<2010/03/04>
第8回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会 傍聴記録
日時:2010年3月2日(火)10時〜12時
場所:三田共用会議所
冒頭、京極座長より挨拶があり、本検討会が今回をもって最終回となること、途中で精神保健福祉士法改正案が提出されたものの政権交代に伴う障害者自立支援法等改正法案の廃案とともに廃案となった経緯はあったが、必要な作業として養成のカリキュラム等については改正に向けた取りまとめをしていくことが話された。
続いて事務局より資料説明が行われ、資料番号に沿って構成員からの質疑・意見が求められ、下記のような事項が議論された。(は大塚構成員の発言、は他の構成員の発言)
- (P2)専門科目の時間数に関する対応案として、「精神保健福祉活動を支える制度・サービス」とあるが、科目表記として「活動を支える制度・サービス」という表現に違和感がある(同様意見2件)。
- 上記同様意見に加えて、現場からいえば、活動によって制度やサービスを変えていく側面もあり、活動を全て制度・サービスによって支えられているわけではないこともあり、精神保健福祉の支援に関する制度・サービスという表現のほうがまだいいかとも思う。
⇒座長提案として、「精神保健福祉活動のサービス体系」といった表記としてはどうか。
- 精神障害者という表記について。精神疾患を有する者ととらえるのかどうか。精神障害とすると障害として固定的に捉えてしまうのではないか。急性期においても精神保健福祉士が地域でも病院でも積極的にかかわっていく必要があると思う。急性期も医師の独擅場ではないはずで、多職種がかかわっていくべきステージである。このことを教育の部分でもしっかりしてもらいたい。
- 都道府県の精神保健行政担当がほとんど福祉部等に移行してしまったが、精神の領域がすべて「福祉」として捉えられるのは良くない。一貫性がなく現場に混乱をきたしている。教育現場でも医療や疾患論も福祉だということでは混乱する。線引きは難しいが、医療も福祉も必要なのでどちらかに偏らないように考えてほしい。急性期にも飛び込んでいける精神保健福祉士を育てていく必要がある。
- 地域からみると、どこの領域で行われているかということはもうなしにして、何が本人の自分らしい生活や人生に求められているかを中心に、多方面の人がチームを組む方向性で考えてほしい。ポスト・メディカルから予防も含めた取り組みに。
- 精神保健福祉士は何でも屋でかまわないが、何でも屋ほど専門的知識が必要。知識のない何でも屋は最悪。改めて、医療と福祉にまたがる資格は他にはないことを確認すべき。生涯教育をしっかりやってほしい。
- カリキュラム改正案には二つの受けとめ方がある。一つは、社会福祉士との共通部分を超えたところで部分での違いが出すぎているのではないかという意見。他方ではそれでよしとする意見。改めて将来的には見直しが必要であることを確認しておきたい。
- だいぶん以前になったが、中間報告が出る前の検討会でやり取りしたことで一点再確認を。このところ厚労省は「精神保健福祉」という表記と「精神保健医療福祉」という表記を混在して使うが、どのような使い分けがされているのか。「精神保健福祉」としたときには保健のところに医療も含められていると考えてよいか。整理がないままだと多少混乱を感じるので確認したい。
⇒事務局より、明確な区別はないものの、医療の課題等に踏み込んだ場合は「精神保健医療福祉」としているところだが、精神保健福祉というときは、医療も包含すると考えている。
- 精神保健福祉士と社会福祉士の2資格の今後の整理の考え方については、是非改めて検討の場を持つことを確認したい。「相談援助」の概念は狭い捉え方から広い捉え方までさまざまである。この中では相談援助=ソーシャルワークと捉えられていると解釈するが、そうなら社会福祉士はソーシャルワークを担い、精神保健福祉士はメンタルヘルスソーシャルワークという位置付けになるかと考える。
- 2資格のありかたについては、実習・演習部分の一部共通化(読み替え)が半歩前進と受け止めている。どこまでがスペシフィックなのかについては、改めて議論する場を。
「 精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて」
- (P4)の「精神障害者に対する包括的な相談援助を行うための、‥‥。」の精神障害者は精神障害者を含む障害者とすると事前説明で聞いたが、本日の資料は間違えか?
後段との整合性をはかるためには、広げておくべきではないか。
⇒事務局からは、その部分は後段の実習などの考えに関する記載に合わせて修正すべきとしていたが、当該部分は中間報告の記載の抜粋部分のため、元に戻したと回答。
- せめて「等」をつけて広げるべきではないか。(同様意見3名)
⇒座長からは「精神障害者及びこころのケアを必要とする者」と変える提案があった。
- 同じ事項について。P5の「教育カリキュラムの構成」の下から3行目では、「精神障害者をはじめとする障害者等に対する相談援助」となっている。
⇒P4の「今後の精神保健福祉士に必要とされる知識及び技術」は、中間報告のうちからまでが精神保健福祉士の中核的業務に位置づけられるもので、とは職域の拡大と求められる支援の多様化に係る部分。この二つを整理したものであるが、改めて表現等について見直して最終報告とすることが確認された。
「 教員(実習・演習を除く)」
- (P55)「-教員要件の見直し(実習・演習を除く)」のについて、「精神保健福祉相談援助の基盤」を社会福祉士の科目と読み替え可能としていることについては、ソーシャルワークの共通部分として理解し、社会福祉士の養成で該当する120時間を受けた学生が読み替え可能対象となることは、双方の資格を受験しやすくメリットとして理解できるが、教員要件に社会福祉士の実務経験をもって当該科目を教授できるようにするとした手当が必要なのか疑問。それほど教育現場で当該科目の担当者を精神保健福祉士で確保困難なのか疑問である、現状を教えてほしい。
「 実習・演習」
- (P73)実習について。医療機関での実習が90時間以上としているが、当院の精神保健福祉士は90時間で本当に精神障害者の理解が進むのか疑問があると言っている。
- (P73)社会福祉士の「相談援助実習」を履修している学生については、60時間の実習免除とすることに関連して、残り150時間の実習先は、必須の医療機関実習は90時間以上だから、残りの60時間は同じ医療機関でも、地域施設等でも選択可能と理解してよいのか?
⇒(事務局)その通り。
- 大学にも同様の基準を課すこととするとあるが、文科省と省令等の調整が可能ということか?オブザーバーの文科省の方にも答えてほしい。
⇒(事務局)文科省と調整する予定。
(文科省)正直難しい。厚労省からは相談受けて調整しているが、法改正ない中では、大学への要請レベルに止まり、法的拘束力はない。
- (P85)実習指導者の資格要件について。地域施設等における実習指導については、社会福祉士の実習指導者による指導も可能としていることについて。座学の科目は別としても、看護師の実習指導を医師ができないように、普通は異なる資格職種が指導者になることはない。他の専門職が実習指導を担当することが記載されている資料を見て違和感を強く覚えた。何度も読み返しあくまでも政策や社会動向等から地域で障害者の地域生活支援に関してはジェネリックな部分として共通ベースになっていくということの考え方でそう書かれていると理解するとすれば、相互に乗り入れる整合性が図られるべきであり、それぞれの資格の検討が異なる主管で異なるタイミングで為されている中では、これが突然今回出てくることに納得できない。また、実際に地域での実習指導をカバーするだけの精神保健福祉士の数が足りないことを理由としている現状認識(座長発言)に関しては、厚労省の統計調査の結果からは医療機関に6,000名、地域の施設等に従事する精神保健福祉士は2,000名程度おり、カリキュラム改正が3年後とすると、精神保健福祉士による指導で足りるはずであり、数の論理を持ち込まないでいただきたい。また、相互乗り入れの整合性をはかるべく、社会福祉士資格を主幹している福祉基盤課に申し入れてほしい。
⇒(事務局)申し入れはきちんと行いたい。
- 関連すると思うが、実習先指定の考え方は二通りあると思う。所謂箱ものを基準に考えるか、精神保健福祉士が指導することを前提として指導者の存在で実習先を決めるという考え方。後者で検討すべきと考える。
- 実習指導者は、26年度までに所定の講習会を修了することが要件となるが、講習会の参加に係る経費や時間は所属機関の持ち出しになる。看護実習でも同じだが、そのうえで実習を受けても少ない謝金しかない。実習受け入れ機関への何らかの配慮があるべき。
- 今回の実習指導に関する強化の影響を厳しく考えているところほど従来からしっかり取り組んでいるところだった。問題なのは実習受け入れや質に格差が激しいということの是正だが、そのためにも実習指導者研修の受講促進が重要で実習指導者研修を受けるよう協会は働きかけを行っていくが、費用面等も含めその環境整備に厚労省や関係機関が協力いただきたい。
【検討会終了に当たって】
- 最終報告には、当初予定していた精神保健福祉士法の改正が廃案となったものの、今回の検討会の課題として資格法改正のことが残っていることを是非明記してほしい。
以上の議論により本検討会は終了となった。なお、今回構成員から出た意見等の取り扱いについては、座長預かりとして最終報告をとりまとめることとなった。
以上
(文責・木太)
第8回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会・資料
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