新着情報

<2008/09/26>

第10回今後の精神保健医療福祉のあり方検討会が開催されました

 9月25日(木)10時より、厚生労働省 専用第18会議室(東京都千代田区)において、標記検討会が開催されました。 本日の検討会から個別論点に関する検討が開始され、先ずは、前回の検討会で示された、「これまでの議論の整理と今後の検討の方向性」の中から、「1) 地域生活への移行・地域生活の支援について」「2) 精神科救急・精神保健指定医について」の2点の議題について議論がなされました。

1) 地域生活への移行・地域生活の支援について

 最初に、事務局よりこれまでの論点整理の内容と社会保障審議会障害者部会の検討経過を踏まえ、「入院中から退院・退所までの支援の充実について」「住まいの場の確保について」「地域生活を支える福祉サービス等の充実について」の3点について、論点、資料、課題、検討内容が示されました。その後、各構成員より意見が出されました。

・入院中から退院・退所までの支援の充実について

 検討内容として挙げられている「地域移行を支えるコーディネート機能」については、多くの構成員からトータルなケアマネジメントがケアマネージャーにより継続して行われる必要性と重要性が指摘されました。報酬についても、ケアマネジメントの人件費を確保できる報酬とすべきとの意見が挙がりました。システムのあり方として、入院後早い時期から退院支援を行うことが重要であり、目標を明確にすることが本人の焦りの緩和にもつながるのではないか、との意見が出されました。それに対し、コーディネート事業も大切だが、その前に社会資源を整えることが第一との意見が出ました。また、現在実施されている精神障害者地域移行支援特別対策事業について、有期限ではなく恒常的に全国で取り組みが可能となるように保障するべきとの意見が数名の構成員から出されました。その中からは、個別給付化の制度設計への検討を求める声も挙がりました。また、退所、退院支援を行うにあたり、生活保護受給者、医療観察法の対象者等、広域での支援が必要な方が多いという現状が指摘され、広域に渡っての調整を担う人材配置も必要なのではないか、との意見が出されました。

 送り出す側の立場からは、退所・退院時における報酬について、評価基準が実態に則していない点があるとの指摘や、入院年数やパーセントを報酬の基準とすることの限界が指摘されました。

 次に、居住サポート事業については、市町村の実施状況が約1割という現状から、事業実施促進への取り組みおよび事業者や市町村へのインセンティブなどを考えていく必要性があるのではないかとの意見が出されました。また、グループホームの入居者が事業を利用できないのは実態に則していない、という指摘がありました。

 また、検討内容に挙げられている「家族との同居からの地域移行」については、同意の意見が多く出され、家族に頼らざるをえない現状を問題視する声や、もっと早い時期に自立できる体制づくりを、という意見、相談機能の充実を求める声が多く挙がりました。

 また、退所、退院するにあたり、住居を借りるための費用面の補助をお願いしたいとの声が挙がりました。当事者の構成員からは、精神障害者の特性に応じた住宅施策をお願いしたいとの意見が出されました。

 また、この議論の前提として、いかに入院を予防するかという視点の重要性も挙げられました。そのためには、アウトリーチ機能やショートステイ施設の確保が重要だが、数が不足している地域も多く、不安定になった場合には入院せざるをえないという結果を生んでいるのではないか、との指摘がなされました。

・住まいの場の確保について

 課題として挙げられている「グループホーム等の整備促進」について、現状の報酬では財政的にかなり厳しいという声が多数挙がりました。特に、設立時の補助は得られても、動き出してから軌道に乗るまでのランニングコストの補助がなく、単体事業での維持は困難であるとの指摘がなされました。報酬の算定基準が現状から乖離したものになっているとの声も挙がりました。また、データからはグループホームが増加傾向にあるように感じられるが、福祉ホームが地域生活支援事業に移行するにあたり、グループホームに切り替えたケースも多く、それぞれの施設の状況を踏まえた上でのデータを把握する必要があるとの意見が出されました。

 「公営住宅のグループホーム・ケアホームとしての活用促進」については、自治体によって取り組みの差が大きいことが指摘され、最も活用の進んでいる大阪府の事例等を参考に事業の促進をはかっていくことの提案がなされました。また、公営住宅の優先入居枠の確保をぜひお願いしたいという意見が挙がりました。

・地域生活を支える福祉サービス等の充実について

 まず、居宅介護事業の課題として、精神障害者に多く必要とされる見守り、寄り添い等に対する報酬単価が低く、ニーズは多いが、受けられる業者が少ないことが指摘されました。それを踏まえ、精神障害者の特性を踏まえた報酬単価の見直しを要望する声が挙がりました。また、事業所数に地域格差があり、必要でもサービスを受けられない地域もあるという課題が挙げられ、体制整備が求められました。

 また、在宅でひきこもりの状態にある方について、アウトリーチ機能が非常に重要であるとの意見が多数の構成員から出され、そのような支援に対して、見合った報酬を認めてほしい、との要望が多く出されました。

 次に短期入所の課題として、障害程度区分認定で非該当の場合は利用できないという制約があり必要な方が利用できない場合があるという意見や、グループホーム等の空床利用のような、緊急時に使いやすいフレキシブルな体制が望まれるとの意見が出されました。

2) 精神科救急・精神保健指定医について

 1)と同様に、事務局より「精神科救急医療体制について」「精神保健指定医の確保について」の2点について、論点、資料、課題、検討内容が示されました。その後、各構成員より意見が出されました。

・精神科救急医療体制について

 精神科救急体制についての課題としては、自治体によって体制の違いがあり、サービスの差が生じていることや報酬単価等の財源の手薄さを指摘する声が多く挙がりました。また、体制のモニタリングについては、質の担保をする意味でも必要だとの支持の声が挙がりました。

 また、身体疾患がベースにあり、加えて精神科の治療も必要としている方については、一般病院と精神科病院がしっかりした連携体制を構築していかないと、適切な医療を提供できない、との指摘があり、一般病院と精神科病院が連携を進めていくためには、それぞれの自治体担当部署の枠を超えた国レベルでの取り組みが必要ではないか、との意見が挙がりました。

 なお、精神科の救急医療圏域が広いところが多いことから、居住地域から離れた病院へ入院するケースが多く、地域移行が困難になるという悪循環が生まれていることが指摘され、広域診療所や総合病院の協力を得て、地域内での連携を密にし、障害者自立支援法の考え方である、「地域で暮らす」ということをベースに置いて救急医療体制を考えることも一案なのではないかとの提案がなされました。また、多くの救急患者はかかりつけ医を持っている実態があると思われるが、実態を明らかにすることで見えてくる課題を検討すべきではないかという意見も出ました。

・精神保健指定医の確保について

 精神保健指定医の確保に関しては、検討事項として挙げられている、精神保健指定医の法的意義に鑑み、指定医の実務を行なわず更新のみしている実態の改善を目指し、5年毎の資格更新時に実務経験を要件とする検討課題に関して、構成員から多くの意見が出されました。実務を伴うことを要件に加えることに賛成する意見と、要件を公務員としての職務に限定すべきではないとする意見、また、措置入院に関する職務を要件とすることについては、措置入院を減らす地域生活支援のための地域医療を目指す政策の方向性に逆行し、措置入院数が増加するようなことがあってはならない、という重要な指摘がなされ、措置診察実務を要件とするのではなく、精神科救急医療への参画を要件とすべきとの指摘がなされました。

 また、精神保健指定医の確保が非常に困難な現状であることが多くの構成員から報告され、精神保健指定医の報酬が職務に見合っていないとする意見や、自治体によって措置入院時の精神保健指定医の関わり方に差があるとする指摘がなされました。また、措置入院の実態について、措置解除者の再措置の実態などを洗い出し、短期間の措置入院の治療内容や、退院後の地域ケアなどを医療と福祉のケアをどう役割整理するのかの検討が必要であるという意見が挙がりました。また、移送制度が開始されてしばらく経つがその実態も明らかにしてほしいという意見が出ました。

 最後に、前段2つの議題の振り返りとして、それぞれの議題を切り離して考えるのではなく、関連した課題として検討していかなければならないとの意見が出ました。入院患者、救急患者を増やさないためにはケアマネジメントや個別ケア、アウトリーチの体制が構築されていることが重要であり、現在の措置入院の再入院率等に地域サービスの在り様が反映されてきているのではないか、との指摘がなされました。

 次回の検討会では、今回同様、論点整理に基づいた検討を行うこととなっています。第11回検討会は10月17日(金)、第12回は10月29日(水)に予定されています。

傍聴記録:事務局 今井悠子

※今回の配布資料については、WAMNET(http://www.wam.go.jp/index.html)で公開され次第、リンクを貼ります。


△トップページへもどる