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<2008/11/11>

第13回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会が開催されました

 11月7日(金)13時より、厚生労働省 専用第18会議室(東京都千代田区)において、標記検討会が開催されました。

 本日の検討会では、来年春に予定されている障害者自立支援法の見直しに対する当検討会からの見解として「障害者自立支援法の見直し等について(中間まとめ)(案)」が事務局より示され、その内容に関する議論が行われました。

1.前提として

 まず、今回示された案について、「具体的な内容が記載されておらず、法律をどのように変えることを求めているのかがこの文面からは読み取れない」「このまとめでは、これまで話し合った議論が生かされなくなるのでは」「具体的内容を別紙で添付するなどの必要があるのでは」との指摘が多くの構成員から出されました。それに対して、障害福祉課担当者からは「本検討会の中で構成員の合意が得られる内容については、可能な限り具体的な記述をいただきたい」との発言がなされ、これまでの検討会における議論や今回の検討会での発言を踏まえて、修正を入れたものを事務局側で再度作成し、次回それに基づき再検討することとなりました。

2.内容について

 まず、冒頭の「基本的な考え方」の部分に「障害の特性を十分に鑑みて」という一文を明言化することが必要なのではないかという意見が出ました。また、家族会を代表する構成員からは、「地域生活への移行」という文言に「自立した」という言葉を加えてほしいとの意見が出されました。「地域生活」と一言で言っても、家族と生活している方も多くおり、「地域生活」を送っていることと、「自立した生活」を送っていることとは違うとの指摘がなされました。
次に、「個別の論点」の組み立て方について、当事者の構成員より、最初に掲げる項目としては、相談支援よりも地域生活に不可欠な「住宅施策」が最優先であり、順番が違うとの意見が出されました。加えて、敷金、礼金等の初期費用の負担が大きく、地域生活へのハードルが高いことから、国が経済的負担を担保するような仕組みづくりが必要だとの意見が出されました。
個別の内容に関しては、下記のような検討がなされました。

1)相談支援について

  「地域生活の拡充のための相談支援について」に関しては、ピアサポートや自立支援協議会の在り方について、多くの意見が出されました。
ピアサポートに関しては、職業として成り立っている国もあり、クラブハウス活動なども視野に入れて検討することが必要であるとの意見が出されました。また、当事者の構成員からはピアサポートセンターの設置の明文化やピアサポート体制の整備等を求める意見が上がりました。また、それに関連して、様々な施策決定のプロセスに当事者が参加することの重要性や、当事者の意見を尊重することが大前提であることが併せて指摘されました。
自立支援協議会に関しては、相談支援を通じて出てくる様々なニーズを障害福祉計画に反映していくような仕組みづくりを求める意見や当事者の参加を必須とする必要があるという意見が出されました。

 また、地域生活への移行のみならず、家族と同居している方がどう家族から自立するかという点も大きな課題であることから、更なる自立支援の必要性について、明文化が必要なのではないかとの指摘がなされました。

 「精神保健福祉士の養成のあり方等の見直しについて」に関しては、質の向上を実現するためには、働き続けられる環境の整備や、適切な報酬設定が重要であり、専門職としてキャリアを積んで、成長していける環境整備を併せて行うことが必要であるとの指摘がなされました。

2)地域生活を支える福祉サービス等の充実について

 「住まいの場の確保について」に関しては、グループホーム・ケアホームの整備促進に関して多くの意見が出されました。グループホーム設置の際に自治体によっては周辺住民の了承を前提と考えているところがあるという現状が課題として指摘され、「自治体はグループホーム等の設置に積極的に調整を図り」という文言を入れることなども検討してはどうか、との意見が出されました。また、夜間の安全、安心を確保することに関する表記は必要としながらも、柔軟な人員配置を行えるような制度作りが必要との声が上がりました。また、ケアホーム等に関しては、医療といかに連携をとるかによって再入院を防ぐことができるという側面もあることから、医療的なサポートをどう入れるかが重要であるとの指摘もなされました。

 「生活支援等障害福祉サービス等の充実について」に関しては、訪問型のサービスの充実に関する記述を歓迎する声が上がりつつも、利用者が利用しやすく、事業者が運用しやすい柔軟な制度を望むという意見や、精神障害者の特性を踏まえて、サービスの内容を基準に細かな報酬設定等を行ってほしいという意見、医療との連携を行えるような仕組みづくりを求める意見等が出されました。

 就労支援に関しては、支援業務と収益業務、双方を職員が担うことの負担が大きいという指摘や、収益を上げるためにもまず国として企業が福祉事業者に事業を委託し、税制メリットをつけるようなシステムの明文化をお願いしたいとの意見が出されました。また、就労支援に関しては、精神障害分野は他の障害と比較して遅れている面があり、特性の配慮まで至っていないのが現状であるとの指摘がなされ、適正な支援者の配置をお願いしたいとの意見が出されました。また、社会適応訓練事業については、障害者自立支援法の一部として取り扱うことによって、より効果的な利用が臨めるのではないか、との意見が出されました。

 また、家族に対する支援については、具体的にどのような内容で行っていくかを明記することが必要であるとの意見が出ました。また、家族支援のみならず、当事者の組織化支援等も併せて行うべき、との意見が出されました。また、診療所を代表する構成員からは、家族と同居しており社会参加をしていない精神障害者の割合が統計的に示され、老親に負担がかかっているケースが多く、家族支援は非常に重要であるとの意見が出されました。

3)精神科救急医療の充実・精神保健指定医の確保について

 精神科救急医療の充実については、移送制度についての現状の課題が指摘され、警察との連携体制の再検討が必要なのではないかとの意見が出され、また機会を改め議論することになりました。

4)入院中から退院までの支援等の充実について

 地域移行支援について、制度上位置づけるべき、との記述については、その施策の重要性から、障害者自立支援法のみならず、精神保健福祉法にも関連しての記述であるとの確認がなされました。

3.全体を通して

 全体に関する課題としては、住まいの場の確保について国土交通省との連携が必要なように、今後はこれまで以上に他省庁との協働が必要になってくると考えられるため、壁を取り除くことが必要ではないか、との意見や、医療と福祉がどのように連携体制を整えれば地域生活を確保できるのか、理念を盛り込んだ上で、具体的な施策を示すことが必要だ、との意見が出ました。

 また、当事者の構成員より、専門職も当事者も現状では依存する、依存させることが多いが、当事者のペースで芽が出てくるまで待つという姿勢を持ち続けてほしい、大切なのは、精神障害者がどのような状況に置かれているかを理解することであり、信頼関係である、との発言がなされました。

 次回の検討会では、本日の検討会の議論を受けて、再度「障害者自立支援法の見直し等について(中間まとめ)(案)」についての議論が行われます。第14回検討会は11月13日(木)に予定されています。

傍聴記録:事務局 今井悠子

※今回の配布資料については、WAMNET(http://www.wam.go.jp/index.html)で公開され次第、リンクを貼ります。


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