お知らせ

<2014/05/30>

【傍聴レポート】長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会第4回作業チーム

日程:2014年5月29日(木)10:00~12:30   場所:厚生労働省 共用第8会議室

【検討概要】

 第4回の作業チームは、1)関係者のヒアリング(病院の敷地内で地域移行型グループホームと宿泊型自立訓練事業所を運営している医療法人心和会なごみの家(千葉県)施設長の櫛田紀子氏)、2)長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の在り方について、が議事とされて意見交換が行われた。

1)地域移行型グループホームと宿泊型自立訓練事業所についてヒアリング

 母体となる八千代病院は昭和32年に開設。63年に移転して現在442床の単科精神病院。半分は療養病棟。内科の合併症病棟と認知症の病棟もある。平成8年からは急性期治療病棟も運営している。平成元年に福祉ホームを開設、翌年に援護寮を開設した。福祉ホームは地域移行型ホームに移行し収入も人員も増やすことができた。援護寮は宿泊型自立訓練事業所に移行したが、訓練スペースがないため外に出ることとなり、かえってよかったと考えている。しかし、報酬上常勤の支援職員を確保することが難しく、非常勤配置となっている。2か所とも利用期限が2年、長期入院者でも3年となっているが、実際にはその期間内での地域移行が難しい人たちがおり、専門職員の必要性が問われている。退所支援はメンタルなサポートが重要。グループホームを維持するための人員では退所支援が難しく専門性が求められるところ。病院の隣に施設があることで入院中の人が入所意思を示してくれる人もいる。期間内に対処できない人は、発症時期が若く学校や社会経験に乏しくグループになじめない人。逆に、施設での訓練を経て退所した人は、再入院することがあっても訓練によって単身生活をする基盤ができているので元の生活に戻ることができている。

2)長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の在り方について

 事務局による資料2~6に関する説明がなされた(資料2「精神医療の将来像と具体的方策(これまでの議論の整理)」、資料3「長期入院精神障害者の地域移行の流れと主な方策」、資料4「『生活の場』に近い病床について」、資料5「構造改革によって実現される病院の将来像(イメージ)」)、資料6「不必要となった病床の有効活用について(これまでの議論を踏まえた整理)」)。その後、意見交換が行われた。

 第4回作業チーム配布資料(厚生労働省/0530掲載)


【意見概要】

(座長)本日は資料の4から6が議論の中心となるが、まずは資料2と3に対する意見やヒアリングに対する質問があれば。
(伊澤)楠田さんに質問。1)櫛田さんが使われている訓練という言葉について。実際にはどのようなことをされているのか。2)日中の過ごし方はどうされているのか。援護寮に4半世紀携わってきた知人は「長期入院で高齢化した方にはなによりアセスメントと次に移行するための調整力が必要で、トレーニングは必要ない」と言っている。これは意見だが、3)既存の制度をどう拡充させるかが大事。基準報酬部分が薄いため非常勤対応とならざるを得ない。防災対策の観点からも人を厚く配置する必要がある。前回のヒアリングは目からうろこの話だったが、一般住居の中に暮らしの場を作っていくことを基本として、岡山での取り組みを全国展開、事業化していくべき。4)サテライト型のグループホームも有効であるが、消防法の縛りがかかって離れている1室だけでもそのアパート全体に防災設備が必要となる問題がある。
→(櫛田)1)日常の小さなことからすべてが訓練。病院の売店より安く買える街のスーパーに一緒に出掛けて買い物をすること、服薬も本人が飲み必要性について意識を育てていくこと、金銭のやりくりなど。2)日中は、デイケアや地域活動支援センター、就労継続B型事業所などに通っている。風邪などの病気の時は、入院中であれば黙っていても薬が出てきたが、地域生活を想定して内科の病院の受診と調剤薬局で薬を出してもらうところまで職員が同行している。
(葉梨)櫛田さんに質問。往診をしていると、40代50代で体の動きが鈍い人の面倒を70代80代の親が見ていたりする。地域で支えるとしたときに誰が行うのか。人材の問題が大きい。櫛田さんが例えば病気で1・2か月いないときに誰か代わりになる人がいるのか?
→(櫛田)補助金で運営している頃は多少余裕もあったので、新人が入ってきても育てることができた。しかし、いまの報酬体系では難しい。
(広田)経済的な安定と安心できる住居が最大の精神安定剤。住まいについては選択肢が少ない。もっと空き家を活用すべき。住宅施策がなにより大事。
(葉梨)資料6の図を見ると、病院のスタッフが地域に移行するというのは病院が廃院になることを前提としているようだ。現実には1ベッドの収入を外来でカバーしようとすると40~50人の外来患者を診ることになる。簡単にはいかない話。
(良田)ヒアリングからは地域移行して定着することの大変さが伝わってきた。入院しても服薬の必要性や病気に関する理解をまったくせずに家族の下に戻ってきて、無駄な再入院を繰り返す人が多い。情報を入院中に把握できる環境が必要。入院医療の問題を地域に持ち込まれることを解決してほしい。
(千葉)入院中に患者さんに意識をもってもらうことについては個人差が大きい。意識付けができるまでとなると入院が長期化する。ある程度病状が残っていても早期に退院できるようにしていくのがこれからの方向性ではないか。
(城所)櫛田さんに。施設からの移行先として、今ある施策の中で利用できないというのはどのような理由か?
→(櫛田)身寄りがないということで外の施設の入所を断られた人や、病状が不安定になり再入院した人の場合に再利用を断られる。
(岩上)櫛田さんに。2年で必ず出なさいということになった場合、どういう支援があれば可能か。
→(櫛田)2年では難しいと思ったので違う施設を2か所とした。1か所だけでは難しい。
→(岩上)10年かかって出られた人は、1年でも出られるのでは。
→(櫛田)病識が育っていれば出られると思うが‥。時間をかけて経験を積まなければ、なかなか一人暮らしに気持ちが向かない。
→(岩上)今まで施設で抱え込んできたことを少し分解して、他のサービスの機能を充実させることが必要と考えている。
(座長)ここからは資料の4、5について意見を。
(良田)これからどうやって地域で支えていくのかを真剣に考えていってほしい。
(山本)資料4について。「生活の場に近い病床」は本来おかしいのではないか。生活の訓練の場は病床ではないはず。
→(事務局)「生活の場に近い病床」は入院医療の必要性が薄い人が病床にとどまっているという精神科病院の現状を示したもの。将来的にこうするということではない。
(伊澤)資料6では、不必要となった病床の有効活用として居住の場として活用することについて議論してはどうかとなっているが、それ以外の活用法をむしろ検討していくべき。
(広田)空いた病床は、子どもの遊び場とか住民が利用できる場にしていくべき。
(千葉)精神科医療に訓練は入っていないのかというと、はっきりとここまでが治療でここからが訓練とは言いにくいが医療的リハビリ―テーションとしての訓練はある。不要となった病床、使わなくなった建物をどう使ってビジネスをするのかという話だと思っている。コンバージョン(用途転換)の話。その中の一つが住まい。この住まいは精神障害者だけでなく一般の人向けの住宅とすることがあってもいいのではないか。むしろこうではダメというネガティブリストを作っていくことに傾注すべき。
(柏木)生活の場に近い病床の意味を私も勘違いしていたが、結果的に暮らしの場になっている人は現実にいる。医療機関の訓練は両価的な面がある。もう少し医療でできることがあるのではないか。訓練すればするほど入院は長期化して、しまいには何のために訓練をしているのかが分からなくなる。やはり入院は有期限とするべき。長期入院者の地域移行は精神療養病棟と出来高払いの病棟の人員を手厚くしないと無理な話。医療の中だけの訓練では限界がある。入院中から外の場を利用できるようにしていくべき。
(伊藤)資料5にある「外来・デイケア、アウトリーチ、訪問診療、訪問看護部門」にマンパワーや財源等を集約して体制強化することが焦点だと思う。中島構成員から資料提供のあった生活訓練棟(参考資料3)が大変参考になる。できるだけ選択肢は広くすべき。構造改革を進めるためには財源確保が欠かせない。
(伊澤)資料6の不必要となった病床の有効活用として、(2)に居住の場とそれ以外の場が提示されているが、この分かれ道は大きい。課題は、転用をどうするか。転用はどんどんすべきだが、居住の場の選択肢はない。障害者権利条約を批准した日本が居住の場を認めれば国辱ものだ。それ以外の場として公共施設などその地域の意向に沿う場にしていくべき。
(野沢)メインの課題は長期入院の人たちをどう地域移行させるかということ。病床がある限り入院してくる。だからこそ居住の場やそれ以外の場に転用することを検討している。病院の経営者たちの転換をうながしている。年間1万人亡くなっているとして、1日30人が病院で亡くなっている。毎日亡くなっていく30人の人たちをどうするか。入院は必要ないが介護が必要な人の施設はやはり必要。資料6の最後に示されている「元病院の建物、敷地を居住の場として活用する具体的な場合」の4つのパターンではBとDは積極的に考えていいのではないか。

活用場所\運営者 病院と同一法人  他法人・個人 
元病院   建物内 パターンA パターンB
 敷地内(別棟) パターンC パターンD

暮らしの場は運営する人たちのやり方の問題。BとDは外部のNPOが支援すること、医療サービスではなく福祉サービスの利用者にすること、地域で人はできなだろうか?病院に乗り込んで行ってそこに地域の拠点を作るということを。
(城所)資料4について。医療の標準化が指針として出た中で、医療のあり方をどうしていくのか。何が基本となるのかの共通認識を持つ必要がある。資料5について。地域医療としての精神科医療が進んでいけばベッドは必要最低限となる。
(伊澤)野沢さんの指摘について。病院の中に入っていくということには共鳴する。現在も地域移行支援で入っているが、もっと入っていけるように、院内に事務所を置くことはあってもいい。
(岩上)昨年の指針の検討会の中で発言したことが批判されている。反対の声を聞くと、精神科の存在そのものが悪だと言っているように思う。病床削減を進めていくためには政策誘導していくための手立てが必要。そのために、例えば全国5か所でモデル事業―医療と福祉の連携で病床を削減する事業を行って、それを評価していくことも考慮すべきではないか。
(千葉)障害者権利条約に違反すると言う人たちがいるが、本人が自由意思で選択するのであれば条約違反にはならないと思う。モデル事業をやるなら是非公費を使って保健所も入ってやってもらいたい。
(野沢)その際には、審査員に山本深雪さんや広田さんなどの当事者が入ってもらい、これはダメ、これはいいと審査してほしい。
 最後に北島課長から、改正精神保健福祉法の施行により4月1日以降に入院した人に対する早期退院に向けた仕組みはできた。それ以前の長期入院者のために何が出来るかが課題として残っている。次回は長期入院者が多い病棟のあり方を協議してほしいと提案があった。

[次回検討会] 6月5日(木)16:00~18:00 厚生労働省専用第23会議室


【所感】

 「不必要となった病床の有効活用」の1つとして提示された「居住の場」としての活用を巡っては賛否両論あった。賛成する立場でも条件設定が必要というところでは意見が一致している。
 いずれにしても、20万人の長期入院を解消し、新たな社会的入院を生まないために精神医療の構造改革をどうすすめるかが焦点となっていることは間違いない。

(文責:常務理事 木太直人)


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