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<2008/10/30>

第12回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会が開催されました

 10月29日(水)15時より、航空会館 大ホール(東京都港区)において、標記検討会が開催されました。

 本日の検討会では、「これまでの議論の整理と今後の検討の方向性」の中から、「就労支援・社会適応訓練事業について」「精神保健指定医の確保について」の2点のテーマが取り上げられました。また、最後に「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会中間報告書」(以下「中間報告書」という。)の説明がなされ、質疑が行われました。

1)就労支援・社会適応訓練事業について

 論点として挙げられている「就労系の障害福祉サービスと雇用施策等との連携の強化について」「障害者就業・生活支援センターの充実について」「社会適応訓練事業について」の3つの観点から意見が出されました。

○就労系の障害福祉サービスと雇用施策等との連携の強化について

 障害福祉サービスと雇用施策等が分かれている現状がまず指摘され、相互の施策において効果的であった内容を交換するなどして、連携を図ることがよりよい仕組みづくりにつながるのではないか、との意見が出されました。また、そのような流れにおいて、将来的には共に施策に取り組んでいけるような体制づくりを目指すべきである、との声が上がりました。

 また、就労系の障害福祉サービスにおいては、いかに事業収益をあげるかということが大きな課題だが、市場経済にどう踏み込むかという話でもあり、福祉の現場に負荷がかかりすぎることも問題があるとの指摘がなされました。トライアル雇用導入時の動きを参考にする、発注促進税制や随意契約の範囲の拡大等を検討する、等の提案もなされました。

 現在の雇用施策については、雇用率を達成していないことを前提とした制度設計自体の矛盾を問う声が上がるとともに、現在の施策が中小企業にとっては現実的でなく、柔軟な仕組みが求められる、との意見が出されました。

 また、就労継続支援B型の在り方について、A型より圧倒的に数が多いが賃金が低い現状であることが指摘され、現在同額である報酬単価に差をつける等、できる限りA型の設置を促進するような施策が必要なのでは、といった意見が上がりました。それに対し、B型の利用を通じて、A型、移行支援へ、という流れを必要とする利用者も多いことから、その流れを確保することの必要性が指摘されました。また、働く場であるにもかかわらず、自己負担が1割生じている現状については、サービスの利用控えにつながる恐れもあるとし、多くの構成員から再検討を求める意見があがりました。

 また、就労支援を担う人材の育成については、研修を求める声が上がる一方、就労支援事業所においては支援者も労働力の一部であるという現状から、研修に行くことで収益が下がる可能性があるという指摘や、収益を上げるという視点が必要であることから、民間企業の経験者等を講師に呼ぶ等の工夫が必要であるとの意見が出されました。当事者の構成員からは、一般企業の論理を分からない新卒の支援者が就労支援を担っている現状に対する危うさが指摘され、民間企業を活用することが必要では、との意見が挙がりました。

○障害者就業・生活支援センターの充実について

 障害者就業・生活支援センターに関しては、就業支援と生活支援を1か所で行えるメリットについて、構成員より多数の意見が挙がりました。その一方、センターの重要性を鑑みると、定着支援を行うためにも人員配置が少なすぎるとの指摘や、障害保健福祉圏域ごとの設置は最低条件で、人口密度や近隣の地域環境等を考慮にいれて、更なる設置を検討していく必要があるとの意見が挙がりました。また、知的障害者に対する支援を主に行っているセンターも少なからず存在することから、精神障害者の支援がどこまで実際に行えているか、現状を把握する必要があるとの声が上がりました。 

○社会適応訓練事業について

 社会適応訓練事業については、その有効性を訴える声が多く上がりました。具体的には、障害者自立支援法下のサービスと併せて選択肢の一つとして機能しているという声や、この事業を通して関係性が深まることで他制度の活用にもつながるという意見が出され、事業の存続と発展を求める声が多く上がりました。その有効性から、明確な法的位置づけを求める意見が多く、地域生活支援事業の一部に加える、この制度特有の柔軟性を保ちつつ労働施策と同等に扱う、等の案が挙がりました。

 課題としては、訓練期間満了者以外の利用者を含めると就労につながったのは2割であることや事業の利用修了後入院している人がいることから、受入れ事業者の種別、規模等、受け入れの現状を正確に把握し、追跡調査や必要に応じて適切な指導を行う等、課題を共有し効果的な事業利用につなげていく必要があるのでは、との意見が出されました。

 また、一般財源化を機に予算の裏付けがなくなり、事業が縮小傾向にあることをどう考えるのか、との質問が構成員より出されました。それに対して事務局からは、福祉的就労・一般就労、双方の拾いきれない部分をカバーする制度として機能しているという認識を持っており、機能を強化していく方向で検討している、また、どのような支援が都道府県に対して有効であるかも併せて検討していく、との回答がなされました。

 最後に、事業の成果について、数字だけではなく、生活がどう変わったかという視点や普及啓発、社会参加、といった様々な観点から捉えることが必要ではという意見が挙がりました。また、ステップアップ型の就労支援がクローズアップされている現状に対して、能力の低下を伴う利用者等への支援も含めて、全体的な事業の方向性の在り方の見直しをぜひ行ってほしいとの意見が出されました。

2)精神保健指定医の確保について

 精神保健指定医を確保するための施策としては、公務員業務を行っている指定医に研修を免除するなどのインセンティブを与える、精神科救急業務に関わることがステータスになるような制度作りを行う等の案が出されました。また、法律に精神保健指定医の努力義務を明文化することに関しては賛成の声が多数挙がりました。

 また、診療所における精神保健指定医の指定医業務に対する関わり方について、現在どのような状況かという質問が出されました。関係団体の構成員より、大阪市のように診療所を中心とした救急体制を構築しているところもあるが、現実に関わっている医師は多くはないかもしれない、との回答がなされ、加えて、問題の根底は医師不足にあるということが指摘されました。それに対して、診療所の医師を含めた救急体制を構築している欧米の例や、オープンベッドを活用し病院と診療所が連携体制を構築する等の案が出されました。

 最後に、早期介入によって入院患者を減らすという取り組みが行われているニュージーランドの例が示され、医師の確保について検討する必要性とともに、中長期的視点に立って、業務自体を減らすという考えを持つことも重要なのではという意見が出されました。

3)「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会中間報告書」について

 事務局より10月21日に出された中間報告書について説明がなされ、質疑が行われました。

 まず検討会の在り方として、当事者が不在であることが大きな問題であるということが当事者の構成員から指摘されました。

 内容に対する意見として、必要な支援に報酬が出る仕組みや資格保持者の必要な個所への適切な配置を求める意見が上がりました。また、地域移行支援、地域生活支援が一つの流れではなく、現に地域で暮らしている方の生活支援も含んでいるのだということを正確に明記してほしい、という意見も出されました。

 また、人材の質の担保に関しては、職域拡大に伴い、より充実したカリキュラムが求められるという声が出されました。加えて、今回の中間報告書はあくまで概要であり、今後詰めていく中身が重要になってくる為、ぜひ実現をお願いしたいとの声が上がりました。

 一方、当事者の構成員からは社会的入院者の地域移行に関する課題がクリアできていないにもかかわらず、職域拡大の方向性に向かっていることへの苦言が呈され、足元をしっかり固めるために取り組むべき課題がまだまだあるのではないか、という指摘がなされました。また、「連携」については、単なる相談員同士のもたれあいになっていないか、「コンサルテーション」については当事者に意見を求めることなく関係者同士だけで物事を考えてはいないか、ということを問いなおすべきであり、人員不足という声がよく出るが、当事者の活用をもっと考えるべき、との指摘がなされました。また、「社会資源の整備・地域づくり」といった項目に関しては、その地域の当事者の考えや気持ちを確認したうえで行うべきことであり、役割として定義することは専門職による掘り起こしやレール敷きのような危険を伴う、との考えが示されました。

 看護職の職能団体からは、保健師や看護師の教育や質の担保、また地域移行支援が看護職の役割であることも法的に明文化されないと困る、との意見が出され、精神保健福祉士のみ法律に明文化されることに対する影響を懸念する声が上がりました。

 また、資格ができてからの10年を振り返っての意見として、精神保健福祉士が動いたことで見えてきたニーズも多く、職域の拡大も大切だが、精神保健福祉士のみに負わさず、掘り起こされたニーズを満たしていくことにも力を入れてほしいという感想が出されました。

 さまざまな意見に対して、職能団体の立場から大塚常務理事より、全国の実態として精神保健福祉士は必要な個所への配置も未だ少ない現状にあることや、質の担保や養成が追い付いていないという現状があるということ、また地域移行が進んでいないという点については反省すべき事項と認識しているという考えが示されました。しかし、先達の動きが少しずつ認められてきて、新しい領域にも登用してもらえるようになったという現実がある以上、後進への道を閉ざさないためにも、なんとか法的な根拠を認めていただきたいと考えている、との言葉が述べられました。

 次回の検討会では、今回同様、論点整理に基づいた検討を行うこととなっています。第13回検討会は11月7日(金)に予定されています。

傍聴記録:事務局 今井悠子

※今回の配布資料については、WAMNET(http://www.wam.go.jp/index.html)で公開され次第、リンクを貼ります。


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