報告

第14回基幹研修23&第7回、第8回更新研修

「第14回基幹研修(23)」と「第7回更新研修」をTKP神田ビジネスセンター(東京都)にて、「第8回更新研修」を石川県地場産業振興センター(石川県)にて開催しました(開催案内)。日程は、基幹研修2が2012年5月12日(土)、基幹研修3および更新研修が2012年5月12日(土)、13日(日)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。


<第7回更新研修/東京会場>
演習の様子1 演習の様子2

・ さまざまな出会いに恵まれた2日間

医療法人社団翠会 こころのクリニックなります/経験年数8年 池須 瑞紀

 今回の更新研修は、職場の先輩に、「更新研修の申し込みはしたの?」と指摘され、締め切りの翌日に慌てて申し込み、研修制度をきちんと理解をしていなかったので、言われるがまま、申し込んだところもありました。しかし、タイミングとしては、職場の環境が変わり、日々の業務に精一杯で実践を振り返る余裕がなかったので、一度立ち止まるとても良い機会になりました。
 研修中はいろいろな方の実践の話を聞く機会に恵まれ、多くの「こんなPSWになりたい」と思う方たちに出会い、柏木先生からいただいた「Cool head and warm heart」など大切にしたい言葉もいただき、月並みな言葉ではありますが、明日からまたがんばる元気をもらった2日間でした。

 今回は、東京の会場であることもあり、学生の頃に実習でお世話になった先輩方や他の研修でお世話になった先輩方との再会も多く、講師として話をしてくださった方々ももちろんですが、実践の話などを聞いていると、まだまだ自分はひよこであることを実感しながらも、悩みながらも仕事を続け、その先輩方といっしょに研修を受けることができる自分を誇りに感じているところもどこかにあったように思います。

 講義の内容は、どれも難しい話ではなく、それぞれの講師の方の実践に基づいた生の声で、PSWとして基盤となる大切な概念や視点がテーマだったので、自分の日々の実践の中で、迷ったり悩んだりしたままになっていることなどが、次から次へと思い出される自分の実践を振り返る時間になりました。そういう話を講義形式で聞き考えることは学生だった頃から大分時間がたち、なか なか機会もないので、新鮮でもありました。
演習では、所属も経験年数も異なり、はじめて会う方達なのですが、共通する言語・感覚をもって、話ができることが、PSWの研修ならではの良さであると感じました。研修最後の各グループからの発表では、それぞれのグループで話しあわれたことを短時間で共有するものでしたが、共通するテーマがあったり、今回の事例検討では提出しませんでしたが、今自分も悩んでいるテーマが他のグループであげられたりしていました。同じようなことに悩みながらもがんばっていることがわかったことが、うれしくも心強く感じられ、研修の最後の最後まで、得るものがある時間となりました。

 最後になりましたが、今回、研修のお手伝いを少しだけさせていただいて、今まで知らなかった研修委員の方たちの事前準備の綿密さと当日運営の手際よさを間近で感じ、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。


<第8回更新研修/石川会場>
荒田講師による講義1 岩尾講師による講義2・会場の様子 演習の様子 代表者による修了証書授与

・ 自己覚知のいい機会

医王ケ丘病院(石川県)/棚瀬 好康

 北陸金沢で更新研修が開催されることになり受講しました。申し込んでみると、事例の提出が必要とのこと。以前はケースに時間をかけて関わることができていましたが、最近は中間管理職ということもあり、事例として出せるものはあまりないなーと感じました。後輩ワーカーが当事者とじっくり関わることができるように配慮していると、自分が関わる時間が少なくなってきます。しかし、それが仕事なので仕方ないのですが・・・。ただ、職場は多職種チームでの地域生活支援活動には力を入れているので、チーム活動の運営面での事例を提出しました。しかし、個別援助での事例と活動の運営面での事例では表面化している問題が違い、作成に当たり不全感が残りました。

 研修1日目「精神保健福祉士の専門性3」では、荒田寛氏から新自由主義の経済至上主義により日本の福祉は後退しているとの問いかけから始まり、特に我が国のPSWの開拓者の言葉と共に、PSWの専門性について凝縮した内容でした。「精神保健福祉制度・政策論2」では、岩尾貢氏から障害保健福祉施策、権利擁護、認知症高齢者施策と共に「現行制度にない各地の当事者のニーズから出発する先駆的な実践(研究事業など)から新たな制度が作られる」「そこにはPSWの実践力が問われる」との旨のメッセージが込められていて、障害者自立支援法の時代のPSW実践の在り方を問い直すものでした。

 研修2日目「精神保健福祉士の実践論3」では、沢田与志一氏の富山県魚津市での地域生活支援・地域づくりの実践過程の紹介がありました。紹介された実践そのものが、「ニーズから始まり」「ソーシャルな視点で」「ネットワークを生かした」実践になっていた点は素晴らしいと思いました。演習、事例検討においては、やはり、参加者の経験年数からくる職場での業務とPSWの視点との葛藤についても問題意識を持っている方が多いことを感じました。

 今回2日間参加して、更新研修ともなると経験のある参加者が多く、職域も病院、地域、行政など多様でした。新しい職域でのPSWの立ち位置や、経験年数を重ねるにつれ携わることが多くなる管理業務や運営業務など新たな課題が出てきます。5年に一度、立ち止まってPSWの専門性に照らして自分を振り返り、PSWの原点を確認するいい機会になりました。また、経験を積むにつれて増えてくる職場での管理・運営業務や新たな職域で業務を行うPSWが、当事者と職場と制度の中で抱える葛藤に焦点を当てた内容の研修も今後追加されるといいと思いました。
 この度は、自己覚知のためのとてもいい機会を提供して頂き、講師及び参加者の皆様に深く感謝いたします。


<第14回基幹研修3/東京会場>
柏木講師による講義1 齊藤講師による講義2・会場の様子 洗講師による講義3 演習の様子

・ 考え続ける糧となる時間

ティーペック株式会社(弊社勤続3年/PSW経験年数7年) 大網 達也

 私は現在、電話による健康相談を主な業務としている企業のメンタルヘルス相談部門にて、PSWとして、広義でのEAPに携わっています。在籍している他の専門職を見れば、病院と同じような構成ですが、業務内容はもちろん全く違います。もともと作業所や病院で、当事者と継続的に関わり、働いていた身としては、だいぶ世界が異なるわけです。まず、何よりも、当事者と直接会うことがありません。継続的な関わりもほぼ皆無。

 散々悩んだ結果、自分で決めたこの道ですが、自分のPSWとしての専門性をどのように活かすのか?そもそもPSWの専門性って一体何だ?PSWのアイデンティティと言われているものは何なのか?この職場での自分はサラリーマンではあるが、果してPSWと名乗っていいものなのか?などなど、考えれば考える程、PSWとしての自分を見失っていくような環境に思えます。

 そんな時にPSWの認定制度について知り、日頃の悩みが解決するのではないかという浅はかな思いで、急いで協会に入り、基幹研修1を受講しました。受講者の中で企業に所属しているのは自分だけでした。周りの方々の会話や、講義内容をとても懐かしく感じ、同時に「生活者主体」「権利擁護」などの感覚が自分の中で薄まってしまっていることに気が付き、いかに自分が現場から離れてしまったのかを再確認させられました。PSWを名乗っている自分が恥ずかしかったし、居心地が悪かったことをよく覚えています。ただし、この時の、その気付きによって、基幹研修を受け続ける必要性を感じ、より一層、今の職場での専門性やアイデンティティというものを意識するきっかけとなりました。

 そして今年も5月12日、13日に開催された基幹研修3に参加しました。グループに分かれての演習と事例検討の時間が非常に有意義でした。病院以外に勤務している方々が多く、さまざまな職場に所属している同志達と話し合い、考えさせられたことは、自分にとって大きな意味があります。そこで導き出された専門性についての一つの答えは「関わり」でした。私たちは、人と、社会と、制度と、「関わること」を専門としている人間です。それはどこに所属していても変わらない考えであり、しっくりきました。

 研修が終わり、「この答えを土台にして、相変わらず考え続けることになりそうだ。考え続けることもPSWの専門性かな?」と、前向きに、でもやれやれと思っていたところに、事務局の方からこの原稿を依頼されました。これも「関わり」の一つなのでしょうか。さすがに断る訳にはいかなさそうです。


<第14回基幹研修2/東京会場>
齊藤講師による講義2 鈴木講師による講義3 演習の様子 代表者による修了証書授与

・ 基幹研修2を受講しての気づき・つながることの楽しさ

福島県精神保健福祉協会 ふくしま心のケアセンター(福島県)/経験年数6年 岩ア香織

 2012年5月12日に開催された第14回基幹研修2を受講しました。一日を通してとても興味深い内容であり、日々の業務をあらためて振り返る機会となりました。専門性、価値、福祉政策、今後期待される役割などさまざまな観点から精神保健福祉士について考える一日でした。

講義1「精神保健福祉士の専門性2」から
 私たちはどの様ないきさつからクライエントに出会うのか、そしてクライエントと関係性を構築するうえで何を根拠とするのか、鈴木先生の実践をもとにお話しいただきました。精神保健福祉士の援助関係に必要な道具は「私」である、だからこそ道具である「私」を知ることが不可欠であるという言葉はとても印象的でした。自分自身の特徴を理解して正しい使い方でクライエントに提供すること、それは非常に難しい課題ですが日々考えてゆきたい内容でした。

講義2「精神保健福祉制度・政策論1」から
 地域自立支援協議会に携わる齋藤先生の講義から、精神保健福祉士として制度・政策の創設や調整に期待される役割が大きいことを学びました。日常の業務において自分の業務に関連する制度や政策には注意を払っていますが、社会変革を目指すはたらきかけというソーシャルな視点はまだまだ薄いことにも気づくことができました。ソーシャルワーカーとして視野を社会へ向けることの必要性を感じました。

講義3「精神保健福祉士の実践論2」から
 日々の実践の根拠はどこにあるのかを中心テーマとして、精神保健福祉士としての価値とは、周囲からの期待とは、自分らしさとは何かというせめぎ合いの中でゆらぐ心について、わかりやすく説明していただきました。自分の経験に重ねて共感する部分が多く、併せて精神保健福祉士の実践には職業的責任がともなうという厳しさも理解することができました。

演習2「精神保健福祉士の専門性とは?」から
 演習は「楽しかった」のひと言です。所属機関や経験年数を超えて精神保健福祉士の専門性について、たくさんの考えを共有できる時間でした。短い時間でしたが、素晴らしい先輩や仲間とのつながりを感じました。一人ひとりの意見を大切にしながら、考えを深めることができました。

 今回の研修は私にとってとても実り多いものでした。内容によっては難しく感じるものや今後の課題となるものもたくさんありましたが、同時に明日からのエネルギーになり得るでもありました。ありがとうございました。


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