<2014/05/27>
日程:2014年5月20日(火)17:00~19:30 場所:厚生労働省 専用第22会議室
第3回の作業チームは、1)精神障害者の入居支援についてヒアリング、2)長期入院精神障害者の地域移行に向けた課題と対策の方向性について(これまでの議論の整理)が議事とされて意見交換が行われた。
岡山県で精神障害者の入居支援を行っている阪井土地開発株式会社の阪井ひとみから、450人を超える精神障害者や刑余者等に対する支援実践についてヒアリングを行った。
事務局がこれまでの議論の整理としてまとめた資料2~4について説明があった。資料3「精神科入院医療のこれまでと今後(これまでの議論の整理)」の図には、「将来」として、「精神病床を適正化し、不必要となる病床を削減」が示された。続く資料4「精神医療の将来像と具体的方策(これまでの議論の整理)」には、「論点」として、(1)「生活の場」に近い病床、患者が退院した病床をどうするか、(2)急性期等必要な医療への資源集中のためにどうするか、(3)なぜ、長期入院精神障害者の住まいの確保が難しいのか、の3点が示された。また、前回構成員から質問のあった「医療法人が行うことができる業務及び病院内で行うことができる業務について」(参考資料1)と「障害福祉サービス事業所等の病院敷地内設置について」(参考資料2)の説明があった。
そのうえで意見交換が行われた。
第3回作業チーム配布資料(厚生労働省/0522掲載)
(千葉)確認だが、参考資料1について。医療法人は第二種社会福祉事業を行えることが書かれていないが、行えるということでよいか?
→(事務局)その通り
(柏木)阪井さんに。(1)阪井さんの入居支援にはグループホーム(GH)があまりないことの理由は? (2)高齢化する人たちの民間住宅でのバリアの問題をどうしているか?
→(阪井)GHには2種類あると思う。1つは支援者の気持ちが中心のGH。本人の希望が中心ではなく、食事時間が職員の都合で決められていたりする。本人が生きたいように生きるのが健全と考えているので、出来るだけ本人の意に沿う暮らしを実現したい。そのため、自分のテリトリーにGHは入っていない。「箱屋」なのでハートを入れるのは福祉職の仕事と思っている。
(2)高齢化については、国土交通省が改修工事の助成金を出している。大学生が使っていたようなアパートはこの20年でほとんどバリアフリーに対応して変わってきている。部屋で亡くなりたいと希望している人には、可能となるようなことを考えている。
(伊藤)(1)阪井さんの話で、岡山では一人暮らしの練習をする部屋があるということであったが、その具体的なところを事務局から次回紹介してほしい。(2)資料3に追加してほしい点。これまでも政策的にさまざまな取り組みを行ってきたことを入れてほしい。急性期医療の充実など。いろいろやってきたが病床数が変わっていないということを。(3)資料4の中の具体的方策の「病院が病床削減できるための財政的方策」は是非とも必要。現在世界精神医学会の地域精神保健ガイドライン策定会議でアジア代表の委員をしているが、(1)各国の政策において、変わるための移行のコストが必要、(2)入院している人が地域に移るときには、個別化のためのコストが必要となる。
(伊澤)前回の検討会では病床を削減することが確認されたと思っている。参考資料を見ると、病床を転換して施設整備する方向が示されているように見える。このことには基本的に反対。
→(事務局)参考資料は、あくまでも前回の作業チームでの宿題に対するもの。
(良田)阪井さんの皆社会に戻りたい、生活を始めるとだんだんと地域の人になっていくという話に感銘を受けた。多くの人は外に出たい、安心して暮らしたいと希望を持っている。前回の検討会での長期入院者への聴き取りの報告で障害年金受給者が少ないことに驚いた。職員の目が長期入院者に向いていないと感じた。もっと地域移行は進めることができるのではないか。ある地域の家族会の集まりに行ったときに、精神保健の担当部長が「地域移行の予算があるのに、1件も上がってこないのはどうしてか」と聞かれた。空き病床をどうするかは、いい経営ができる仕組みを考えてほしい。入院患者さんと一緒に学べる学習室。運動ができる体育室などにしたらどうか。
(広田)この場は安心して異論を言える場にしてほしい。資料4のスタッフの地域移行はいらない。ただでさえ救急対応のできる医者が不足している。
(野沢)病床転換の定義がそれぞれ違うのではないか。敷地外にGHを作ることはどうなのか。病院の空き地にNPO法人が作ることはどうなのか。入院している人は外に出して、外で困っている人をその居住施設でサポートするとしたらどうなのか。病床をどう削減するかがやはり問題。市場原理が働けばやがては自然淘汰されるが、もし減らせないのであれば、削減できるための財政的方策が必要。経営のためではなく、新たな長期入院者を生まないためにと考えると金を出すことはあってもいいのではないか。古くて建て替え時期が来ている病棟がどこにどのくらいあるのかを確認して、そこに手を打っていくべき。やってはいけないこと、やっていいことを決めていけばいい。
(千葉)今回の診療報酬改定で急性期治療病棟の医師配置加算が付いたが、救急医療への協力等要件が課せられて、これでは算定できる病院がない。病床を財政的にも削減できること。どこがバックアップしてどこが今の状況を作ったのか明らかにしてほしい。自分のところでやっている精神療養病棟とGHの収支の比較表を持ってきた。60床の精神療養病棟の4人室を2つの個室にして30人規模のGHに転換すると、精神療養病棟では収支プラスとなっていたものが赤字になる。病床転換して儲かるという話ではない。病床転換を反対して潰すことが、逆説的には長期入院を続けることを容認することになる。
(岩上)病床削減と手厚い医療にしていくことは強く打ち出していくべき。伊澤さんが言っている居住サービスの充実について、(1)20万人が退院してきたときに、出来る状況にあるのか?居住を手厚くするだけで可能となるのか?
→(伊澤)今の状況では厳しいのは事実。住まいの提供を中心としたソフトな包括的支援体制が必要。総合福祉法の骨格提言に盛り込まれたようにOECD加盟国の平均並みの財源確保が必要である。
(伊澤)事務局に、GH以外の他の事業での試算ではどうなるのか次回示してほしい。
(千葉)GHのほうがむしろ安定している。宿泊型自立訓練は利用者が変動するので余計に経済的に大変な状況。地域の事業では年間1千円ずつ赤字を出している。自分の頭の中では、そこをステップとして次に移行するトレーニングの場所。そこから外に出ていく場であるのならば、敷地内にあってもよいのではないか。
(柏木)所属する法人で宿泊型自立訓練を運営しているが、赤字経営になっている。理念を貫徹して日中活動とセットにしていない。本人の希望に沿った活動の場所を認めているが、夜間ケアだけとなるのでマイナスになる。また、2年で地域移行させると空白が生まれてマイナスが大きくなる。移行を意識しているところを報酬等で評価してほしい。また、高齢者については特養は入れる隙がないし、サ高住など経済的理由で障害年金しか収入のない人は入れない。病床転換に賛成しているわけでは決してないが、万策を尽くしてもなおかつ移行が厳しい人をどうするのか?どのようなサービスがあれば移行できるのか。病院が生活の場となることは賛成できない。急性期だけでなく、回復期も有期限とするべき。地域の受け皿は実際にどれだけ受けられるのか。病院から出すことを後押しする仕組みがない。
(葉梨)前回の検討会の聴き取りでは自由が欲しいという声が多かった。阪井さんの話で、住宅の共同スペースにソファーが置いてあるといった共同で過ごせる場や相談の場が必要。新しいモデルが必要。状態によっては入院するが、自由な生活を保障する新しいモデルを提案すべき。
(岩上)かつて退院支援施設を反対しても、その後具体的な方策を何も検討してこなかった。反対し続けている間にもっと研究しておくべきだった。病床転換について、ここまでは良くてこれはダメという話を次回はしてほしい。
(山本)地域移行するために病床削減ということにコンセンサスが得られるとして、経営問題をどうするのか。期間を定めて転換したものをその後は削減していくのかをここで提案しておくべき。
(阪井)ベッドを減らすことについて。外国で病院をなくしたところを見てきたが、そこでは病院を公共施設、コミュニティの場所にしていた。箱もの屋として、アパートの大家も空き部屋があると何とかしようと工夫する。厚労省だけでなく国土交通省などと横のつながりがあれば具体的に地域で支えていけるのではないか。
[次回検討会] 5月29日(木)10:00~12:30 厚生労働省共有第8会議室
これまでの議論の整理とはいえ、厚労省の資料にて初めて「精神病床を適正化し、不必要となる病床を削減」という文言が使われたことは画期的なことである。
座長からは長期入院精神障害者の地域移行の具体的な方策のうち、「地域生活の支援」を中心に意見交換することが提示されたが、今回も病床転換のことに議論が集中した感がある。広田構成員からは議論をつくすために次回検討会までに予備日も含めて2回作業チームを開くべきと提案があった。短期間でとりまとめが行われる検討会ではあるが、厚労省からは方策をどう施策に落とし込んでいくかについて、その方向性も具体的に提示してほしいと感じた。
(文責:常務理事 木太直人)