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<2008/09/04>

「第9回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」開催される〜「これまでの議論の整理と今後の検討の方向性」公表!

 9月3日(木)15時より、厚生労働省 省議室(東京都千代田区)において、標記検討会が開催されました。

 本日の検討会では、「これまでの議論の整理と今後の検討の方向性」「平成21年度障害保健福祉関係概算要求の概要」「障害者自立支援法の見直しに係る審議会の開催状況」「検討会の今後の予定(案)」「精神病床の利用状況調査結果報告(詳細)」の資料が示され、主に下記の3点について議論がなされました。

1) 論点整理の報告について

 これまでの論点整理に関する議論を踏まえて、「これまでの議論の整理と今後の検討の方向性」の資料が示され、変更や追加等について事務局より説明されました。構成員より要望の出ていた社会復帰施設や作業所の統計データ、戦後の精神保健医療福祉の流れにおける記述が追加されました。また、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念が示され、障害者自立支援法に基づく相談支援に加えて、その他の相談機能の充実についての検討の必要性が明記されました。普及啓発については、地域生活への移行を推進することが、普及啓発につながる側面があるということが記述されました。なお、論点整理の段階で様々な意見が出ていた精神病床数に関する取扱いについては、今後の検討の過程において、引き続き議論を進めていくこととなりました。 

 説明に対しては、認知症に関する議論も老健局の担当者との意見交換も含めて行っていくべきという意見や、福祉サービスに関する記述が少ないように見受けられるが、今後十分時間をとって議論をしていきたい、といった意見が出されました。

2) 平成21年度概算要求の報告について

 資料に基づき、事務局より平成21年度障害保健福祉関係概算要求の概要が説明されました。概算要求額が10,238億円とされ、対前年度比5.5%増となっています。地域生活支援事業に関する概算要求額が前年度の400億円から50億円増加し450億円とされていること、自殺対策の項目の中に、新規事業として「地域自殺予防情報センター運営事業」(概算要求額8600万円)が盛り込まれたこと、「医療観察法対象者の地域生活定着支援事業」(概算要求額3.1億円)が新規事業として挙げられていること等が強調されました。

 構成員からは、高齢者の自殺予防に関しては、老健局と検討を進めていくことが必要であるとの見解や、自殺対策としては拠点を作るよりも医療従事者の意識改革、啓発が大切なのでは、という意見が出されました。また、「工賃倍増5か年計画支援事業」に対して、社会資源につながっていない精神障害者が圧倒的に多い中、一点だけに支援を集中させるのは現状に則していないとの指摘がされました。また、医療観察法の医療提供体制の充実・強化の点に関して、通院施設を確保、拡充するための予算も盛り込んでほしい、との要望が出されました。また、本検討会の内容を反映させることについて、概算要求以降の予算交渉のプロセスでタイミングと内容に応じてきちんと反省させて欲しいという意見が出されました。

3)「精神病床の利用状況に関する調査」報告(詳細)について

 平成19年度「精神医療の質的実態把握と最適化に関する総合研究」にて行われた調査結果が示され、事務局より説明がされました。厚生労働科学研究の一つで、精神科病院が調査対象とされ、医師、看護師が回答を行っているものです。これは、論点整理の際の、長期入院患者の実態に関して、実際にどのような居住先や支援を必要としているかを把握することが必要である、との意見を踏まえて再度分析された資料です。

 「入院患者の機能の状態は、入院期間によって異なるか」「退院後必要な支援は、入院期間や年齢によって異なるか」「入院期間や年齢による機能の状態や退院後に必要となる支援を踏まえ、長期入院患者や高齢の入院患者にふさわしい支援の内容やその提供のあり方についてどのように考えるか」、また、近い将来退院の可能性なしとされた患者像について「精神症状や機能の状況はどのようになっているか。またそれは、他の患者と異なっているか」という4点から分析した資料となっています。

 今回は、特に統合失調症患者に関する調査結果の報告がなされました。データを踏まえて、ADLは入院期間による差はさほど見られず年齢に因る変化が大きいということ、IADLは入院が長期になるほど困難が見られる傾向が高いということが説明されました。また、退院後に適切と考えられる居住の場として「家族と同居」または「入院前の自宅等」が多く、入院が長期になるに従い、グループホーム、ケアホーム等が多く挙げられる傾向になっていることが説明されました。また、退院後必要な日中活動として、高齢患者については「生活介護」の割合が高いことが示されました。

 この報告に対して、まず前提として、調査回答者が病院の医師、看護師に限定されていることから、何をもって退院可能とするかの判断基準が、地域で支援する立場とズレがあるのではないかとの指摘がなされました。同様の意見として、病院関係者の退院に関する認識が退院を阻害しているのではないか、病院関係者間でも意識の違いが大きく、社会資源の理解やイメージがバラバラである、との意見がありました。この点に関しては、各構成員より意見が出され、病院関係者は退院後のイメージを持ちにくいことから、地域資源を知ることや、生活の場に出てみることの必要性が指摘されました。また、各医療機関や医療従事者によって基準の持ち方が違うということから現状を変えていくためには、国が方向性もしくはガイドラインを示すべきであるという意見も出されました。

 また、長期入院者にIADLの低下が見られるという点に関して、それが医療の必要がある低下なのか、長期入院の弊害としての低下なのか、元々の要因を分析する必要性があるとの指摘がありました。

 退院後に適切と考えられる居住先として「家族と同居」という項目を医療関係者の多くが選択しているという結果に対し、家族会代表の構成員より、家族だけに頼る体制が続いていては長期入院を防げない、他の資源を充実させ、自立できる体制を整えてほしいとの意見が出されました。この意見に関しては、同意の声が多数挙がりました。

 次回の検討会では、今回の検討会で示された論点整理を元に、1)住まいの場の確保について、2)入院中から退院・退所までの支援の充実について、3)精神科救急・精神保健指定医について、を検討することとなっています。第10回検討会は9月25日(木)に、第11回は10月17日(金)に予定されています。 

 また、今後は障害者自立支援法の見直しについて審議している社会保障審議会障害者部会の議論とリンクするように議論のスケジュールを組み立てることになっているとのことで、第12回以降は日程に変動の可能性もあることとされましたが、当面、11月末までに第16回までの開催予定が発表されました。

傍聴記録:傍聴記録:事務局 今井悠子

※今回の配布資料については、WAMNET(http://www.wam.go.jp/index.html)で公開され次第、リンクを貼ります。


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