<2013/10/22>
日程:2013年10月17日(木)10:00〜12:15 場所:厚生労働省 省議室(9階)
事務局から指針案中間まとめについて前回からの変更点が報告され、10月15日に社会保障審議会障害者部会で中間まとめを報告した際に出た意見の紹介がなされた。
また、第6回以降の検討会では居住サービス資源を含む保健福祉との連携やチーム医療についての議論をすることになるため、精神保健行政および福祉施策に関する資料説明が事務局からなされた。
その後、岩上構成員と近森構成員からのヒアリング(資料参照)があり、指針とりまとめに向けた議論となった。
資料は厚生労働省の下記URLから確認ください。
<厚生労働省サイト>
・第6回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会資料 [関連資料]社会保障審議会障害者部会(第52回)(10月15日)資料
<倉橋>全国保健所長会の基本的考え方として、人権擁護、精神医療の質の向上に関して全面的に賛成。保健所としても積極的に機能を果たしたいが、そのためには予算も人員も必要。特に区市型の機能整理が必要。医療に対しては実地指導権限を使って協力し、地域に対しての機能としては地域を分析して改善に力を発揮したい。地域医療に関しては未治療、治療中断者へのアウトリーチ体制をつくる。その運営の管理指導機能を持ちたい。早期に必要な医療につなぐというだけでなく適切につなぐということだと思う。また、地域精神保健福祉に対しては、市町村の体制強化に対する指導強化機能を果たしたい。また、指針の見直しが5年とされたが、医療計画の改正年の3年後に合わせるべきではないかと考える。
<田川>提示資料(4および5)を見ながら。市町村の相談支援事業者では引きこもりや発達障害のようにきめ細かく丁寧に支援していくケースなどへの機能は弱いのではないか、ここは保健所の機能ではないか。また、コーディネーター機能も必要ではないか。
また、就労移行支援事業者で4割が一般就労を出せていない。一方、身体障害者に迫る勢いで、精神障害者の就職も増えているのに、移行支援事業者では一般就労できていない。統計を見ると4,000人が就労しても辞めてしまっていて、精神障害の場合は就労定着が一番大事。6か月以上の継続的な支援が必要。6か月働けない事例はもともとマッチングが悪いか支援が足りない。ジョブコーチについては、今、障害者雇用対策課で検討されているが、医療機関のコ・メディカルとの連携できていない。改正雇用促進法の5年後の法定雇用率の実施の際に、精神障害者は辞めてしまうから駄目じゃないかと言われないようにしないといけない。
<長野>保健所や精神保健福祉センターの機能だが、統廃合が進む現状においてなんでも打ち上げ花火は無理。人員等実態を把握して、法的なことも含め見直すことも必要。保健所等に関して指針の記載はまだ衛生法時代のものに感じる。本人が主語となっているものがない。本人を護るためのものか、入院先を探すのか、2つの機能を持っているように見える。実際にも双方の機能を持たされてきたまま。
また、資料5のグループホーム・ケアホームが気になる。24時間ケア付き住宅が足りない。ケアホームがわずか8,200か所くらいしかない。精神障害者が使うのに課題がある。もう一つの地域の検討会があるが、こうした議論が不足しているようにみえる。
<長谷川>岩上氏のプレゼンの中で、病棟転換型居住系施設の議論をということがあった。病室で人生を終えるよりは自分の部屋のほうが良いとのことだったが、どのような部屋となるのかが重要。また、時限というが、具体的なイメージについて質問したい。
<岩上>まずは、そういうことも含めて議論しましょうと言っている。急性期を手厚くとなれば、療養、慢性期が薄くなる。それでいいのか、というようなことを議論していきたい。結果的に病床が減少するということでよいと思う。また、この間、反対があったのはわかっているが、議論しないと選択肢が持てない
<伊藤>岩上氏の意見に賛同。中間まとめでは病床の減少が示されている。実現のためには、福祉系居住施設への転用も含め、病院で技術をもったスタッフのたとえばケアホーム等への有効活用、再配置の検討が必要。
<伊澤>病棟転換型居住系施設に対して反意を示したが、議論していくことは賛成する。是々非々で多角的に議論していかないといけない。その際に、街で暮らすという視点を考えたいが、街中にある病院なら良いのかということも含め、街中とはどういうことかということも大事なポイント。早急に議論の場を構造的に作ってほしい。
<河崎>いろんな多様な選択肢必要。再構成しながら資源を創設することが重要。そのことによって機能分化が進んでいく。重要なのは敷地内か外かではなく、「自分の生活の場」についての議論だと思う。保健所についても言われたが、財源についてはどこについても重要。
<千葉>岩上氏に賛同。まずは議論する場が必要。いい悪いではなく、適切なのか、そうでないのか、現に受け皿が十分にできるのを待てない人たちがいて、病院で死んでいく人生を終えていくのを忸怩たる思いでいる。今までは看る場がないために押し付けられてきたという気持ちすらある。シンボリックでなければいけない。現実的なことは別。たとえば、グループホームのサテライト型は同一建物では駄目というが、1階がグループホームで10階にサテライトがあって何故いけないのか。1階が病院で2階がアパートで何故いけないのか。住まいとしてきちんと改造されていればよいと思う。
<中板>保健所についての記載箇所について、保健所は公衆衛生を担う機関であり、予防医学の視点で動く。それは1次予防から3次予防まである。その視点で記載してほしい。普及啓発、疾患の発生予防、適切な相談、早期介入、環境整備。それと、障害福祉計画との連携に介護保険法に基づく事業との連携も加えてほしい。保健師というのは、契約に基づかなくても訪問できる職種である。地域ケア体制を構築する、関係者の連携体制については保健所がリーダーシップをとれる。
<佐藤>近森氏のプレゼンについて、一般医療と精神医療の融合事例は素晴らしい。精神医療の無駄も削げる。従来から言っているが、救命救急に精神科医がいればよいが、財源等から進まない。財源を充ててほしい。また、保健所は全国的にみて精神保健福祉全体をマネジメントしてほしい。
<吉川>病棟転換型居住系施設について議論はしてほしいが、患者にとってその人らしく生活するという際に、気持ちや状態は揺れたり変化したりするので、そこからさらに移行する支援を継続することについても考えてほしい。
<広田>住宅政策が打ててこなかったことが大きな反省点。精神科に対して一般科という表現は他科と改めてほしい。精神科が特殊に聞こえる。
<田辺>病床削減および入院中の高齢者問題を含む認知症問題については今後切り込んでいく議論をしないといけない。BPSDで入院して改善しても帰せない状況がある。福祉サービス利用者が増えていることで、手帳サービスの展開があるが、手帳は福祉サービスのみ対象で保健サービスが遅れたままとなっている。保健サービスというのは見えにくいため、省略されてしまう。手帳サービスに保健と福祉のサービスを一体化した展開ができないか。
<澤田>広田さんに賛同、一般科は他科にしてほしい。患者同士の交流ということについて記載してほしい。また、ガイドラインを作ってほしい。病院内ではすべての権利を取り上げられてしまい、何のために生きているのかという気持ちになる。代弁者制度についても記載してほしい。就労支援について、IPSとかアウトリーチとか診療報酬をつけてほしい。また、WHOの健康の定義にはスピリチュアルなこともあるが、指針案にはまったく触れられていない。自身、宗教に救われたこともあるし、入院中に聖書を読んだりした際に同室の患者も一緒に加わったこともある。そうした活動や行為ができるようなことが認められるべき。
<田村>国策であった民間依存の病院収容から、治療と生活支援体制の発展により地域医療の方向に政策転換しているこれまでの歴史認識を踏まえ、今後本当に良質な医療の提供を確保するための、国の責任と覚悟を冒頭に明記し、指針を絵に描いた餅で終えないで欲しい。
プレゼンされた近森病院のような、精神科病院の優れた取り組みは、その病院の自助努力によるものが大きく、良質な医療を行えば赤字になるような体制では持続できない。
国は診療報酬の位置付けや財源確保を行うことを示してほしい。
保健所は精神科医療に関する部分では今後も役割が大きいと思われ、統廃合や業務 縮小の中でも必要な人員確保をしてほしい。また岩上さんのプレゼンにある三重県・新潟県等の先駆的取り組みは、国が主導して全国展開につなげてほしい。
「アウトリーチ」など用語の定義があいまいなものは最終まとめでは整理して欲しい。今の記載ではかつて精神科病院でやっていた「往診」との違いがわからない。在宅への医療や相談の出前を意味するなら明記すべきであり、入院への導入がある際は保健所等の関与を必須とするなど、人権侵害が生じない体制にすべきである。
人権に配慮した精神医療の提供について。医療保護入院制度は今回の改正ではマイナーチェンジでしかなく、まだ課題がある。生活環境相談員選任、院内審査会開催、精神医療審査会によるチェックなどを明記するとともに、制度の見直しも必要と思われる。
岩上さんのプレゼンにあった「病床の転用による退院」について今後協議することに賛成。かつては必要だった病棟も、治療の進歩により不要となったなら、それを何に使うか考えるべき。その際、入院患者が自覚なくいつの間にか病棟から施設に移されていた、ということでなく、自覚的に退院できることが前提で、病床転用施設は選択肢の一つと考えるべき。どのような施設なら良いのかは、利用するかもしれない方々の意見を十分に聞いて検討されるべきと考える。
<良田>利用する側としては、医療なら保健所や精神保健福祉センター、福祉なら相談支援事業者かなと思うが、役割分担等よくわからないのが実情。適切な機関に結び付けてくれるのは何処なのか、誰なのか。保健所がそういうことしてほしいと思うが、できない現状の中で、あれこれ書いても無理だと思うので、どうするかを議論してほしい。岩上氏のプレゼンであったように、保健所の業務運営要領の見直しも必要と思う。また、検討会を重ねても、少しずつメンバーが変わりいつも1からの議論となり、時間切れとなる繰り返し。常設の検討会が必要だと考える。
<千葉>関係機関の責務については、国と主務官庁に関する記載が全く抜け落ちている。
<田川>救急医療について、クリニックの医師の多くは自分が主治医である患者のことをカバーしてもらって有難いと思っている。精神科の外来を見ている医師は、救急外来医として登録してもいいのではないか。
次回第7回は11月29日(金)17時から。指針案についての議論と、改正法の施行事項についての検討がなされる予定。省令内容案が示されるか。12月20日(金)に最終回の第8回が開催予定。
中間まとめがなされたが、前回出された意見がすべて反映されたわけではないため、今回も精神科医療の機能分化に関する意見が出された。
岩上構成員のプレゼンにおける指摘は非常に鋭く、検討会構成員の多くが聞き入っていたように感じた。特に、保健所の役割機能と、病棟転換型居住系施設について、具体的なイメージも含め議論はするべきとの問題提起は、その後の議論の起爆剤となっていた様子。
病棟転換型居住系施設については、既に制度化されてきた資源の整備もあるが、その整備を待てずに病院で人生を終わる患者の少しでも違う生活の場を考えたときに、病院敷地内であれば即座に否定ではなく、今は病院にいる患者さんにとって、どのようなことであればよいのかなど具体的な議論を深める機会は持つべきであるとの意見に賛同が多くあったように思う。
地域保健に対して保健所が積極的な役割を果たせるかについては、統廃合されているなどの現状をきちんと踏まえた上で、業務に関する要綱の見直しなども含め、役割や業務を絞り込む必要があるのではないかなどの意見が重なった。また、財源について、国と主務官庁の役割についての記載を求めるなど、指針が実効性あるものとすることを求める意見は多かった。
(文責:常務理事 大塚淳子)