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<2009/03/27>

第15回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会が開催されました

 3月26日(木)15時より、全国社会福祉協議会・灘尾ホール(東京都千代田区)において、標記検討会が開催されました。本検討会は昨年11月に「障害者自立支援法の見直し等について(中間まとめ)」を公表し、社会保障審議会障害者部会等へ検討会の見解を提出した後、暫く休会となっていたところですが、今回より再開となりました。

 はじめに事務局より、「障害者自立支援法の見直し等について(中間まとめ)」の内容が障害者自立支援法改正案や今後の診療報酬改訂等に反映されていく方向であることが報告されました。障害者自立支援法改正案については、現在、与党において手続き中であり、詳細については、閣議決定を経た後、次回以降の検討会で報告することが伝えられました。 

 続いて、「今後の進め方について」および「精神科救急医療について」「ケアマネジメント・ACTについて」「危機介入について」の資料が事務局より示され、その内容に関する議論が行われました。

1.今後の進め方について

 事務局より「検討会の今後の予定(案)」の資料が示され、次回以降の本検討会の進め方について説明がなされました。当初3月上旬と見られていた障害者自立支援法案の閣議決定が遅れていることや事務局の人事異動の時期を控えていること等を踏まえ、今後の具体的な日程については再調整を行う旨および現段階でのとりまとめの目標時期は夏ごろであるとの確認がされました。

2.精神科救急医療について

 まず、事務局より資料に基づいて説明がなされ、「精神科救急医療体制の確保」および「一般救急と精神科救急の連携」の2点について主に議論がなされました。

1)精神科救急医療体制の確保

 まず、構成員から、精神科救急を語る際には措置や医療保護という入院形態との兼ね合いもあるが今回の議論対象なのか、また医療観察法によって措置入院の在り方がどう変わったかなども知りたいがデータがあるのかと言った質問が出ました。これに対し事務局から、入院形態等については今後の別テーマの検討時に議論可能であることと、医療観察法に関しては法律施行5年後(H22年)に施行状況の報告と必要に応じた見直し規定があるので、そのときに資料を出すとの回答がありました。

 構成員からは、一般医療との連携を考える前に、なぜ精神科救急医療が別扱いなのか、一般救急医療との一体化は検討できないのか、消防法の中で考えることはできないのか、といった意見が多数上がりました。

 それに対して、事務局からは、できるだけ一体化の方向性でとは考えているが、消防法は「生命の危険」を対象としているという前提があり、また根拠法も異なるため、現実的には難しい状況であるとの回答がなされました。そのうえで、現状を改善するために、いかに制度を整備していくか、という方向で検討していく必要があると考えている、との見解が示されました。

 対して構成員からは、一般救急の利用患者には自殺未遂者が数多く含まれており、精神科救急の利用患者に自殺企図者が多いことからも考えると、まさしく「生命の危険」に関わる問題であり、自殺予防対策は現在対策基本法ができ対策大綱も省庁横断で策定されているなどから、根拠法に捉われず、一体化のための努力をするべきであるとの声があがりました。また、当事者の構成員からも、自殺対策がこれだけ大きな問題になってきている現状の中で、そのような消極的な態度ではいけないのではないか、との声が上がりました。また、警察との関係性や役割の確認の必要性も指摘されました。

 また、身体合併症を有する精神疾患患者が多いことが資料からも読み取れることから、精神科救急医療と一般救急医療との連携を図るうえで、救命救急センターにソーシャルワーク機能を備える必要があるのでは、との指摘もなされました。この意見に対しては、配置される精神保健福祉士等が一般医療のことをどれだけ理解しているのかが重要であるため、しっかりした研修体制等が必要なのではないか、そうではない場合にはむしろ精神保健福祉士配置のデメリットもあるのではないかとの声があがりました。

 ミクロ救急(厚生労働科学研究の中で定義づけられた、病院単位で行われる自発的な時間外・予約外慎重の集合体としての救急システム)については、各病院の経営や診療時間の設定の在り方に左右される部分が大きいため、診療報酬に反映させる等の形で費用の担保がなければ難しいのではないか、という意見が出されました。加えて、小さな地域では、一人の医師が24時間365日体制で見ているなど、ギリギリのところで対応している現状があり、新しいシステムを導入することによって現状を壊さないようにしてほしいとの要望がなされ、一つのパターンを押しつけるのではなく、地域の実情に応じた運用が可能なシステムづくりの必要性が確認されました。また、精神科救急医療体制整備事業とミクロ救急の役割分担を明確にし、診療報酬をバランスよく配分することが必要なのではないか、との声も上がりました。

 加えて、一般医療同様、精神科医療も医師が絶対的に不足しているとの声が多くあがり、この問題が解消されないと、今回の検討内容は絵に描いた餅になりかねない、との意見が出されました。特に近年、診療所の増加に伴って、病院の医師不足は深刻であり、医療圏域内での一定数の医者の確保が必要だとの指摘がなされました。

 また、精神科救急を検討する際は、強制的治療となる措置や医療保護などの通報とも絡むようなハード救急ともう少し緩やかなソフト救急との違いがあるためにややこしくなっており、いずれにしても指定医不足と受け入れ先不足の問題が大きいという指摘がありました。

 また、救急医療体制において診療所の果たす役割を再検討するべき、との意見が出され、個々の診療所の特性を保ちつつ、報酬の差別化等、救急医療体制に参画を促すような仕組みを検討しては、との意見が出されました。それに対して、診療所が増えているという現状はあるが、絶対的な精神科医師不足があることも現実であり、診療所が救急医療を担うことによって、日常外来医療が滞る可能性もあることから、診療所医師の環境改善も不可欠であるとの指摘がなされました。

2)一般救急と精神科救急の連携

 総合病院が精神科救急の役割を果たすのは非常に大きいことであるが、総合病院自体も地域偏在の著しい現状があり、救急医療圏域あたりの人口だけではなく、医療機関のアクセスの問題もあるのではないか、という声が上がりました。また、特に都市部は精神科病院が少ないところも多く、身体合併症対策のみならず、地域偏在という観点からも、総合病院における精神科病床を支援する仕組みづくりの必要があるのではとの指摘がなされました。

 特に、現在の診療報酬体系においては、総合病院の精神科では報酬に反映されない部分も多く、実際に機能している総合病院の評価につながっていない現状があることが指摘され、診療報酬の在り方の検討を求める声があがりました。

3.ケアマネジメント・ACTについて、危機介入について

1)ケアマネジメント

 ケアマネジメントについては、医療との連携を含めた機能、システムの充実および相談支援専門員の正式な位置づけを求める声が多く上がりました。また、「検討の方向」として、訪問看護ステーションを中核とすることがイメージされているが、精神科疾患に対応している訪問看護ステーション自体が少ない現状で、そのような役割を担うことができるのか、また、精神科医療の経験がある看護師の人数を確保できるのか、といった懸念が指摘されました。

 また、保健所が減少している現状の中で、相談支援専門員の果たす役割は大きく、相談支援専門員の質の向上や数の確保を求める声に対しては、職業として成立しない現状では、質の向上を望むことは難しいため、相談支援専門員が実績を積み上げられるように、また市町村からの委託が多くなる想定に対して委託費などの費用を補償する等、正式に位置づけてほしいという意見が上がりました。

2)ACT

 最初に、ACTに携わっている構成員から、危機管理につながっていること、救急で対応するような状況にならないよう、事前の関わりができること等、事業効果についての報告がなされました。また、地域の診療所はACTを通じて、救急医療体制への参画が期待できるのでは、との声も上がりました。

 しかし、 対象者が限られている場合もあり、現に地域にいる重篤な精神障害者が利用できないケースもあることや、統合失調症モデルであるため、発達障害等ニーズはあるのに対象に含まれない方も多いのではないか、との指摘もなされました。また、重篤な精神障害者の地域生活を実践していくにあたり、ショートステイ施設の整備の必要性を強く感じるという声が複数上がりました。

 加えて、日本では実験的に実践されてきた感があるが、コストパフォーマンスは低く、運営維持が厳しく、多職種チームに関する診療報酬等、財源措置を伴う制度でないと難しいという指摘が挙がりました。

3)危機介入

 まず、早期介入、早期治療が有効であること、危機にならないようにすること、危機の際にできるだけ普段と同じ人が対応できることが大切だとの指摘がなされました。そのことを前提に、「検討の方向」に示されている「行政機関が機能を一層発揮する」ということが、保健所の統廃合が進んでいる現状の中で可能なのか、という懸念が示されました。行政機関の役割を明記するためには、保健所等の施策も併せて検討していかないと民間にしわ寄せが行くのではないか、特に危機介入については行政、民間の協力体制の上で、責任をシェアしていくことが必要なのではないか、という指摘がなされました。

 最後に、本日の検討会の進行のあり方について、全てが連動した課題であり、個別各論ではなくセットで考えるべき問題なのではないか、という声が多くの構成員から上がりました。公的機能と民間機能のバランスや役割分担を確認し、公が行うべき部分に対する責任を明確にしたうえで、民間とどのように連携していくかを考えていく必要がある、との意見が出されました。

 また、他業種、他機関との連携の必要性を念頭におきつつ、個々の状況、病状等は個別に違うことを前提に、どんな機関が適当でどんな手段が適切なのかを考えていく必要がある、との指摘がなされました。当事者の構成員からは、安心してかかれる精神科医療、安心して暮らせる環境が現実にあることが重要なのであって、机上の空論ではなく、現場のニーズをしっかりとらえて、それぞれの専門分野でやるべきことをやってほしい、との要望が出されました。

 次回の検討会は日程の再調整後、新年度に開催されます。開催日程については、後日公表されることとなっています。 

傍聴記録:事務局 今井悠子

※今回の配布資料については、WAMNET(http://www.wam.go.jp/index.html)で公開され次第、リンクを貼ります。


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