報告

第1回認定成年後見人養成研修(2008年度)を受講して

2008年12月4日(木)から7日(日)まで、サンシャインシティ・文化会館(東京都豊島区)にて、「第1回認定成年後見人養成研修(養成研修、課題別研修、追加研修)」を開催しました。ここでは、各研修修了者の中からお一人ずつお寄せいただいた報告記事を掲載します。

       
開講式でのセンター長挨拶 課題別・養成研修の会場の様子 演習の様子

・ 課題別研修/成年後見制度活用に必要な精神保健福祉士の専門性について

文教町クリニック/静岡県 福貴 郷

 私は精神科診療所でソーシャルワーカーとして勤務している中で、実際に成年後見人を受任している司法書士と一緒にクライエントを支援することがあります。その関わりの中で「医療や福祉のこと、精神障害の事が自分たちには良くわからないので教えてほしい」とありがたい一言を言われたことがありました。今回この研修を通して、この制度を活用する際に精神保健福祉士としてどのような専門性を担うことが期待されているのかを学びたいと思い参加しました。

 講義内容は、成年後見制度の法的概要、現況について、権利擁護について、成年後見人としての倫理について、事例検討が中心でした。ソーシャルワーカーだけでなく弁護士の講義もあり、特に『法律に関する基礎知識』の講義では難解な法律用語分かりやすく解説していただき、実際に自分の困った・困っているケースとつながり、法律の視点からケースを考えることができたと思います。

 また精神保健福祉士が成年後見人となる際、その業務の基となるのは、精神保健福祉士の倫理綱領であることを「ソーシャルワークと権利擁護」「成年後見人としての倫理」「事例研究」で再確認しました。

 2日間の研修で、他職種成年後見人との協働の中で、クライエントの権利を守る・主張するという精神保健福祉士の専門性を成年後見制度で発揮していることが実感でき、内容の濃い講義を消化していくことは大変でしたが、明日からの業務に向き合うために背中を押してもらえるような気がした充実した2日間でした。


・ 養成研修/私が成年後見人!?

医療法人佑心會 堀江病院/愛媛県 大空 真理

 今までの私にとって「成年後見制度」は社会資源の一つであり、自分が「成年後見人」となることへのイメージがつかないまま研修を迎えてしまいました。むしろ、今後、「成年後見制度」について質問された時に的確に説明できるようになれたら良いと思っていました。 

 講義は普段敬遠しがちな民法など法律的なものが中心でしたが、具体例を踏まえての内容でしたのでとても分かり易かったです。また、実際に成年後見人を受任されている弁護士の先生、PSWの方の講義を受けたり、グループワークをしたりしていく中で、自分が受任することがより現実的になりました。「身上監護の範囲はどこまで?」「財産管理って大変」「医療保護入院の保護者になる可能性もあるし、利益相反になるケースって多いかも?」というような不安も生まれました。反面、「PSWだったら被成年後見人の残存能力を生かしながら、成年後見人として関われるかもしれない」「被後見人の病状の変化に柔軟に対応した成年後見人としての援助ができるかもしれない」とPSWの成年後見人に強い期待を持つようになりました。

 4日間という長い研修の中、受任に対して必要性を感じてはいるものの消極的になる場面が多く見られました。今後、精神疾患のある方の成年後見人として、専門的な知識・経験を持ったPSWが受任するという需要はあると思います。その需要に答えるためにも、いずれは私も成年後見人を受任させていただくことになるかもしれません。実際のところ、一人で考えようとすると不安が大きく、受任をさせていただく自信はありません。それだけ責任の重い職務であることは、講義中何度も痛感しました。成年後見人の業務は365日24時間です。職場や家族の理解・協力が必要になると思います。また、法律の知識も求められると思うので勉強もしなければなりません。このような不安を持った受講生も多いと思います。このような不安が少しでも解消できるように、受講生同士がお互いに情報を交換したり、不安を共有できるような仲間作りが身近にできたりするようなシステムがあれば心強いと思います。また、成年後見人として成長していくためにも、他の専門家(弁護士、司法書士等)と合同での研修会が開催されればと思います。

 研修が終わり数日経過した今でも「受任」に対して私の気持ちは揺れています。受講後もこれほどインパクトがある研修は初めてでした。一緒に受講した皆さんは今頃どう思われていますか?


・ 追加研修/新たな成年後見人の担い手として

東京都 石坂 龍史

 私の場合は広範性発達障碍(自閉症)を中心に、養護学校や、通常の学級に在籍をしている障碍児のための特別支援教育の現場で働いてきました。そのため、これまで仕事をする上では統合失調などの発達障碍以外の精神障碍の方の成年後見についてはあまり深く考える機会がありませんでした。

 しかし、知的障碍児を含む発達障碍児の指導や支援をしていく上でも、子どもたちが学校を卒業した後、あるいは、親亡き後の、生涯支援のあり方をどうするのかということについて、長年、気になるところではありました。そうしていたときに、ちょうど、日本精神保健福祉士協会の成年後見人養成研修があるということを知りました。

 就労をした後、一人暮らしをはじめたとき、親が亡くなった後、本人が老いたとき、さまざまなライフイベントが彼らに訪れます。そうしたときに、後見人として関わってくれる人がいるか、いないか、あるいは誰が後見人になってくれるのかということで、状況は大きく異なることでしょう。

 こうしたことについて考えていく上で、成年後見制度について知っておきたい。今すぐに関われるのかどうかは分からないけれど、これから自分が働く上で、担える仕事のひとつとして扱えるようになりたいという思いから、昨年のモデル研修と今回の追加研修の受講をすることにしました。

 さまざまな職種の講師の方々の話を聞くにつれ、この仕事の難しさや、現実の厳しさも感じ、自分に務まることなのかということについて不安な気持ちも起こりましたが、同時に任意後見制度の大切さや精神保健福祉士が担うことの意義を感じる研修でした。

 特に最後の事例研究では成年後見人の本来業務と、身上監護の話になり、法律に基づく財産管理などを得意とする弁護士が成年後見人になる場合と、生活支援など身上監護に目が行き届く精神保健福祉士が成年後見人になる場合との得意業務と不得意業務の違いについて知ることができました。また、精神保健福祉のコーディネーター役である病院勤務の精神保健福祉士と、ケアプランの作成や専門家の会議などではケアの専門家視点からは一歩引いた本人に近い立場から関わるなどアドボケイターとしての役割が期待される成年後見人である精神保健福祉士との役割分担について考えさせられました。

 これまでの担い手とは一味違う、新しい視点や専門性を持つ後見人として、精神保健福祉士が入ることで、被成年後見人の方に、成年後見人を選ぶ上での新たな選択肢を提供できるようになるでしょう。そうした中で、自分もその一翼を担えるようになれればと思えた研修でした。


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