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<2009/08/07>

22回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会が開催されました 

 

 8月6日(木)15時30分より、航空会館(東京都港区)において、標記検討会が開催されました。今回は前半の検討で「精神医療の質の向上について」と「早期発見・早期支援のための普及啓発について」を議題とし、後半では第15回から20回の検討会における議論の整理について、意見が出されました。

1.精神医療の質の向上について/早期発見・早期支援のための普及啓発について

 冒頭の事務局からの資料説明の際に、「人員基準の向上についてはこれまでも話されたため、今回はそれ以外のことについてお話しいただきたい」と発言がありました。また、議長の指示より、本日はまとめも控えているため、議題を通しての意見交換が行われました。

 初めに、「東京精神病院事情(ありのまま)1998→2003」(東京精神医療人権センター・東京都地域精神医療業務研究会編)を今回の資料として提出した構成員より、医療は公共の資本と言われ、都道府県による情報提供制度も開始されているがHPを見ても国民が求める情報としての、どのような治療や診療が提供されているかの実態はわからないが、本誌は、民間団体が東京の精神科病院の質の評価と情報公開についてチャレンジしている資料である、として紹介されました。また、専門家の取り組みの限界があり、ピアによるペイシェントアドボケートなどが重要という意見もありました。それに関しては当事者の立場から、PAだと病院に入れて友人の面会に来た当事者が入れないみたいになるとおかしいとの反論も出ました。
 また、情報公開に関しては、政府の役割であることの確認をという意見に併せて、医療提供者に最も影響を与える評価が有効だという意見や、ピアレビューの取り組みの紹介などがありました。
 一方で、医療の質のチェックに関しては新しい仕組を作らずとも、保健所の医療実施審査の機能を十分に発揮すれば可能なはずであるという意見も挙がりました。

 次に、日本の患者への抗精神病薬の投与量について、諸外国の単剤投与率と比べて、多剤投与が格段に多いという点に関しての意見も多く挙がりました。
 「かつてから疑問を感じた多剤処方だが、どれが効いているのかわからない。早急に改善すべき。患者は一般の方に比べ短命であるように感じており、これは薬の大量投与の負担もあるのではないか。改善するには、学校教育や行政誘導で単剤から始めるように指示していくべき」との意見や、「日本の多剤投与の実態が、国民に明らかになることは良い。要因分析と改善策が必要。多剤から単剤へ切り替えた事例等の共有化や周知がはかられると良い。医師によっては処方変更に抵抗がある人もいる。薬剤の生活場面での効果や影響を踏まえた処方になっていないのでは。医療の基本は最低限の侵襲性で最大限の効果。実際には飲まなかったり棄薬している患者がいて、処方について主治医との相談が進まないという現状もある」との意見が出されました。
 また医師である構成員からは「薬を処方する立場からすると、保険点数等でも多剤処方をしても何もおとがめがない。アメリカであれば本人が望む処方であるか、保険会社がチェックするが、日本にはそういったことがない。医師の善意だけではうまくいかないため、ガイドラインやチェック機能をつくるべき」「多剤投与には経緯があり、そうせざるを得ないこともある。ある部分では欧米でも併用投与の有効性が認められているはず」との指摘もありました。
 ガイドラインについては診療のガイドラインについて語られているが、国民が必要とするのは、どんな状態の時にどこに相談に行き、入院の必要性がある状態なのか、入院し続ける必要があるのかに関する国としてのガイドラインだと思うという意見も挙がりました。

 精神科医療のあり方については、認知行動療法と薬物療法の併用の有効性が示されました。それについては「現在の精神科診療では数をこなさなくてはいけない。医師が療法を学んでも、それを実際の場面で実行する時間がない。イギリスでは看護師や心理士が認知行動療法を行うことができるように、日本でも臨床心理士を医療のチームに入れることが求められる。医療は医者が行うのではなく、患者本人が頼めるものにしていくべきで、消費者が賢くなり、選べる力をつけていくべき」との意見がありました。
 また、家族の立場からの意見で、主治医が変わるまでの13年間、主治医から診断名や処方についての説明をしてもらえず、苦しくつらい思いをしたという当事者を抱える家族の事例や、3年間ひきこもり状態となっている当事者の親から処方が全く変更ないことに関して、少しでも社会参加できる方向をめざすために主治医に訴えるが、「家でおとなしくしているのだから良いのでは」と取り合ってもらえず悩んでいる、という事例が紹介されました。当事者側の意見を取り入れてもらえるような取り組みを希望する声は多数の構成員から挙がりました。
 また、その他「長期入院をきちんと制限する取り組みを進めてほしい。1年を超える入院をどう捉えていくか、治療の有効性と長期化する弊害をもう一度考えるべき」という指摘や、ガイドライン等が出されたと見聞きはするが、現場の関係者が知らないことがあるが、作成するまでの過程は大切だが、その後の活用が重用なので普及の仕方に工夫が必要」「クリニカルインディケータはアウトカムも重要だがプロセスにおける技術やツールは、特に有効なものの周知、制度化が必要」との意見が出されました。
 質の担保としては、「診療報酬上の扱いが重要」との意見が出され、さらに「現在の医療はいい病院と悪い病院が拡散してしまったと感じる。一定の基準を国で設ける検討をすべき。そうでないと水準の担保はできない」、また、「48対1の区別をなくすことが第一の目標。今の状況では医師も従事者もゆとりをもってみることができていない」と指摘がありました。また、医療従事者を目指す学生における精神科への偏見についての問題や優秀で良質な人材が勤められない勤務状況の問題についても意見がありました。

 普及啓発については、教育現場での教師の困惑などが指摘され、精神科でない医療機関も、精神疾患について詳しくなり、精神科へのつながりをもてるようになるべきとの指摘が多数出されました。また、「地域の中の作業所や、小規模事業所はもっと普及媒体として活躍できる」との意見がなされました。

2.これまでの検討会における議論の整理(第15回〜第20回)

 検討会後半は、これまでの検討会における議論の整理について事務局より資料の説明があった上で、「中間まとめで出された論点や課題に関して、ひととおり議論ができたと認識している。確認の上、追加、修正を発言いただき、報告書作成に向けていきたい」と投げかけられ、これまでの議論の内容について、事務局から提示された資料に修正や追加等さまざまな意見が出されました。

 「精神障害者の高齢化が進んでおり、年齢に伴い当然合併症もでてくる。そのことについてもきちんとみていくべき。また、総合病院には一定の役割を与え、合併症状もみるように、国家施策で進めるべき」と意見がありました。また「保健所のあり方の整理をもう一度行うべき」という指摘や、「病院から離れた場所へ退院した患者への訪問看護についても訪問看護ステーションなどの活用が望ましく、そうした資源のマネジメントを相談支援事業で行えるようにしてほしい」という意見がありました。
 確認要望事項としてケアマネジメントは生活全般を対象とし、医療はその一部であるという位置づけであることを確認したいという意見や、生活支援のケアマネジメントとして医療保険による資源もマネジメント可能資源とし、しかし、医療機関が提供する医療サービスのマネジメントは多職種チーム医療の視点で質を担保することが可能なように定期的ケアカンファレンス等、マネジメントのあり方を診療報酬等で誘導してほしいという意見が挙がりました。

 また、「今後は高齢化にともない、認知症患者は増え、いずれ200万人になる。そのうち居宅でみられるのはせいぜい30万人で、老健施設、特養ホーム、グループホーム等で残りを受け入れるのは無理である。認知症の入院入所施設は必ずもっと必要となるのだから、統合失調症の対応による病床削減前提の話は待って、今ある病床を認知症患者のベッドとして有効につかうのが良いと思う。精神病床の現状の平均15対1の看護体制で十分看ていくことが可能」と発言がありました。これに対して、「現行の精神保健福祉法の中で認知症の患者を看ていくことのあやうさをもっと認識すべき。精神疾患と合併している患者と、高齢に伴う認知症のみの患者の混在をどうみるのか。隔離拘束の問題もあわせて考えていくべき」「特養で15対1といっても、傾斜配置をすると45人に対して日中は4、5人、夜間は2名という状態。現場のたいへんな状況を想像してほしい」「精神科の病床が、今度は認知症者の社会的入院の場になってしまう」との意見が出されました。また、「『老い』」と『病気』が混同されて話されている。老いに伴う症状は自然な形でのケアがのぞましく、病院・医療については病気にしぼって議論していくべき」と意見がありました。
 精神科特例の撤廃に関するスケジュールを宣言してほしいということや、検討会で議論となる事項に関しては先送りせず、別の小さな戦略会議のようなものを設置してほしいという意見なども出されました。
 また、課題によっては厚労省だけでなく他省、老健局や国交省、総務省等との合同の議論や課題の整理、統一見解も必要であり、示してほしいという意見が出されました。

 次回(第23回)の検討会は9月10日(木)10時から開催される予定です。詳細は追って決定されます。
 資料はHPにアップ次第リンクを貼る予定です。

傍聴記録:事務局 植木 晴代


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