お知らせ

<2013/10/04>

【傍聴レポート】第5回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会

日程:2013年9月30日(月)17:30〜20:00   場所:厚生労働省専用第26会議室

【検討概要】

 第5回の検討会は、事務局から指針案の叩き台について説明がなされた後、構成員からの意見・質疑が行われた。
 出された意見の内容は以下のとおり。出された意見を反映する作業は座長と事務局に一任された。その中間まとめをもって、10月15日に開催される社会保障審議会障害者部会に「障害者の地域生活の推進に関する検討会」と共に中間報告がなされる予定。
 次回第6回は10月17日(木)午前10時から12時までで、岩上構成員と近森構成員からのヒアリングがなされる予定。その後11月29日に第7回、12月20日に最終回の第8回が開催予定。

第5回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会資料(厚生労働省サイト)


【所感】

 事務局からは、今回のまとめはあくまでも中間まとめであることが強調されていたが、指針に示されたことの実現可能性のための財源に触れていないことや、「結果として病床は削減する」という表記については意見が多く出された。今後の3回の検討会の内容と策定後にいかに具体の計画等に反映する仕組みを作るかが重要であると改めて感じた。

(文責:常務理事 大塚淳子)


良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針案中間まとめ(案)
検討会構成員の意見

強調文字が構成員の意見であり、傍聴に入った大塚がまとめたものです。

(全体的な方向性)

(良田)方向性のために抽象的表現になっている。誰が、どこが責任をもって進めるのか、今後明確にしてほしい。家族の支援を入れてくれたこと感射。しかし、例えば家族会支援など、以前は保健所がしていたが、今はあまり支援がなされず路頭に迷う家族会もある。相互支援という重要な機能を持つ家族会支援も保健所でなくてもどこかにお願いしたい。
(中板)保健所は、以前は作業所作りや家族会支援してきた。今もないわけではない。また企画や立案、仲間づくりなど行っている。
(広田)厚労省の検討会も13年目になるが、実態は変わらない。国・自治体の住宅施策の不作為や国民が優しくないなどいろいろあるが、厚労省も腹を括って社会的入院患者の解放、病床削減、診療報酬を上げる、人員体制を手厚くするという4点セットを書き込むべき。
(河崎)「必要な措置等」とあるが、本来は財源に触れるべき、どう考えているのか。また、「環境整備に努め」は「環境整備を行い」と強い意志を示すべき。

→(蒲原部長)財源措置を視野に入れているが、他にも必要な措置あるので幅広く読めるようにしている。
(山本)先ずは本人の同意が原則と追記した上で例外的な場合を記す形とすべき。
(岩上)全体の方向性に広田さんの言う4点セットを出して方向性を明確化すべきだと思う。地域移行の件は、総合支援法の3年後の見直しに向けて、高齢者と障害者の施策についての課題があり、そこに反映させられるよう、ここに盛り込んでおくべき。
4ポツ目の「本人の同意なく治療が行われることがあることから」の後に「意思決定支援を行い」を入れてほしい。5ポツ目にある「精神障害者が地域の理解を得ながら生活する」は精神障害者だけが理解を得ないといけないのはおかしいのでカットしていいのでは。
(佐藤)結果として病床が減少するというところだが、病床削減が目的ではなく、地域移行が目的のはず。民間病院で地域移行の技術もあるのに、政策的なものが上手くいかない。地域移行を進めるために精神病床を削減するという書き方にして、国の姿勢を出してほしい。

第一 精神病床の機能分化に関する事項
一 基本的な方向性

(伊澤)結果として、精神病床は削減する。という書き方は腰が引けた表現であり、「地域移行を更に進め、精神病床を削減する。」としてほしい。
(野沢)本当に病床は減少するのか。地域の資源が充実すれば患者は地域に出て行くことになり、普通なら市場原理が効くが、精神科医療は果たしてそうなのか。初回で出た病棟転換型の話しがあったが、指針案にはない。しかし、踏み込まないと病床削減はできないのではないか。先の具体的手立てについては厚労省が示さないといけないのではないか。
(三上)病床の機能分化と地域移行とは直接つながらない。むしろ、住宅政策が進めば地域移行ができる。そのことは、この間厚労省が示してきた各種の調査研究のアンケート結果でも明らか。機能分化はむしろ在院日数を減らすとか、良質な医療提供をどうするかの話である。
(千葉)病床削減という文言を入れた時、どうモニタリングできるのか、今でもオーバー分は新たに認めないということがあっても、今ある病床を潰すことができるのか、本当にするのであれば国が大胆な行政措置ができるのか、どのようなことをやっていけばできるのかということを書かないと、ここにあることは思いはわかるけれど、方策を具体的に示すしかない。
(伊藤)病床の減少は全体性の中で議論すること。志は高く、次のステップは具体的に一歩ずつ。本検討会で方向性は合意していると思うが、言葉に落としていく作業には、調整が必要となると思うので事務局に一任したい。
(伊豫)平成20〜21年ごろ、厚労省からの補助金による研究で、日本に近いのはベルギーの病棟転換であると紹介した。しかし、転換は名称だけに終わらず、質的転換も伴うもの。
(中島)「機能分化は」のくだりを国民が読んだら逃げを打っていると読む。「機能分化は迅速に行い、療養病棟は積極的に居宅に転換することで、当然病床は減少する」くらいにすべき。まとめは力関係もあるでしょうから事務局に任せるが、一般医療と同等にしていくということを言うべき。
(平田)出口を拡げる議論が多いが、早期回復のためにどうするかという視点が重要。精神科特例の廃止を書くべきだが、そうは書けないのなら、せめて精神科は一般医療と同等にし、人員を手厚く配置すべきと書くべき。前回の繰り返しになるが、精神科特例のせいで一般医療からことごとく差別されている。医療従事者もこれを言い逃れの材料にして質を上げてこなかった。具体的に、P2の三の急性期の箇所は、医師と看護師を一般医療と同等にすべきと書くべき。
(岩上)一般医療と同等にというのは、去年の精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会のまとめを受けて書くべき。

二 入院医療から地域生活への移行の推進

(岩上)地域移行や早期退院の支援のことに関しては、入院患者が適切な情報を得られるようにということを入れてほしい。

三 急性期の患者に対して医療を提供するための機能

(千葉)手厚い治療に包含されているのは、人員だけでなく、医療密度も書いてほしい。

四 入院期間が1年未満の患者に対して医療を提供するための機能

(山本)昨年の検討会で3カ月未満だけでなく1年未満の患者への人員配置について指針に書くものだと思っていた。もう少し具体的に決まった事がわかるように書くべきではないか?
→(事務局)内容を含んだ書きぶりにしたつもり
(良田)「家庭復帰と社会復帰する割合が低くなる」とあるが、どういう使い分けがされているのか?
→(事務局)調査結果などから、入院期間に応じて退院先が分かれるデータからそのまま反映した。
→(座長、事務局)「退院できる割合が低くなる」として調整の方向。

五 重度かつ慢性の患者に対して医療を提供するための機能・重度かつ慢性の患者の定義を調査研究により十分に検討し、定義を踏まえてその特性に応じた医療を提供するための機能を確保する。

六 重度かつ慢性の患者以外の入院期間が1年を超える長期在院者に対して医療を提供するための機能

(広田)外部の支援者というところを「仲間等」に変えてほしい。

七 身体疾患を合併する精神障害者に対して医療を提供するための機能の在り方

(伊豫)精神病床で身体合併症のある患者を診る体制を考える際、一般科には精神のリエゾンチームがあるわけで、それ以上の手厚さが必要。
(野沢)連携課題ということで言えば、老健局でも検討会が実施されていて、医療・介護連携についてかなり話題に挙がっている。もう少し掘り下げて質やスキルや知識が不足していることが課題として挙がっている。中間まとめ以降の議論かもしれないが、同様な視点で書き込む必要がある。

第二 精神障害者の居宅等における保健医療サービス及び福祉サービスの提供に関する事項
一 基本的な方向性

(広田)ここに社会的入院の解消をつなげるべき。
(中板)この項目を2分割して、精神障害者が地域で安心して生活し続けていけるよう当事者の主体性に基づく生活の質をあげられるような環境整備を推進ということを1本独立させるべきではないか。

二 外来・デイケア等の通院患者に対する医療の在り方

(香山)ここだけ、「社会復帰するため」と出てくるが、不要ではないか。外来についても、デイケアが出てくるが、デイケアが望ましいかどうか疑問がある場合もあるし、他にもリハビリテーションはある。外来やデイケアも含め、入院から外来まで一連の流れの部分として、断ち切られたものではないことがわかるような表現にしてほしい。予防の視点が重要で早期受診につながるシステムが重要。

三 居宅における医療サービスの在り方
1 アウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)

(広田)受療中断者で括らず、その中でもこういう状態で危機的状態にあるなど、定義をきちんと書いてほしい。
(佐藤)アウトリーチには、「公的機関と連携しながら」と入れてほしい。
(柏木)アウトリーチは導入に関して慎重にしてもらって公的機関が関与してほしい。

2 訪問看護

四 精神科救急医療体制の整備
1 24時間365日対応できる医療体制の確保

(田川)精神科診療所の医師が精神科救急に協力する意欲があることを話したが、ここにいきなりポンと書かれるときつい。精神科救急は地域でかなり事情が異なる。一次救急まではやっている診療所の医師がいる中で、この書き方では、意志ある人の意志を削いでしまいそう。書き方を工夫してほしい。できる限り、意欲あるクリニックのDRに参加してほしい。

2 身体疾患を合併する精神疾患患者の受入体制の確保

(河崎)主体が精神科医療機関にあるように読める。行政的に行いやすい体制を整備してくれないと進まない。書き方の工夫を。
(伊藤)2の3番目のポツの内容を、この後の五の一般医療機関との連携の箇所にも書いてほしい。

3 評価指標の導入

五 一般医療機関との連携

(広田)当事者としては、一般医療と精神科医療の連携はしてくれなくていい。どの科でも医師との信頼関係があればよい。

六 保健サービスの提供

(田辺)保健所やセンターでは、訪問支援が財源的に人員も含めできなくなっている現状に鑑み、2行目の体制整備の推進を前に出して書いてほしい。
(千葉)むしろ、書いてもらうことで財源を付けてもらうことのほうがよくないか。
(田辺)体制の整備をむしろ目的化してほしい。相談や訪問はそれぞれ各メニューとなる。
(佐藤)後段に出てくる関係行政機関等の役割の「市町村」の記述は、ここに挿入するべきではないか。

七 福祉サービスの提供

(広田)なんでもかんでも協議会が出てくると地方は大変。
(伊澤)地域の資源について整備推進だけでは弱い。早急にとか急激にとか入れるべき。最後のポツの頭の「また」は不要ではないか。
(柏木)居宅の場については、グループホーム等、総合支援法による場をたくさん作ってきているが需要に追い付かない。公営住宅等活用するには居住サポート事業等保証人制度の整備充実が必要。ハードの整備も必要だがソフト機能を強化すること追加してほしい。

第三 精神障害者に対する医療の提供に当たっての医師、看護師その他の医療従事者と精神保健福祉士その他の精神障害者の保健福祉に関する専門的知識を有する者との連携に関 する事項
一 基本的な方向性

(伊豫)チーム医療について、地域移行や退院支援との兼ね合いで書かれているが、先進的精神科医療の提供のためにも追加してほしい。
(田川)連携についてだが、いろんな職種が集まれば連携できるというものではない。連携するためにはコ・メディカル、精神保健福祉士がいることが重要。

二 精神障害者に対する入院医療における多職種連携の在り方

三 地域で生活する精神障害者に対する医療における多職種連携の在り方

四 人材の養成と確保

(良田)「精神障害者の気持ちを理解し」という箇所は「精神障害者と家族の」としてほしい。
(広田)ピアサポーターはここから独立させてピアサポートの項目を一つ立ててほしい。その中に当事者や家族等を入れたらよい。また、人材の中にホームヘルパーを加えてほしい。当事者が望むのは訪問看護よりホームヘルパー。
(柏木)ホームへルパーを加えるのは賛成。
(千葉)人材の養成と確保について、議論を聞くと、書きぶりが足りない。多職種のチーム医療の必要性とあるが、現状では資格者ばかりではない。世話人など考えると多職種と書くと制約ある。海外でも資格職以外の人にも支えてもらうという構造がある。人口減少社会にあって益々そういう方向。そこも加味して書いてほしい。

第四 その他良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保に関する重要事項
一 関係行政機関等の役割
1 都道府県・保健所

2 市町村

(三上)市町村の役割は重要で、地域包括支援センターが現在、介護保険の見直しの中で地域支援事業になった。医政局と老健局では、地域ケア会議の必須化など決めて行く流れ。約4,000ヶ所ある地域包括ケアセンターが担うことになっている、社会援護局でも地域包括ケアセンターを資源として活用できるように対応してほしい。
(中板)ここだけ利用者という表記はおかしい。障害福祉サービスや介護サービスと精神保健医療サービスを並べてほしい。三上委員が言ったが、全てが地域包括ケアという方向にいく流れが中心。保健所なども書いてほしい。

3 精神保健福祉センター

(田辺)精神保健福祉センターについて入れてくれてよかった。発達障害は2つめのポツに入れてもらった方が良いのでは。また後方支援のための訪問などがあるが、旅費等のことからできにくい。保健所との協力連携を書いてくれないと訪問は難しい。

4 精神医療審査会

二 人権に配慮した精神医療の提供

(山本)ICについて可能な限りとあるが、わかりにくい。国連原則に従う形で推進すべき。医療観察法では既にそのようにしている。
(吉川)人権に関して理念的なことだけでなく、個別性が損なわれることは人権も損なわれることになるので、医療体制の確保にも触れてほしい。
・急性期医療のニーズの増加に伴い、医療保護入院に係る診断等の患者の人権に配慮した判断を行う精神保健指定医が不足していること等を踏まえ、診療所の精神保健指定医が積極的に精神保健指定医としての業務を行う体制の整備を推進する。
(野沢)人権に配慮したという精神医療の提供に関連して、障害者虐待防止法がじき1年になる。研修が進んで活性化している。研修は虐待にならないよう小さな予防的取り組みを学ぶものが多く、寄り添うなどの内容。それに倣って研修などを充実してほしい。
多様な疾患に関する研修では、医療福祉の従事者だけでなく、発達障害などもあり、教育面での人材も対象にしてほしい。文科省となるか。
(田辺)人権に配慮した〜の項目に、今回の法改正では途中になってしまったけれど「非自発的入院が多い現状に鑑み権利擁護の在り方を引き続き検討する」と追加してほしい。
老年期精神障害に書かれている認知症に関して権利擁護の検討が必要。今回の医療保護入院は家族等の同意要件で入院できるが、認知症はなかなか帰しにくくなり、長期化するのではないかという懸念がある。全体の権利擁護の検討を書くのが難しければ認知症に関して書いてほしい。

三 多様な精神疾患・患者像への医療の提供
1 自殺・うつ病等

2 老年期精神障害(認知症等)

3 依存症

4 児童・思春期精神疾患

(中島)拠点病院を中心とした診療ネットワークの整備等というところは、児童思春期の専門のクリニック等の整備を追記してほしい。

5 摂食障害

6 てんかん

7 高次脳機能障害

8 その他の必要な医療
(1)災害医療

(2)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する医療

(中島)「専門的なものとなるよう」の後に「情報公開を行い」を追記してほしい。

四 精神医療の標準化

(千葉)先進的医療の提供は、この項目に標準化と高度化という形でポツを増やして入れた方がよい。

五 精神保健医療福祉に関する知識の普及啓発

六 精神医療に関する研究の推進

七 他の指針等との関係の整理

八 推進体制

(長野)第四については議論不足。後半の議論できちんとやらないと中途半端になる。医療改革進めば、保健が重要。特に保健所の機能は予算と併せて重要。予防についての記載が入ったのは重要。今まで精神科医療は3次予防だった。やっと2次予防まではできるようになりつつあるが、1次予防は着手できていない。ここはしっかり議論すべき。精神保健福祉センターは公的広域機関だが、全て個別相談に終わっている。保健所とセンターの役割分担ができていない。高齢化によって依存症はますます増える。特に依存症は予防が最重要。また2次、3次予防については自助グループが大事。依存症は自助グループとの連携が大事。
(広田)予防は一本の柱立てをしてほしい。うつや認知症など、国民の心の健康保持が重要。
(岩上)推進体制に5年を目途としてとあるが、精神保健福祉法の改正は3年後見直しなので、こちらも合わせるべきではないか。
(中板)ソーシャルキャピタルの考え方に照らして、精神保健医療福祉も普及啓発だけでなく、ピアサポートにソーシャルキャピタルの醸成を書いてほしい。

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