないことだけは確認できた。
(文責:常務理事 木太直人)