要望書・見解等

2003年度


標  題 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」成立にあたっての見解
日  付 2003年8月13日
発 信 者 日本精神保健福祉士協会 会長 高橋 一

 日本精神保健福祉士協会(以下、協会)は、2002年7月13日の第38回総会において標記法案(以下、法案)に関する見解を採択し、法案に対して反対の立場を表明した。

 反対の主な理由は、再犯の恐れを入通院決定の要件とすることにより、無期限の予防拘禁を可能とする危険が高いこと、法案の成立によっても精神科医療が旧来の社会防衛的役割を払拭することにはならないこと、国際的に劣悪な状態にある日本の精神保健福祉の状況を抜本的に改革することが先決であること、であった。

 その後、第155回国会に与党より法案の一部修正案が提出され、対象者の社会復帰を目的とすることが強調されたが、法案そのものの規定が基本的に何ら変わらないことから、協会は先の見解に基づき、同国会衆議院の審議等の場で意見陳述を行い、精神保健福祉士としての立場を明確にしてきた。

 第154回から第156回の3期にわたる審議を経て、本年7月10日に法案は可決成立した。衆参両議院法務委員会での強行採決は、国民の人権に係る重大な法案審議に相応しくない後味の悪いものとなったが、国会という公開の場でこれほど精神障害者施策に関して議論されたことはかつてなく、また厚生労働省を挙げての対策本部を設置しなければならないほどに、その貧困な状況が明らかになったことも事実である。

 法律は成立したが、審議過程で関係諸団体から出された司法や精神科医療に関する疑念や課題については明確な回答や解決策が得られないままの事項が多くあり、協会としては、今後も引き続き諸課題の改善・解決への取組みを求めていかねばならない。

 また、新たに精神保健参与員や社会復帰調整官として精神保健福祉士の関与が規定されているが、我々は精神障害者の人権擁護と社会復帰・社会参加を促進する役割を担う者として、かつて強制医療を基調とした精神衛生法の下で様々な制約を受けながらも、精神障害者とのかかわりを通して彼らの社会的復権に努めてきたように、新しい制度の対象となる人々を社会が受け入れていくための方策を怠ってはならない。

 そのためにも、協会は今後具体的に検討される指定入院医療機関での処遇内容や対象者の地域社会での処遇等について、監視機構や報告義務など考えられる人権擁護システムも検討したうえで、積極的に要望や提言を行なっていく姿勢である。

 同時にこれまで以上に精神障害者への差別と偏見の解消に向けた国民への啓発(情報提供)や正しい知識普及への貢献に努め、病気や障害を理由に誰も排除されることのない真のノーマライゼーション社会の実現のために一層の努力をすることを表明する。
 
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標  題 診療報酬に関する要望について
日  付 2003年7月28日
発翰番号 PSW03−40号
発 信 者 日本精神保健福祉士協会 会長  高橋 一
提 出 先 1)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神保健福祉課長 松本義幸 様
2)厚生労働省 保険局 医療課長 西山正徳 様
3)社団法人日本精神科病院協会 会長 仙波恒雄 様(PSW03-41号)
 平素から当協会の運営活動に対するご理解、ご協力に感謝申しあげます。
 日本精神保健福祉士協会は「精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的な活動をすすめる」ことを組織活動の基本方針とし、精神科医療機関においてもチーム医療を推し進めるとともに、精神障害者の社会参加の促進のために社会福祉専門職としての役割を担ってきました。

 1997年12月の「精神保健福祉士法」制定に至るまでの同法案の国会審議過程において、医療機関に従事する精神保健福祉士と診療報酬との関係が議論され、政府答弁としてその専門的業務の特性から「診療報酬上」での財源保障を公約しています。

 2002年12月の社会保障審議会障害者部会精神障害分会報告では、精神科医療機関の入院者のうち受け入れ条件が整えば退院可能な数を72,000人としました。そして、2003年5月の厚生労働大臣を本部長とした精神保健福祉対策本部の中間報告では、それらの人々に必要な地域資源の整備も含めて具体的な地域生活支援・精神医療改革等の「精神保健福祉の改革に向けた今後の対策の方向」が示されました。

 その中にあって精神科医療機関等に身を置く私たち精神保健福祉士は、入院患者の社会復帰促進の強化と、そのために必要な医療機関内外に渡るチーム医療の形成が極めて重要であると考えています。

 また、2003年6月2日の参議院厚生労働委員会連合審査会において、厚生労働大臣は「PSWが診療報酬制度の中にちゃんと裏打ちされていないこと」を認識された上で、「社会復帰を進めるPSWがどのような立場で働くかを明確にし、諸制度の中にも裏付ける必要がある」と答弁されました。

 以上のことから、次回診療報酬改定にあたって、精神科医療機関における精神保健福祉士の専門的援助業務を国家資格者に相応しく適正に評価されるよう別紙のように強く要望します。

<別紙>
 診療報酬に関する要望事項(PDF/340KB)
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標  題 平成15年度精神障害者社会復帰施設施設整備費不採択の復活に関する要望書
日  付 2003年7月22日
発 信 者 社会福祉法人全国精神障害者社会復帰施設協会 理事長 新保祐元
財団法人全国精神障害者家族会連合会 理事長 小松正泰
NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会 代表 大友 勝
日本精神保健福祉士協会 会長 高橋 一
きょうされん 理事長 立岡 晄
提 出 先 厚生労働大臣 坂口  力 様

 盛夏の候、貴職におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 また、平素、精神障害者に関する施策の充実に格別のご理解とご支援を賜り、厚くお礼申しあげます。

 さて、標記の件ですが、平成13、14年度とも施設整備費については都道府県等から申請のあった分のすべてが採択されていましたが、今年度は161ヶ所(6月27日現在/厚生労働省発表)中、約8割が「不採択」との結果に、驚愕と戸惑いを覚えているところです。これによって、都道府県の約8割が予算執行できない状況に追い込まれ、事業団体としても、これまで積み上げてきた事業展開の見通しが全く立たず、どうしても承服することはできません。

 また、これによって今後の関係団体、機関の施設整備への意欲が低下し、遅れている地域生活支援体制の整備が、さらに後退することを懸念しているところです。

 私どもといたしましては、今回の事態を早急に改善し、このことが来年度予算策定に影響が及ばないことを願い、下記について速やかに実現するよう強く要望いたします。

1.今回不採択となった対象事業のすべてを復活してください。

以上

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標  題 社会復帰施設の拡充を求めるアピール
日  付 2003年7月22日
発 信 者 精神障害者社会復帰施設整備費補助問題を考える7.22緊急集会 参加者一同

 わたしたちは、思わず自らの耳を疑いました。「今年度の社会復帰施設施設整備費は、申請があった分のうち2割台しか認められない」、厚生労働省のこのような発表をどうして信じることができるでしょう。昨年度も一昨年度も、特別の事情がない限り都道府県などから申請のあった分のすべてが採択されてきました。あまりの大幅で突然の政策姿勢の変化に、わたしたちは言いようのない驚愕と戸惑いを覚えました。同時に、もしかしたら来年度以降もこのような状況が続くのでは、社会復帰施設の運営費減額の前ぶれでは、関係者の間にはさまざまな憶測と不安が渦巻いています。

 国は、今年度から新しい障害者基本計画と新障害者プランをスタートさせました。この中で、新たな数値目標の設定や社会的入院問題の解消の必要性など、精神障害者のための社会復帰施策については一歩踏み込んだ方向を打ち出しました。さらには、立法化が成った「心神喪失者医療観察法」の国会審議の過程での、「社会福祉施策については拡充していきたい」旨の繰り返しの答弁は、まだ記憶に新しいところです。こうした矢先の今般の「採択率2割台」の発表であり、どう見ても新たな流れに逆行する動きとしか映りません。

 厚生労働省は、「事件であり、アクシデントだった」と言いました。わたしたち当事者にとってはそんな言い回しで片付けてほしくありません。地域住民の同意や自己資金の確保にどれくらいのエネルギーを費やしたか、公有地の貸与が決まるまでの自治体を含む関係者の苦労がどんなものであったか、一つ一つの申請の背景にはそれこそ血のにじむような苦難と辛苦が詰まっているのです。「どうしてうちが認められなかったの?」、利用者のこのような問いに施設長や職員はどう答えればいいのか、今なお各地で混乱が続いています。

 現在、精神障害者のための6種類の社会復帰施設が1ヵ所でも存在している市区町村は、1割程度でしかないのです。もっともっと増設していかなければならないのがこの時期です。事実上民間の手に委ねられている社会復帰施設の設置であり、もっともっと民間の増設意欲を高めていかなければならないのがこの時期なのです。

わたしたちは強く訴えます。
国は、ただちに不採択分のすべてを復活してください。また国会にあっては、政治の表舞台で今般の不採択問題を徹底的に究明し、改めて社会復帰施策のあるべき姿を論議してください。その国家の人権や文化の水準は精神障害者施策の水準に符合するといわれています。今般の不採択問題は、単に精神障害分野に留まらず、人権問題とも関わって国家的な失策につながりかねません。1人でも多くの市民のみなさんに、そしてマスコミ関係者のみなさんに、不採択分の全面的な復活に向けてご理解とご支援を心から呼びかけるものです。
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標  題 平成15年度精神障害者社会復帰施設施設整備費補助金の復活に関する共同要望
日  付 2003年7月3日
発 信 者 社会福祉法人全国精神障害者社会復帰施設協会 理事長 新保祐元
財団法人全国精神障害者家族会連合会 理事長 小松正泰
NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会 代表 大友 勝
日本精神保健福祉士協会 会長 高橋 一
きょうされん 理事長 立岡 晄
提 出 先 厚生労働大臣 坂口 力 様

 貴職におかれましては、精神障害者の諸施策の充実にご尽力いただき、心から感謝申し上げます。

 さて、昨年末以降厚生労働省においては、(1)社会保障審議会障害者部会精神障害分会報告書「今後の精神保健医療福祉施策について」における、約72,000人の精神病院入院患者の退院・社会復帰促進、(2)重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)における、精神障害者福祉施策の充実、(3)心神喪失者医療観察法案審議過程における、地域社会における処遇の充実等々、精神障害者が健康で当たり前の地域生活が送れるような基本方針が多く示され、私たちも大いに期待をしていたところです。

 しかしながら、6月8日付け以降の新聞報道によると、平成15年度の各自治体から出された精神障害者社会復帰施設の施設整備計画に対し、その約8割が採択からもれたとのことで、強い驚愕と戸惑いを覚えるものであり、関係者の間に不安が広がっております。

 私どもといたしましては、今回の事態が速やかに解決するよう、下記の点について強く要望をいたします。

1.今回不採択となった施設整備費補助金を全て救済(復活採択)してください。

以 上

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標  題 「介護保険及び障害者ケアマネジメントに対する見解」について(ご報告)
日  付 2003年5月6日
発翰番号 PSW03−12号
発 信 者 日本精神保健福祉士協会 会長 門屋 充郎
提 出 先 日本精神保健福祉士協会 会員 各位

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 日頃より、本協会活動にご支援、ご協力を賜り、厚くお礼申しあげます。

 さて、標記につきましては、第38回総会(2002年7月13日開催)において、一会員より、介護保険において実施されているケアマネジメントが、高齢者にとって、特に痴呆の方々にとって充分なサービスが提供されず、ケアマネジメントの展開においても問題が多々あること、加えて障害者ケアマネジメントとして準備されているケアマネジメントも精神障害者にとって充分とは言えず、介護保険の問題と同質の危惧があることから、「本協会として当該制度に係る見解を表明すべき」との提案を受け、その対応を約束しておりました。

 その後、企画部内の「精神障害者ケアマネジメントに関するプロジェクト委員会」において検討し、昨年12月の全国理事会で常任理事会に一任されたことから、本年4月の常任理事会にて最終案を検討し、このたび、別添の「介護保険及び障害者ケアマネジメントに対する見解」(以下「見解」という。)をまとめました。

 昨年度の総会後、迅速に対応すべきところを、年度を越えてしまったことについてお詫びを申しあげますとともに、ここに本協会としての「見解」を表明し、会員各位にお届けいたします。

<別添>
介護保険及び障害者ケアマネジメントに対する見解
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標  題 介護保険及び障害者ケアマネジメントに対する見解
日  付 2003年4月20日
発 信 者 日本精神保健福祉士協会 会長 門屋 充郎

 わが国に精神医療・保健・福祉領域で活動するソーシャルワーカーが初めて登場したのは1948年のことである。1964年には日本精神医学ソーシャルワーカー協会として全国組織が設立され、精神医学ソーシャルワーカー(PSW)の専門職能団体として活動が始められた。以来、資格なき専門職として主に精神医療と精神保健行政の現場において臨床チームの一員として、精神保健施策の推進役として活動してきた。そして1997年12月に私たちが待ち望んだ精神保健福祉士法が成立し、半世紀を経てようやく我が国における精神保健福祉領域のソーシャルワーク専門職が社会に認知された。
 私たちは、長年の現場実践から倫理綱領を掲げ、業務指針を示し、専門職として、(1)個人の尊重と人権の確保、(2)対象者の主体性の尊重、(3)知る権利の保障、(4)自己決定の原則、(5)プライバシーの尊重を基本的視点とし、具体的実践課題として「精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動」を当面の基本方針としてきた。

 現在、社会福祉基礎構造改革の名の下で、戦後50年間を通して疲弊した日本の社会福祉は、根底からの様々な改革が図られている。しかし改革のすべてがよりよい方向へ向かっているわけではない。これまでソーシャルワーク専門職として、私たちが利用者との現場実践の中から大事にしてきたものとは異なるかたちで施策が展開、あるいは展開されようとしていることを危惧している。

【介護保険下のケアマネジメントに関して】

 介護保険制度は、介護の社会化により要介護状態になったときに、所要の保険料負担のもとで在宅介護サービスまたは施設介護サービスにかかわる一定の給付を行う社会保険制度である。日本では、1997年に介護保険法が成立し、2000年度から施行され、その概要は、保険者を市町村等とし、40歳以上を被保険者、そのうち65歳以上を第1号被保険者、40〜64歳の医療保険加入者を第2号被保険者、給付費用の1割を利用者負担とし、要介護認定(訪問調査結果をコンピュータ処理した第1次判定の後、学識経験者で構成される介護認定審査会が第1次判定とかかりつけ医の意見書をもとに行う第2次判定)を受け、要支援と要介護(5段階)と認められた者に在宅サービスと施設サービスが保険給付されるが、その際に要介護者の選択によりケアプランの作成とケアマネジメントを受けることができるという制度となっている。

 施行後2年を経て、市民オンブズマンが立ち上がるなど、日本中の地域高齢社会への対応についての関心が高まったことは確かだが、利用者主体とはとても言い難いというのが介護保険下のケアマネジメントではなかろうか。

 介護保険のケアマネジメントは、障害者に先駆けて高齢者に実施された。しかしこの展開を見ていると、介護保険で決められているフォーマル・ケアサービスを高齢者に当てはめ、利用者が負担を含めて了解することで成り立つサービス提供になっている。また、アセスメントにおいて、介護の要件は『身体的な介護度』によって計られるなど「生活者」としての困窮性やニーズは充分に検討されず認定された要介護度毎に支給限度基準額という枠があることによりサービス選択の幅が狭められ、個別の生活ニーズを満足させ高齢者が安心して暮らすための多様なサービス提供が困難な状況にある。そして、あくまで介護保険の枠内のサービスへの利用調整だけがマネジメントの対象と内容であって、他の制度やインフォーマル・ケアサービスを含む総合的、継続的ケアサービスの提供方法にはなっていない。高齢者には高齢になった精神障害者や痴呆性疾患のような精神保健福祉の対象者も多く無関心ではいられない。そこで私たちは介護保険下のケアマネジメントに関して、以下のような課題があり適正に実施されるべきであると考える。

  • (1) 利用者本人を中心に高齢者の地域生活全体のケア計画が立てられるべきである
  • (2) 痴呆性疾患等精神に障害があり、自己選択や自己決定に適切な支援を必要とする対象者へ配慮した要介護認定を行うべきである。
  • (3) 低所得層にとっては、介護保険サービスを受けることが生活費の圧迫に直結する問題であり、特別の配慮を要する。
  • (4) 支援の中核となるケアマネジャーのソーシャルワーク実践の資質向上を目指すべきである。
  • (5) 介護労働者の地位の安定と資質を向上すべきである。
  • (6) 利用者が居宅介護事業者やケアマネジャーを選定する際の判断基準を明確にするために、事業者自らの情報公開や事業者に対する第三者評価を進めるべきである。
【障害者ケアマネジネントに関して】

 現在、障害者施策は、従来行政処分として処遇を決定するという措置制度が、利用者主体を合言葉に、2003年度から利用者がサービスを選択する支援費制度に替わろうとしている。この支援費制度は介護保険の要介護認定によるサービス給付に当たるもので、障害者ケアマネジメントは、介護保険制度の教訓から支援費制度に規定されるサービスに限定せず生活全般にわたる支援サービスを包括し、地域生活の中で障害者の自己選択や自己決定を支援し満足度の高い地域生活が得られるよう利用者主体を補完する機能として位置づけられており、身近な市町村を責任主体に進められようとしている。障害者ケアマネジメントは、障害者の地域における生活を支援するために利用希望者の意向を踏まえて、福祉・保健・医療・教育・就労などの幅広いサービスを適切に結びつけて調整を図るとともに、総合的かつ継続的なサービス供給を確保し、さらには社会資源の改善及び開発を推進する援助方法である。障害者ケアマネジメントについては、1995年以降、それぞれ障害種別ごとに検討されてきました。そして障害種別毎のケアマネジメントを越え、同じ障害者であるという観点から三障害共通のものとして2003年3月に取りまとめられたものが障害者ケアガイドラインである。

 精神保健福祉士は、日本の精神障害者がその処遇史から、彼らの当然の権利、すなわち生活権を中心とした自らの人生を歩む権利を著しく侵害されてきたと認識している。不幸にして精神の病となり、障害を抱えた人々に対し、精神保健福祉分野のすべての専門職は、その時々の、最良と思われる方法で治療し、援助し、処遇してきたはずである。しかし多多くの専門職が本人にとって「良かれ(パターナリズム)」と考えて実行してきた結果は、多くの社会的入院者を産み出し精神病院の施設化を進行させ、地域における精神保健福祉ケアを担う社会復帰施設やデイケアも医療への中心化を強め、さらに欧米に遅れずに始まった1965年以降の地域精神保健活動も、主治医の訪問指示等のように医学モデルによる介入を基本とした専門職主導の援助方法となり活動の限界を示してきた。これらのパターナリズムに基づく治療や援助が精神障害者の社会的復権を妨げていると私たちは認識している。「社会的復権」それは精神の疾病と障害を抱えながらもその人なりに生きていくことを自らが決めていく権利の回復であり、社会的存在たる人としての生活が地域社会の中に恒常的に保障されることである。これはこれまで剥奪されてきた「市民権の回復」ということでもある。精神障害者の市民権を回復するために、わたしたちは障害者ケアマネジメントに関して、以下のような課題があり適正に実施されるべきであると考える。
  • (1) 障害者ケアマネジメントが適正に実施されるための充分な財源を確保すべきである。
  • (2) 障害者に介護保険によるサービスを提供するときは、利用者主体、包括性、継続性といった障害者ケアマネジメントによる生活支援を併せて活用できるようにする。
  • (3) 精神障害者のサービスを早急に支援費の対象に組み入れる必要がある。
  • (4) 人の地域生活は非常に多岐にわたる場や人によって支えられるものであり、限定的な障害者ケアマネジメントにすべきではない。
  • (5) 地域特性に配慮し、全国一律といった画一的な施策でなくその地域にあった障害者ケアマネジメントを推進すべきである。
  • (6) 障害者ケアマネジメントを含む地域全体の相談支援体制の充実強化を図るべきである。
  • (7) 障害者ケアマネジメント従事者はソーシャルワーク実践を基本として、その資質向上を図るべきである。
  • (8) 障害者が主体的にケアマネジメントを利用するためには、権利擁護制度の充実が不可欠であり、より使いやすい制度に改善すべきである。
  • (9) 障害者ケアマネジメントによる生活支援を実施するにあたっては、障害種別に関わりなく、全市町村の責任において実施する制度をつくるべきである。

以上

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