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<2008/11/13>

第14回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会が開催されました

 11月13日(木)10時より、厚生労働省 省議室(東京都千代田区)において、標記検討会が開催されました。

 本日の検討会では、「相談体制における行政機関の役割について」の検討、および前回の検討内容を踏まえた「障害者自立支援法の見直し等について(中間まとめ)【前回からの修正】(案)」が事務局より示され、その内容に関する議論が行われました。

1.相談体制における行政機関の役割について

 事務局より検討のための材料が持てるように調査をお願いしたという、平成20年度障害保健福祉推進事業「精神障害者の円滑な地域移行のための地域体制整備に関する調査研究事業」の調査結果に基づき、行政機関における相談体制についての現状および課題と検討の方向について説明がなされ、議論が行われました。

 まず、困難事例に対する支援について、精神保健福祉センターや保健所が多く関わっているとのデータが出ているが、相談する側にとっては、身近なところで相談できることが一番望ましく、迅速かつ有効なのではないかという指摘がなされ、市町村における相談体制の拡充を求める意見が上がりました。

 その上で、市町村と一括りに言っても、政令指定都市であることや保健所の有無によって課題はまちまちであり、市町村機関と都道府県機関がどう連携するか、市町村での相談体制をいかに拡充するか、の2点に重点を置いた議論を行うべきでは、との意見が出されました。

 その前提に基づき、それぞれの関係性を重層的なものとして捉えてはどうかとの指摘がなされ、精神保健福祉センターは直接処遇等よりも事業所の評価等を優先して担うべきなのではないかといった意見や、保健所は市町村をフォローする形で機能することが望まれる、との声が上がりました。

 ただし、これらの方向性の前提として、市町村の相談体制の拡充を現実にすべく必要な財源措置を必ずお願いしたいとの要望が出されました。また、課題や検討の方向性が示されることはよいが、その支援の具体的な進め方をどう考えているか、成功に導くにはどういった作業が必要か、ということを明確に検討していくべき、との指摘がなされました。

 また、行政機関における相談員がしっかり悩みを受け止められず、次につなげられないケースがあるのが現実であり、相談員の質の向上が必須であるとの指摘が、当事者の構成員、家族会の構成員の双方からなされました。

 加えて、精神保健福祉法第47条第5項に示されている市町村の努力義務については、義務規定にする必要があるのではないか、との意見が出されました。

2.障害者自立支援法の見直し等について(今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会「中間まとめ」)

 次に、前回の検討会の議論を受けて事務局が修正を入れた「障害者自立支援法の見直し等について(中間まとめ)(案)【前回からの修正】」に基づき、最終議論が行われました。

 まず、事務局より、障害者自立支援法が3障害に関する法律であり社会保障審議会障害者部会において検討が今も続いていることから本検討会の中間まとめとしての記述の限界や、予算に関する項目を現段階で明記することに限界があることについて説明がなされ、その上でアウトプットのイメージがしやすいものになるように修正を加えたとの説明がなされました。また、障害者自立支援法に関連する精神保健福祉法の内容に関する見解については、今回の文書に盛り込む形とし、関わりのない部分については、今後の議論で詰めていく方向で進めたいとの考えが示されました。

 その上で、項目ごとに個別の修正点について議論がなされました。主な内容については、次のとおりです。

1)基本的な考え方について

 前回の議論を踏まえ追加された住まいの場についての記述に関して、社会的入院者の退院に際しては、入院の要因を作った国の責任において財源措置をするということを明記すべき、との意見が当事者の構成員より出され、事務局より「国および地方公共団体」という記述を追加することが示されました。

2)個別に対応すべき事項

(1)相談支援について

 相談支援体制の充実強化について、権利擁護に関する記述を加えてほしいとの意見が出されました。また、サービス利用計画のモニタリングの記述については、個々の精神障害者の状況に応じた柔軟な期間設定をできることを前提にしてほしいということが指摘され、それに対して、当事者にはサービスを拒否する権利もあることから、「本人の自己決定・自己選択・自己責任に基づいた」という記述を追加してほしいという当事者からの声が上がりました。それに対しては、「自己責任」という言葉が一人歩きしないよう、言葉を慎重に選ぶ必要がある、との指摘がなされました。

 また、自立支援協議会の活性化の項目については、精神障害者に対する相談支援が遅れている実情があることから、部会やワーキンググループの設置等を可能にするような柔軟な記述を求める声が上がりました。また、自治体に様々な会議や委員会が設置され、混乱する状況が出てきていることから、自治体の現状を踏まえて柔軟に設置に取り組めるような仕組みをお願いしたいとの声が上がりました。事務局からは、機能別、障害別など、設置の方法については様々な形が考えられることから、柔軟な体制づくりを検討していきたいとの見解が示されました。

 相談支援の質の向上については、人材の質の向上のみならず、養成が大切であるとの指摘がなされ、「養成」の文言を加えることが確認されました。また、「精神障害者やその家族の視点に立った支援」という記述に関しては、当事者の体験や経験を重視する必要性が指摘され、「体験」「経験」という記述の追加要望がなされました。

 追加で配布された精神疾患の早期発見・早期対応の観点からの相談体制についての項目に関しては、早期発見・早期対応に加えて「予防」の観点を加えること等の議論もなされましたが、今回は障害者自立支援法の見直し等に対する当検討会の見解を示すことが目的であることや、この項目には主に行政機関の役割が示されていることから、タイトルを「相談体制における行政機関の役割について」に変更し、早期発見・早期対応および予防については、今後の議論の中で検討することが確認されました。

 精神保健福祉士の養成の在り方等の見直しについては、「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」での検討結果を疑問視する声とともに、精神科病院等の医療機関での実習の必須化については、宿泊研修を行い入院者がどのような環境に置かれているか身をもって体験することで当事者の気持ちを理解してほしい、との意見が、前回の検討会に引き続き当事者の構成員より出されました。また精神保健福祉士の業務に関する診療報酬などについての意見は、今後の議論で検討されることとなりました。

(2)地域生活を支える福祉サービス等の充実について

 訪問による生活支援の充実等については、生活訓練についての記述に加えて、地域生活支援事業の拡充の文言を加えてほしいという要望や、訪問看護についての記述部分に訪問医療も併記してほしいとの要望が出されました。

 ショートステイ(短期入所)の充実については、即効性、機動性が重要であり、そのような意味を読み取れるような表現を加えてほしい、との意見が上がりました。

 また、家族に対する支援については、「家族にできるだけ負担を課さないという観点から」という記述自体に家族に対する依存感が垣間見えることから、その部分の表現の再考を求める声が上がりました。

3.今後の流れについて

 本日の検討会の議論を受けて、座長に修正作業を一任し、事務局との調整を図ることとなりました。その後、修正後の文章について構成員に確認を取ったうえで、来週を目途に公表し、社会保障審議会障害者部会へ当検討会の見解を提出するというスケジュールになることが事務局より説明されました。

 年内の検討会は、本日で最後となり、次回の検討会は年明けに開催されることとなりました。開催日程については、後日公表されることとなっています。

傍聴記録:事務局 今井悠子

※今回の配布資料については、WAMNET(http://www.wam.go.jp/index.html)で公開され次第、リンクを貼ります。


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