報告

「養成研修/第11回認定成年後見人養成研修」「課題別研修/第11回成年後見に関する研修」を受講して

 2015年度に養成研修/第11回認定成年後見人養成研修(2016年12月8日(木)〜11日(日))、課題別研修/第11回成年後見に関する研修(12月8日(木)、9日(金))を日本教育会館(東京都文京区)にて開催しました。ここでは参加者からいただいた感想を掲載します。

     
長谷川講師による講義6 演習1の様子 課題別研修:代表者による修了証書授与
     
齋藤講師による講義10 演習3の様子 養成研修・演習発表の様子

・ 養成研修(4日間)/「目から鱗が落ちる」研修でした

法務省大阪保護観察所/経験年数35年 中村 寛子

 成年後見制度の役割は、漠然と知っていましたが、精神保健福祉士が成年後見人になるのであれば、身上監護が中心の役割になるだろうと想像し、ならば、ご本人の意向をじっくり聞いて必要なサービスの利用を代弁者として調整することかと考えていました。ところが、研修初日から、後見と保佐、補助の違いを知り、その権限の違いを目の当たりにしました。ほぼご本人の生活を丸抱えの後見においては、財産管理は生活維持のための重要な責務で、それに伴う事務も非常に煩雑でかつ分量も多いことがわかり、逆に保佐であれば、権限がないだけに、同意権や取消権はご本人の行為の後に続くしかないので、ご本人との関係がむしろ重要になることもわかりました。

 実際の事例についても、ケースバイケースであるものの、非常に悩ましい事態に出くわすことが多いことも知りました。成年後見人になれば、地域の支援者に私がまさに「お墨付きを渡す」ことになる訳です。そこでは、精神保健福祉士としての援助の経験を踏まえて、裁判所から選任された成年後見人として、家庭裁判所に相談しながらとはいえ、方策を選択し決断せねばなりません。その任を全うできるかどうか不安にもなりました。

 私が携わってきた医療観察制度は、本来個人が自由に選択して任意で利用する「医療」を、限られた期間ではあるけれども、国家が強制する制度です。成年後見制度も個人の生活の営みを保護して安定して継続できるように、国家が介入する制度であり、成年後見人はその運用をすることになります。司法ソーシャルワークの中でも、その立ち位置は、他分野の精神保健福祉士に加えて、常に意識していかねばならないものがあると思いました。

 最終日に水島弁護士からイギリスのMCA(Mental Capacity Act)法やオーストラリアの意思決定支援の実践を聞き、なかなかにインパクトを受けました。「何をしたい?」と希望を聞いても、具体的に言えない当事者のことが目に浮かびました。現場では「自己決定の尊重」というものの、当事者が援助を受ける側になった当初から意思決定支援を受けておらず、むしろ自分の意思に反する援助を受けざるを得なかった後に、「さあ、あなたの意思は?」と問われても、なかなか言えないのではないかということにようやく思い当たりました。精神保健福祉士として「意思決定支援」について、もっと考え、工夫をする余地がまだまだありそうだと思いました。

(2017/1/13掲載)


・ 養成研修(後半2日間)/成年後見人を目指して

社会福祉法人 共生の里(福岡県)/経験年数14年 立部恭幸

 以前、私が精神科病院に勤務していた頃、日々の業務を行う中で、自分の業務に裁量がないことに窮屈さを覚えることが多々ありました。今からちょうど5年前、恩師から成年後見人制度の話を聞き、興味を持ったことをきっかけに、日本精神保健福祉士協会に入会し、成年後見人を目指すことにしました。

 この度、東京で開催された第11回認定成年後見人養成研修の後半2日間に参加いたしましたので、その御報告をさせて頂きます。

 研修の1日目は成年後見人の基礎知識、成年後見人の実務、リスクマネジメントについての講義、事例研究がありました。善管注意義務については普段の業務でも障害年金の現況届けを出したり、医療保険の減額認定証の更新手続きを行ったりしますが、成年後見人、個人としてその業務を遂行し、責任を負うことを自覚しないといけないと思います。

 事例研究でのグループワークでは様々な意見が出ましたが、どうしても身上監護に関心がいき財産管理が苦手なことに気が付きました。財産管理をきっちり押さえて苦手意識を持たないように後見人として業務に取り組む必要があると思います。

 研修の最終日は本人の希望に寄り添う自己決定支援チームのあり方、成年後見の実務、事例研究がありました。2014年に障害のある人の権利に関する条約に日本が批准し批准国は成年後見制度を含む代行制度から支援付き意思決定制度への転換が求められていることを知ることができました。被後見人のニーズをどう引き出して、読みとっていくか専門職としての技量を試させられる時代に来ていると考えます。

 成年後見人の業務には裁量はありますが、その責任は非常に重く、常に自問自答が必要と考えます。受任し被後見人の力になれるよう人と人とのつながりを大事にし、そして出会いを楽しみにしながら成長していきたいと考えさせられた研修でした。

(2017/1/23掲載)


・ 課題別研修/向き合う覚悟

鷹岡病院(静岡県)/経験18年 山口 雅弘

 成年後見制度については、以前から自分の中に制度自体のあり方への違和感や抵抗感があり、“何となく”向き合うことなく避けて通ってきました。
しかし、圏域の権利擁護に関する会議に委員として出席する中で、多くの方がこの制度を実際に利用していること、法律家や他の福祉専門職が後見人しての役割を担っていること、後見人としてどうあるべきか専門職として悩みながら責任を負っていること、後見人の成り手が不足していること、専門職の受け手が少なく市民後見人の養成が始まっていること等、さまざまな現状について知ることとなりました。

 こうした現状を聞き、本当にこのまま“知らないふり”“見ないふり”をしていていいのだろうか、という疑問が自分の中で大きくなり、今回受講を決心しました。
 講義を聞いたあと、演習で事例を題材にして、後見人としてどうあるべきなのか話し合いました。講義で語られる自己決定や権利擁護等のキーワードは、まさしく私たち精神保健福祉士が大切にしていること、取り組まなければいけないことばかりでした。権利擁護を法律家の方が熱く語り、精神保健福祉士である私たちが受講生として聞いている、というのはやはりおかしい、自分たちがしっかり考えなければ、という思いが一層強くなりました。

 演習では事例を通して後見人としての支援を考えましたが、精神保健福祉士としての視点で考えてしまい、後見人としの立ち位置と精神保健福祉士としての立ち位置の両方を意識することの難しさを感じました。

 講義や演習の中で印象深い言葉がたくさんありましたが、私が一番印象に残ったのは懇親会で聞いた、先輩精神保健福祉士の言葉でした。その先輩は成年後見の問題に精神保健福祉士だけが取り組んでいない現状を、「他の専門職がフィールドで泥にまみれて戦っているのに精神保健福祉士だけは客席から高みの見物をして、いいとか悪いとか言っている」「決してフィールドに降りようとしない」と表現されていました。今までの自分がまさしくそれであり、そこからフィールドに降りて泥にまみれること、良いとか悪いとかは泥にまみれてから自分の目と耳で聞く中で考えることが必要だと、改めて感じました。

 今回受講して、今後この課題に取り組み、真剣に向き合っていく覚悟が自分の中で固まりました。来年度は養成研修を受講して、クローバーへの登録を目指したいと思います。
こうした機会を与えて頂いた運営委員の皆様、講師の皆様、一緒に語り合った参加者の皆様に心より感謝します。

(2017/1/13掲載)


※ご報告いただいた方のご所属名と経験年数は、研修受講時の情報で掲載しています。


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