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<2013/08/12>

【傍聴レポート】第2回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会

 第2回検討会は、まず事務局から本検討会において想定される論点の案(資料1)と今後のスケジュールの案が示され、5名のヒアリング、意見交換が行われた。


日程:2013年8月9日(金)9:30〜12:00  場所:都道府県会館 402号室

<議事1>構成員からのヒアリング

1.平田豊明構成員(千葉県精神科医療センター長、日本精神科救急学会、全国自治体協議会)

 日本は世界の趨勢から遅れを取っているが、そのことに対する異議申し立てが機能分化であると認識して、急性期における治療的機能のモデルを示したい。精神科救急の任務は迅速性にある。今入院をしている慢性患者は病床の3分の2を占めているが、慢性患者も初めから慢性だったわけではない。救急医療は、危機状況に手厚い医療を提供し、慢性化と長期在院化を防ぐためにあると考えている。
精神科救急医療体制整備事業は全国的に展開されているが地域差が激しい。大都市部の精神科救急事業は重症患者のトリアージで占められている。
一方精神科救急病棟も現在115か所となっているが、まだ整備されていない県も残っている。救急病棟は精神病床の2%に過ぎないが、年間の全入院件数の33%をカバーしていることになる。
 千葉県精神科医療センターは、50床の病院で94人のスタッフを配置。基本方針は、「急性患者を速やかに受け入れ、手早く治して社会に戻し、地域で支える」にある。センターの診療実績としては、6割が夜間・休日の受入れで、7割が6週間で在宅に戻っている。
わが国の精神科救急医療の問題点の1つは、各地の精神科救急病棟での医療が不均等で、利用者の利益を後回しにして経営を優先しているところもある。改革指針案としては、1)アクセシビリティの向上(アウトリーチの展開等)、2)合併症対策推進、3)救急病棟における医療水準の向上(共通患者データベース活用によるクオリティの競争化等)をあげておきたい。将来的には新規の非自発的入院は高規格の病棟に限定すべきと考えている。

2.伊豫構成員(千葉大学大学院医学研究院精神医学教授)

 重度慢性統合失調症患者への良質かつ適切な医療の提供について提言。国際的には治療抵抗性統合失調症患者(TRS)は、通常の抗精神病薬に反応しないか、または錐体外路系の副作用のため使用できない患者と定義される。また、ドパミン過感受性精神病(DSP)は抗精神病薬への効果耐性により大量投与となり、服薬中断、ストレスなどで容易に再燃を来す病態。いずれもクロザピンが有効とされているが、mECTとともに日本では普及していない。
 平成24年度の精神科病院調査では、長期入院統合失調症患者の半数が「精神症状が極めて不安定」なため退院できないと推定。そのうち8割以上がクロザピンやmECTの適応に当たらないとされたが、その要因には副作用への懸念や麻酔科との連携の難しさが背景にある。このほか現状の問題点としては、抗精神病薬の過量投与、再発・再入院の繰り返しによりDSPが形成され治療抵抗化すること。
 対策としては、クロザピンやmECTの適応者への提供ができる体制を構築すること。千葉県ではサターン(土星)プロジェクトとして総合病院精神科と精神科病院が連携して、クロザピンを精神科病院で使用し、重篤な副作用(無顆粒球症)が出た場合は総合病院が受け入れる体制を取っている。将来はクロザピンを使用できない病院から使用可能な病院への転院、クリニックでのクロザピン投与と精神科病院、総合病院での入院対応、副作用対応を進めていきたい。

3.伊澤構成員(全国精神障害者地域生活支援協議会代表)

 精神科入院医療の課題として、社会的入院の解消、入院医療の適正規模化(病床削減)と精神科特例の完全撤廃、他科からの排除の禁止があげられるが、これらの課題解決には、まず昨年の精神科医療の機能分化の検討会報告書を基本(最低)のラインとすることと、障害者権利条約(14条、19条、25条)との関連が大きいことを指摘したい。
一方、生活支援における課題としては、地域移行・地域定着の強化をまずあげたい。昨年からの個別給付化は歓迎するが、退院に後ろ向きになっている人には以前の補助金事業のピアサポート等が有効であった。このほか、基本的には総合福祉部会の骨格提言の多くをくみ取るべき。提言には、障害者施策の財政をOECDの平均値(現在の倍)にまで引き上げることも盛り込まれている。
 街で暮らすための居住支援メニューはGH,CHに限定せず多様な住まい方を提供できるようにするべき。病棟転換型福祉施設は亡くなるまでの終末施設になる懸念から反対。
また、日中活動では以前の作業所のような居場所機能の回復が求められるが、施設・事業コンフリクトの克服は大きな課題となっている。
今後は「Aging in Place」(住み慣れた場所で安心して歳を重ねる)方向で。

4.吉川構成員(社団法人日本精神科看護技術協会専務理事)

 今後の精神科医療提供体制のイメージとしては、入院医療を急性期中心とし、外来・在宅医療の比重を増やし、地域での継続医療の充実強化を図ることと、入院医療と外来・在宅医療の一体的な医療体制を確保すること。
 精神病床の機能分化については、クリティカルパス、地域連携パスの活用が評価される制度を導入し、救急・重症者への集中的な入院医療の確保のために、24時間の入院受入れ、集中的な医療・看護を提供できる人員体制の確保、急性期以外でも手厚いケアが提供できる看護人員の確保が必要。
 地域保健医療福祉サービスの提供においては、訪問看護も医療機関、精神特化型訪問看護ステーション、訪問看護ステーションの棲み分けが必要。現状では、多職種配置に課題がある。外来部門の体制強化では、外来、デイケア、訪問看護等の総合部門創設し、人員配置を充実強化し、総合的な取り組みが評価される仕組みを導入すべき。
 制度の狭間の解消として、未受診者やひきこもり状態などにある人には相談支援事業との組み合わせも検討すべき。地域における連携として、医療連携体制評価の導入、相談支援事業者との連携を促進する仕組みの導入必要。また、人材育成も指針に盛り込むべき。

5.倉橋構成員(東京都荒川区保健所長、全国保健所長会副会長)

 保健所の現状は、設置数の減少、設置形態も変化。一方で業務量の増大、事例の複雑困難化の傾向。個人情報保護の問題による役所内での課を超えた情報共有の難しさなどがある。
 指針策定にあたって、保健所には市町村にはない法的義務を行っており、医療と保健福祉の連携には保健所と市町村との連携・協働が欠かせない。退院支援、地域生活支援については、医療・保健・福祉等の十分な連携協力体制の構築が必要。その際、都市部の医療資源の偏在等の事情を勘案すべきである。

<議事2>意見交換

 前半の急性期医療・重度慢性と後半の3名のヒアリングに分けて以下のようなな質疑応答と意見があった。

(前半)

(後半)


【所感】

 前回に引き続き、構成員のヒアリングのうえで意見交換が行われた。今回は、急性期、重度かつ慢性における医療のあり方に関する意見と、精神障害者の地域生活支援を行う事業所団体、精神科看護団体、保健所からの意見がそれぞれ述べられた。意見交換はどうしても散漫になりがちではあったが、共通していることは、チーム医療や地域連携を基本として、質の高い医療を提供していこうということであり、そのことを具体的にどのように指針に盛り込んでいくかが課題となる。

(文責:常務理事 木太直人)

★第2回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会資料はここから入手できます。


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