<2007/02/26>
法務省から、本協会に対し、刑事施設における精神保健福祉士の配置ならびに刑務所PFI事業について、各制度の紹介、人員確保等に関する協力の依頼がありました。そこで、それぞれの事業に関する概要をお知らせします。
まず、法務省矯正局が所管する刑事施設(刑務所、少年刑務所、拘置所)において、国家公務員(非常勤)として精神保健福祉士の配置が始まりました。その理由としては、刑事施設に収容されている人の高齢化が進み、また障害のある人、疾患のある人、生活環境が整わない人などさまざまな事情を抱える人も増えてきている中、施設のスタッフは、ほぼ刑務官のみであることから、ここで専門家たるソーシャルワーカーを配置し、円滑な社会復帰を促進させたいという状況があるためです。
精神障害・知的障害のある人を処遇する施設として、八王子医療刑務所(東京都)、岡崎医療刑務所(愛知県)、大阪医療刑務所(大阪府)、北九州医療刑務所(福岡県)の4施設では、2年前から正式に精神保健福祉士の配置がはじまっており、今後、札幌刑務所(北海道)、宮城刑務所(宮城県)、府中刑務所(東京都)、名古屋刑務所(愛知県)でも人材が求められていきます(刑務施設一覧表)。これまでに、精神保健福祉法第26条(通報)を受けて、措置入院になった出所者の支援を行ってきた精神医療機関PSWもいることでしょう。
とくに課題となっているのは、釈放後の支援です。釈放には仮釈放と満期釈放の2つがあり、仮釈放の場合は刑の満了前でもあり、社会内においては保護観察での枠組みにおいて、保護観察官、保護司等による支援がありますが、満期釈放の場合は、原則としてなんの支援もないまま地域社会にでていくことになります。差別や偏見を受けやすく社会との接点を失い、相談先や居場所すらない人も少なくありません。
また、法務省では、刑務所PFI事業が進んでいます。PFIとは、Private Finance Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)の略で、公共施設が必要な場合に民間資金や経営・技術的能力を活用して整備や運営を行う新しい手法です。
刑務所PFI事業は、構造改革特別区域法で定められるところの構造改革特区制度も活用して実施される事業で、施設の設計・建設のみならず、幅広い業務を民間に委託し、民間のノウハウの活用により効果的かつ効率的な施設運営を可能とするとともに、「官民協働による運営」や「地域との共生」を図り、「国民に理解され,支えられる刑務所」を実現しようとするものです。国と民間企業とソーシャルワーカーの連携により、4地域で社会復帰促進センター整備・運営事業(刑務所PFI事業、ただし2施設は運営のみ)として、最も早くは2007年4月から山口県美祢市で運営が始まります。
ソーシャルワーカーには、所内処遇と出所時の支援調整などの役割について期待されての参画となります。民間事業者が運営業務を遂行するにあたっては、施設ごとに示されている「運営業務要求水準」を満たす必要があり、その中では専門スタッフとして社会福祉士や精神保健福祉士の確保が挙げられています。ソーシャルワーカー、民間事業者そして国が協力し、個々の受刑者に応じた処遇プログラムや出所時の環境調整を充実させることが望まれています。人材募集に関しては、各センター事業の落札事業者により募集がなされる予定です。
今、矯正領域においても、対象となる人たち支援する専門家としてソーシャルワーカーが求められているのです。