<2014/04/11>
日程:2014年4月8日(金)13:00~15:00 場所:厚生労働省 専用第22会議室
第1回の作業チームでは、冒頭で樋口座長から、作業チームの役割が検討会での議論に資する資料の作成にあることが確認され、作業チームの構成員として公的立場から全国保健所長の倉橋副会長が加わり12名となることの報告があった。
事務局から「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討の論点」の素案が示された。「検討の基本的考え方」としては、 ①長期入院患者本人の意向を最大限尊重しながら検討する。②地域生活に直接移行することが最も重要な視点であるが、新たな選択肢も含め、地域移行を一層推進するための取組を幅広い観点から検討する。
また、「検討の進め方」として、「地域移行に向けて必要な方策について、地域移行の段階ごとに、長期入院患者の属性に応じた対策を具体的に議論する必要があるのではないか」という
第1回検討会の意見を受けて、地域移行の段階を、㋐退院に向けた支援と㋑地域生活の支援の段階に分け、さらに㋐については、㋐-1退院に向けた意欲の喚起と㋐-2本人の意向に沿った移行支援に分けて議論することが提案された。
続いて、柏木構成員が提出した日本精神保健福祉士協会による「65 歳以上の精神疾患を有する入院患者への支援に関する調査」の概要について報告があった。
この調査では、対象となる入院患者に退院の意向を直接聴いているので、意向調査の意味合いもある。/調査対象は65歳から94歳までの入院患者で有効回答数は551人。予想に反して42%の人が退院を希望しており、そのうち4割は担当する精神保健福祉士がいなかった。希望する退院先は56%が自宅であり、退院後の生活イメージが課題となる。また、37%が退院を希望していないが、そのうち拒否が31.5%、不安、退院先がない、家族の反対が30%であった。このため、様々な仕組みが導入されることで、退院希望ありに変わる可能性がある。/退院希望を入院期間別にみると、1~20年では退院希望の割合が高く、20年~30年では希望ありとなしが同数になり、30年以上になると希望なしの割合が高くなっている。/退院に向けた支援については、全体の8割強が支援がないと回答しており、退院を希望している人に対しての支援も4割程度であった。また、7割を超える人が要介護認定や障害程度区分認定を未申請であった。/精神保健福祉士に対しての質問では、退院支援を進めていくために「院内関係スタッフで本人のカンファレンスを開催し、退院支援についての共通認識を持てるような働きかけ」が必要とした割合が最も高かった。このことから、退院に向けては本人のモチベーションよりも、まずはスタッフのモチベーションを上げることが重要であることが示唆される。退院希望なしとしている人についても、無理しなくてもいいよというスタッフの思いが反映される傾向があることに気を付けなければならない。
作業チーム(第1回)資料(厚生労働省/0410掲載)
<広田>外から自由に病院に出入りでいる環境が必要。精神科独特の敷居の高さがある。普通の医療にすればよい。見舞いに行って普通に会えること。入院している人から電話があり病院に出かけたのに、「本人が希望しているか分からないので」と病棟に入れなかった。人間としての普通の欲望を精神病院が奪っている。
<倉橋>退院の意欲喚起について、資料2-1の図で言うと、「本人事例、実例を見せること」、「スタッフの自主的検討会」を入れて、目標設定につながるような活動を自主的に起こすことを加えることが必要。
<千葉>倉橋委員の「自主的」とは?自主的にではなくシステムとして定着させることが重要ではないか。
→強制されないという意味合いで使ったが、大した意味でつけた言葉ではない。
<伊澤>情報不足、アプローチの問題。30年40年と入院している人にとっては情報がない。スタッフにも地域生活に関する基本的な情報が伝わっていない。院内研修を年次計画として立てて実施してほしい。20数年間PSWとして働き、大学の教員になった知り合いが病院の看護師にアンケートを取ったが、退院がしにくい一番の理由は家族が拒否しているからであったが、入院患者の退院後のイメージが湧かないということも多かった。トライアルが是非とも必要。院内で動きを作っていきたい。
<柏木>伊澤委員に、院内の研修については強制的にシステムとして導入すべきということ?
→その通り。
<柏木>自分の病院では行政や相談支援事業所とも連携しながら積極的に退院支援の取り組みを行ってきたが、検討会でも述べたように病床は減っていない。今の制度では病床を確保することが前提になっている。つまり、病床を減らさない限り、問題は解決しない。
<伊藤>意欲喚起について。長期入院患者が受けている医療サービスをどう思っているかが重要。一般的に行われている満足度調査については、90年代初めは精神科は除外されていた。96年に初めて民間病院の有志と一緒に行った。
<山本>意欲喚起ということは、本人が同意していないと退院させないという意味なのか?病院はそういう場ではなく、治療が終われば退院させるのでなければ人権問題になる。本人が拒否していても退院させなければいけないのではないか。
→(事務局)情報提供を十分にしたうえで退院の意向を示すことも含めて意欲喚起と言っている。
<山本>情報提供があっても本人が退院しないと言ったら退院させないのか?それがむしろ社会的入院を助長してきたのではないか。本人の意欲を取り上げることが問題ではないか。
<座長>山本委員の発言は、法的なバックグラウンドとして必要。退院の障害になっているのものは、家族、スタッフの意識といった側面もある。自分の病院の退院支援の経験では、30年の長期入院患者を退院させようとしていろいろやってきたがなかなか動かなかった。それでも地域に出た人が2・3人出てきて、その人たちが入院患者に自分たちの暮らしぶりを話すことで、外を見てみようかと出かけるようになり、自分でも退院できるかもしれないと思うようになった。そのことで地域移行が少しずつ進んでいった。そういった経験も踏まえた意見をいただきたい。
<千葉>山本委員の話について。本人の判断能力、理解能力をどうみるかといったらよいか。自宅に帰りたいという場合に、どんなイメージを持っているのか。昔の発病前の自宅を想像しているのかもしれない。イメージギャップがある。本人の意欲という時に、本人の能力の要素を考慮して支援のいろいろなやり方を提供していくことが大事。医療の必要度がないから出て行けとはなかなか言えないのが現実。判断が付かない人でも入院ではない場に移り、そこから次のところに移っていく。連続性のある幅広いものを考えていく必要がある。
<山本>本来の病院の役割を考えると、そこまで抱え込むことが役割なのかというのが根本的な疑問。
<良田>みんなねっとで相談をやっているが、兄弟からの電話があった。検討会に出ていることを知って、伝えてほしいと言われた。その兄弟は、最近は退院退院ということが言われていて心配になってきた。自分の家族は入退院を繰り返し、そのたびに家庭がめちゃくちゃになった。今度退院してきたら自分の家族は崩壊するかもしれない。グループホームがあると言われても、そこから家に帰ってきてしまう。この現実を伝えてほしい、と。親は自分が責任を持ってみなければと思うが、兄弟になると自分が被害者と受け止める人がいる。そういう嫌な思いをさせない医療にしてほしい。そこが改善されないと、長期入院はなくならない。
<広田>野沢委員が来たので発言するが、野澤さんにはマスコミの立場ではなく知的障害者の家族の立場で発言してほしい。
<倉橋>以前のイメージのままでもそこには帰れないのが現実。介護であれば住宅改造やホームヘルパーの利用で解決する。そのようなイメージを示すことが必要。モデルを提示する方向性が必要。
<伊澤>意欲喚起についてもう少し丁寧に考えたい。自分の経験からもピアスタッフのかかわりが非常に有効。何人かのピアの人たちと一緒に動いているが、街でこんなふうに暮らしていますよ、あなたもどう?というアプローチが必要。退院という言葉もよほど信頼関係ができてからでないと安易には出せない。地域移行支援が個別給付になり、以前のコーディネーター事業が廃止となったことでピアの動きが停滞している。
<野澤>知的障害者の入所施設の地域移行を見てきたが、最初は躊躇していても、一緒にいた仲間が暮らしている様子を見て変わっていく。地域に出てみて体験することで劇的に変わる。何度も行ったり戻ったりの中で、段々と本人の気持ちが変わっていく。
<千葉>病院がいい医療にだけ特化すればスッキリするとは考えているが、現実にはそうでない人を抱え込むことになっている。単純に退院してくださいとは精神科医療ではスッキリと言えない。このまま出たら生活が困るだろうと思うと出せないということがある。医療が悪いのか、社会システムの問題なのか。家族が個人で負担をせず、社会が負担する方向で考えなければいけない。必ずしも私の意見ではないが、極端な考え方を言うと、病院スタッフは治療が終われば入院をやめればいい。地域移行なんて考えなくていい。現実には移行期にあるので考えなければいけないが。
<良田>病院医療が悪いと言っているのではなく、地域医療を含めて医療がうまくいっていないという意味。治療の方法がないからと言って、家族に戻されることがあるが、素人が何が出来るのか。医療は薬を飲んでくださいくらいしか言わない。地域でもそんなに大変な人ならうちでは見られないと言われる。
<千葉>医療の守備範囲を考えなければ‥。
<良田>家庭の中を想像できないからだと思う。単に病状だけでなく、家族は様々な世話をしている。そのことを誰かに相談したり、アドバイスを受けたりする機会も持てない。病状に付随する問題が大変。家族は入院させたがっているのではない。家族はもっと専門家にかかわってほしいと思っている。
<柏木>病院をまるでチリ箱にしてきたという思いがある。かつて社会復帰の大きな壁は家族であったが今は違う。山本委員が言ったように、本人が退院したくないということを認める限り、退院できない人は必ず出てくる。プロセスも必要だが、意欲だけに頼るとうまくいかない。退院を前提とした意欲喚起が必要。
<岩上>現状では地域相談が早い時期からかかわる仕組みになっていない。1年以上入院している人たちに医療機関がきちんとかかわれるための財政支援が必要。社会的入院に関しては、いまだに精神保健福祉法が掲げる「医療と保護」と保護の中に、金がない、家族が反対しているから、入院していた方がいいということが入っている。保護の解釈を広げてきたことが問題。医療のための法律にしていく必要がある。家族へのサポートも必要だが、適正な病床数を示し人員も厚くして、地域移行の手立てを考えていかないと進まない。病院が変わる手立てを。そこで働く人をどう地域移行させていくかを議論してほしい。
<広田>相談よりも一に住宅。「私がいるから大丈夫よ」と言う人が1人いれば支えることはできる。マスコミ報道も変えないと、地域移行は進まない。
<千葉>今回のメインの対象は、もう軽度の人ではないと思う。軽度の人にはこれまでに支援の形はできている。問題は中等度から重度の人たち。今までのサービス、支援のあり方ではうまくいかない人たちをどう退院してもらおうかということ。場所(ハードウェア)、支援(ソフトウェア)、人(ヒューマン)の問題。ステップの高さがあると次にいけないので、地域の中で緩やかなスロープと時間の長さを考えてほしい。長いスパンで継続的な支援を必要とする人には段階の多様さプラスゆっくりかけられる時間が必要。現在の移行型支援はすべて時間が短い。人については、厚みを増していかなければならない。
<岩上>千葉委員に2点質問。①中等度から重度の人のサポートは具体的にはどのようなものか?
→(千葉)現在のサービスでは短時間で再入院という場合もある。もう少し長い時間で生活になじむことが必要。
②既存サービスで特養や老健がけっこう出ているが、長期入院者にとって使いにくいのか?
→(千葉)要介護認定は介護サービスが必要にならないと申請しない仕組みになっている。日精協調査では、介護サービスが適当という人がかなりいる。しかし、介護施設にお願いすると病状が悪くなって戻ってくることがある。介護サービス側にも仕組みが必要。以前精神障害者に特化した老健施設を提案したが老健局はけんもほろろであった。一方、介護サービスを必要としない人については、住居の中で考えてもらう。しかし、サービス付き高齢者住宅などは居室が25㎡以上なので入居費が高い。低所得者等を対象として居住の場の確保を行っている「地域善隣事業」のようなことを精神でも考えてほしい。住居に加えて、訪問サービスで支えながら、日中はデイケア等で過ごすイメージ。
<野澤>良田さんが地域に相談する人がいないというのはよく分かる。一方、制度としてさまざまな相談窓口は作られてきている。しかし機能していない。人材が圧倒的にいない。地方に行くと、経験2年くらいの若い人が相談窓口を担当している。大学や専門学校では教育できない対応力が求められている。相手の気持ちを読み取る感性、交渉力、忍耐力などインフォーマルな力を誰にも教わっていない。企業の苦情担当者などを活用するなど柔軟な対応も必要。
<伊藤>資料2-1のイメージ図では、精神科病院から地域に向かって矢印があって押し出すイメージがあるが、地域から引っ張る矢印がない。今ある枠組みの中でもあらゆるものを考えていく必要がある。サテライト住居など。
<広田>もっとシンプルに考えたほうがいい。1に住宅、2にヘルパー。
<伊澤>地域から迎えに行くアクションが必要。自立支援協議会を機動的に機能させていくことが必要。協議会に必ず地域移行部会を設置するなど。
<岩上>既存の人材育成もきちんとしなければならない。2月に国の委託を受けて日本能率協会が改正精神保健福祉法の研修を行ったが、都道府県からは官民共同で参加している。そのような取り組みを濃くしていく必要がある。いま入院で長期になっている人たちの意向をうかがって、どんな生活がしたいのかをサポートをすることを検討しておく必要がある。
[次回作業チーム]4月25日(金)10時~12時
退院に向けた支援と地域生活の支援の段階に分けて議論されることになった。第1回の議論の中で特に印象に残ったのは、本人の退院意欲の喚起よりもむしろ病院のスタッフの意欲喚起、意識改革が重要ということであった。作業チームでは極めて短期に検討会の議論に資する資料をまとめる必要があり、次回はもう少し具体的な方策に関する議論となることを期待したい。
(文責:常務理事 木太直人)