お知らせ

<2014/04/08>

【傍聴レポート】精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会(第8回)
(長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会[第1回])

日程:2014年3月28日(金)13:00〜15:00   場所:航空会館 7階 大ホール

【検討概要】

 今回は、「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」の第8回として開催されたが、事務局から、 長期入院精神障害者の地域移行について、引き続きの検討課題とされたことを踏まえ、長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の在り方について、有識者、関係者の参集を得て検討を行う場として、検討会名称を「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」とすることが提案された。広田構成員からは「検討の進め方」に記載のある「病床の転換の可否の方向性」については文言削除すべきと意見が出されたが、全体としては了承された。  また、検討のスケジュールも示され、予算に反映させるため検討会としては3回(予備日として第4回)、短期間での議論を進めるための作業チームの設置を行い、6月下旬には「具体的な方策」の取りまとめを行う予定となった。  前段では、主に「長期入院精神障害者をめぐる現状」(資料4)について、事務局から説明があった。また、「精神障害者等に対する地域移行・地域生活支援に向けた意向確認について」(資料5)についても、本年の2〜3月に意向調査を実施していること、対象は精神科病院の1年以上入院患者200名程度などであること、同時に退院後の受け皿の検討のため、退院支援施設2ヶ所及び地域移行型ホーム19ヶ所の実態と、利用者のニーズに係るアンケート調査を実施していること、調査結果がまとまり次第検討会に報告する旨の説明があった。

 第1回目の今回は、出席構成員がまずは意見を述べる場として位置付けられ、具体的な議論は次回以降ということになった。
 資料は厚生労働省の下記URLから確認ください。 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000042361.html


【意見概要】

<田川> (1)(資料2P下の図)入院期間5年以上の退院者の内訳で転院・院内転科が48.6%となっているが、この詳細は?
 →調査項目をこれ以上に細かく設定していないので、詳細は分からない。
(2)長期入院者の病棟種別割合の内訳は分かるか?
 →精神療養病棟では1年以上入院が8割以上、15対1精神病棟入院基本料で6割程度。
<平田>資料5の意向調査について。調査の前提条件として、「どこに退院したいですか?」という質問には、丁寧な説明が必要。情報提供されたうえで行われているのか?
 →アンケートは地域の事業者、保健所の協力を得て、ピアスタッフにも参加してもらい行っている。調査を担当した人にも、この検討会でヒアリングの機会を設けたい。
<広田>検討会要綱の検討内容に「病床転換の可否」を入れる必要はない。
<座長>第7回(最終回)の検討会において、病棟転換を是とすることには反対だが、可否について検討するのはいいという話になった。
<澤田>(資料4の6P上の図)精神科病院における1年以上の長期入院患者調査については、回答者が病棟の看護師長等なので限界があると説明があったが、退院困難症例のうち、85%が退院困難とされた理由の内訳で61%が「精神症状が極めて重症、または不安定であるため」となっているが、この中でも退院できる人がいると考えてよいか?
 →その通り
<河崎>指針の中にすでに「病床転換の可否」が含まれている。検討内容に入れて議論すべき。
<伊澤>(1)既存施設の在り方について、とりわけ住の問題が大きい。消防設備設置の在り方が大きな課題。既存家屋が圧倒的に多いグループホームとして、本当に重装備の防火設備が必要なのか。厚生労働省、国土交通省、消防庁も入って、ホームの増設に向けた検討をしてほしい。
(2)退院意欲の喚起支援については、「お試し」が重要。実際に体験してみるなどのアプローチが必要。東京では、グループホームを活用したショートステイ重要なトライアルの機会となっている。
<長野>(1)(資料3P下の図)在院期間1年以上の退院患者転帰で、死亡退院が気になる。この病名分析が必要。
(2)病床転換の可否に関しては、前の検討会で「タブーなしに全部議論すべき」と発言した。自分の病院は、20年かけて病床を閉じようとする中で、あらためて既存サービスのパッケージの難しさを感じている。インフォーマルを含め計画相談には時間がかかる。パッケージの在り方を検討チームで整理してほしい。難しければ、包括的サービスも場合によっては必要。
<近森>(1)精神科ではやっと機能分化の議論が始まったという感想。一般病床では急性期医療に重症度、看護度、在宅復帰率が要件規定されている。大事なことは、患者のことを考えずに、経営のことを考えている病院をどうするかということ。いい医療ができる方向性を作っていくべき。地道な努力の入り口にやっと来ているので、作業チームできちんと議論してほしい。
(2)病床転換については、経営のための転換は認めるべきではないが、医療ケアを厚くしなければならない人も現実にいるので、その人にケアを提供する場は必要。
<伊藤>(1)あらゆる選択肢の検討を盛り込んでおくべき。
(2)新しい選択肢は、予想しない副作用もあり得ること。
(3)新しい選択肢に対して単純に反対するというのは改革を止めることになる。代替案を示すべきである。
<伊豫>病床転換に関して。厚労科研で平成20〜22年度にかけて海外の状況を調査した。民間病院の多い国としてはベルギーの報告をしたが、ベルギーでは病床をナーシングホームに移していった。検討にあたっては、理想、方向性をしっかりもってほしい。長期入院者の生活の質、支援の質、医療の質を考えていく必要がある。行動決定の自由度、金銭管理を含めて。
<吉川>(1)検討の進め家の意見。地域移行の検討はずっと行ってきた。これからは、スピードをともなうため実行性の高いもの、病院が取り組める、動けるものにしていく必要がある。病院がやろうと思ってもできないことについては、枠組みを変えていくかなければならない。
(2)1年以上の長期入院者と言っても幅が広い。在院期間によって必要な支援が変わってくる。65歳以上が半数以上という状況で高齢者を同地域で支えていくのか、仕組みを考える必要がある。排せつケア、誤嚥防止など分けて考えていくべき。柱を一本立ててほしい。
<中島>(1)(資料6の上の図)退院困難理由は医療提供者の判断が一番の難点。重症、不安定の中身の分析がまったくない。精神症状なのか、治療法はないのか、介護が必要な人なのか、合併症のため退院困難なのか、といった分析が抜けている。
(2)療養病棟の見直しについて。医師1名でよいとしたのは、押し出すベクトルを弱まてしまう。
(3)作業チームの構成はバランスがよくない。公的な立場の人が入っていない。
<広田>日本は薬が多いことははっきりしている。精神科の入院は人の可能性を奪ってしまう。
<山本>検討の進め方について。論点は(1)退院プロセス、(2)退院後の生活、そのための施設、サービスと分けて議論すべき。2回の検討で具体的な施策が出てくるので、少し心配。
<長野>これまでの議論は、本人をどう支えるかという視点、ケアマネ的な議論であったが、足りないのは構造をどう変えるのかの直球の議論。パッケージ、医療を提供する構造を転換するための議論を。
<伊豫>自分の経験で、他病院で長期保護室使用の人が転院してきて、クロザピンを使用。2年かかったが間もなく退院する。あきらめないことが大切。
<田川>精神医療の現状が、まずにゅういありきの発想。自分なりに医療を利用して生活を考えている人たちを当たり前として、逆立ちした問題の立て方ではなく考えてほしい。アウトリーチですべて解決する問題ではない。病院医療者と地域の人の発想がずいぶん違う。外来医療の力を削がないようにしてほしい。
<良田>全体の構造をか投げる必要がある。私が精神科病院で働いていた40年前から長期入院の問題が言われていた。何が足りなかったのか、何が問題だったのかを分析するべき。ただ長期入院の移行を考えるのでは何も変わらないのでは。
<中板>私も地域側にいるので議論に違和感を覚える。社会保障の改革では病院完結型から地域完結型へという方向性がすでに出ている。入院ありきはおかしい。本来あるべき姿を構造的に議論してほしい。
<千葉>(1)長期入院者と言っても、100人いれば100通りの在り方がある。オーダーメイドが望ましいが、いくつかの類型に当てはめざるを得ないのが現状。
(2)適応できる能力もある人はこれまでのサービスでやれる。
(3)重度の人にはステップをスロープ化していく必要がある。
あらゆる種類のサービスがあればいい。医師としては病院から1人でも多く退院させたい。全国でも100人の人しか適応できない施設でも作ってほしい。病院は医療密度を濃くしていきたい。
(4)病床転換は、捉える人によって意味が全然違う。私は、病床の閉鎖と新しいサービスの創造と考えているが、看板の架け替えという人たちと噛み合わない。
<柏木>(所属の)浅香山病院では、昭和40年代から退院支援を始めて、病院の周辺に600人が暮らしているが、病床は減っていない。長期入院の実態は高齢化。年間何十人と亡くなっている。多様なメニューがあっても根本的な問題解決にはならない。病床削減が必要。病床転換は否の意見も議論するためにも検討に入れるべき。
<岩上>長野先生は20年かけて病床を0にしたが、その方法を普遍化することはできないので、構造的に考えていく必要がある。
(1)改革ビジョンから10年が経過したが、今後どうするのか?
 →ビジョンに対するレビューは必要と考えている。その結果を障害福祉計画や地域医療ビジョンにも反映させていく必要がある。(精神・障害保健課長)
(2)福祉サービスについては、総合支援法の見直し規定があるが、精神障害者の支援のあり方についてはこの検討会でのとりまとめが反映されることになるか?
 →法律には施行後3年の見直し規定がある。その前に平成27年度に障害福祉サービス等報酬改定も控えている。この検討会の意見も反映していきたい。(障害福祉課長)
<伊澤>(1)平成23年に「生活のしづらさなどに関する調査」が行われているが、この調査結果を活用できないか。
 →考えていきたい。
(2)医療・介護サービスの提供改革のための新たな財政支援制度について。医政局の都道府県担当者会議資料では、消費税を財源として都道府県が基金をつくり、財政支援制度の対象事業(案)として、「精神科医療機関の機能分化を進める観点から、病床を外来施設やデイケア施設等新たな用途に供するための回収、施設・設備の整備」と書かれている。これはすでにこういった計画が進んでいるということか?
 →白紙の状態
<座長>時間が全くない現状から、共通理解できるところを議論していきたい。構造転換理論は短期では難しいと思う。今回は新しい切り口で議論したい。実効性のある議論を。塩漬けになる議論はしない。


【所感】

 3か月という極めて短期間で長期入院者の地域移行の具体的方策を示していくことには、困難も伴うことが予想されるが、毎年多くの方が病棟で亡くなることを考えるとスピード感をもって検討を進める必要もある。もっとも恐れることは、議論が停滞して改革の流れが一歩も進まなくなることである。求められているのは、地域移行を進めていくための具体的な青写真であり、そのためにも長期入院の実態が明らかにされる必要がある。

(文責:常務理事 木太直人)


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