2009年2月7日(土)、8日(日)、東日本(株式会社エッサム)と西日本(神戸女子大学 教育センター)の2会場に分かれて、「第1回基幹研修・」を開催しました。ここでは、各会場の基幹研修・の修了者4人からの報告記事を掲載します。
基幹研修 | |||
東日本:講義3を担当する斉藤講師 | 東日本:修了者集合写真 | 西日本:講義1を担当する柏木講師 | 西日本:講義を聞きる受講者の皆さん |
基幹研修 | |||
東日本:開講式 | 東日本:演習の様子 | 西日本:講義3を担当する宮本講師 | 西日本:各班、演習内容を発表した全体会 |
<基幹研修>
医療法人和泉会 いずみ病院(沖縄県) 吉永 優香
今回、東京で行われる基幹研修の応募期間が延長されたと知り、ぎりぎりで参加させていただきました。きっと、たくさんの人が集まっているだろうと思い会場に足を運ぶと、集まったのは8人。驚きの中、机をロの字に並べグループワークのような雰囲気でスタートしました。
一日目は、精神保健福祉士の専門性を白石直己先生より、精神保健福祉制度・政策を木太直人先生より講義していただきました。
白石先生から、「なぜ私たちは自己覚知が必要となるのでしょう?」との問いかけがあり、研修メンバーより「自分の限界を知るため」、「自分の価値観を知らないと偏った支援になるから」などの意見が出ました。自己覚知の必要性とは、自分の価値観や考え方の癖を知っておかないと支援する際に偏りが生じてしまうとのことでした。業務の振り返りを行うことは多くても、私自身の自己覚知を行う機会は少なかったと思います。これを機に、自分とは何かを改めて考え、クライエントと共に成長していけるような人間になっていきたいと思いました。
木太先生から、今ある政策や制度がすべて活用しやすいものではないということ。政策や制度には、さまざまな人が関わり作られてきた歴史があるので変えていくとは容易ではない。しかし、本当に正しいのかと「疑いの目を持ち、変えていくエネルギーを持って欲しい」との言葉が印象的に残っています。一人では難しいので、おかしいと思う仲間を作り大きな集団となれば変える可能性があるとの講義でした。実際、職場の中でおかしいと思うことがあっても、変えることは容易ではありません。自分の立ち位置をわきまえた上で、今後どうしていくべきかを考える必要性があると感じました。
2日目は、精神保健福祉士の実践論を斉藤晋冶先生より講義をしていただき、その後斉藤先生を含めこれまでの経験を通しての演習を行いました。
斉藤先生より、「PSWの多くは組織の中で働いていることが多いですが、クライエントを支援するときに組織の中だけで支援していませんか。また、経験が長くなればおかしいと思う感覚が薄れてきていませんか?」との問いかけは心が痛かったです。精神保健福祉士として勤務した当初は、なぜその支援が必要なのかよく分らないまま援助していたことがあります。今、考えると組織の中だけにクライエントを当てはめた援助を行っていたのではないかと反省しています。勤務して、3年ほど経過したあたりから、地域や周囲のサービス等も視野に入るようになり、意識しての支援ができるようになってきたと感じています。組織だけで考えるのではなく、地域単位でクライエントを支援できるように、精神保健福祉士としての質の向上に勤めていきたいと思います。
この2日間は、業務の振り返りと支援のあり方を考える良い研修となりました。ありがとうございます。
岐阜南病院(岐阜県) 野島 美里
2009年2月7日と8日に第1回基幹研修が行われました。講義はテキストを基本とし、どれも先生自身の思い、体験談が織り込まれ、隣の席の受講者と2人1組で取り組む時間があったり、盛り沢山の内容でした。特に印象に残っているのが、柏木一恵先生は「1分でも傾聴、1回でも面接」、中川浩二先生は政策・制度を知り、学び、活用することで支援に結びつく事、西銘隆先生は失敗から学び、次の支援に活かす(失敗を振り返り、そのままにしない)ことでした。
演習では、専門性に裏打ちされた実践、ソーシャルな視点での実践というテーマでグループワークをしました。講義1〜3で学んだことを基に精神障害を持つ方のみならず、支援を必要とする方の最善の利益、自己決定や権利擁護、私たち精神保健福祉士の価値、所属機関における自分の立場、本人や家族との面接や関係機関との関わりでどこまでが個人情報や秘密保持になるか迷う時等、活発な意見が出ました。
受講者は全国各地から集まっていましたが、私と同様の体験で悩んでいる場合や同様の場面に遭遇しても違う支援方法を実践された様子、私が過去に経験した事の無い事例や職場の様子等、色々な話が聴けて、改めて精神保健福祉士の知識、技術、価値や職域の広さを感じました。だから、目の前の業務はもちろんですが、幅広い分野、新しい知識を取り入れていく柔軟性が求められていると思います。
研修に参加して、精神保健福祉士は軽いフットワークでさまざまなネットワークを活用し、ケースワークやグループワークも取り入れてソーシャルワークをしていると考えると、とても面白い仕事であり、精神保健福祉士としてできることの限界を感じることもあるけれど、逆に開拓し、いろいろな可能性を見出せる仕事でもあると感じました。私は何かあるとすぐに悩んでしまいますが、講義の中であんなにベテランの柏木先生でも非力だと感じたり、西銘先生でも対応に困ってしまうことがあるという話を聴き、模索しているのは自分だけではないのだと知りました。
運営スタッフもユーモアのある方達ばかりで、初めてお会いしたのに仲間だと言って下さったり、基幹研修が成功するように企画のことばかりでなく、先生自身も体調管理に留意されていたお話を聴いて、皆で作り上げ、研鑽していく姿勢を見て生涯研修制度の大切さを学びました。これからは、もっと広い視野で気づき、学び、実践し、振り返り、更に活用できる支援をめざしていきたいです。
<基幹研修>
静岡市保健所(静岡県) 花村 智紀
精神保健福祉の現場でまもなく5年が経とうとしておりますが、PSWとして未熟な私は改めてまだまだやるべきことがあると感じた研修でありました。今回の機関研修の中で印象に残ったことを記します。
講義1で柏木先生より『真心をもって接しているか。』というお言葉がありました。研修を終え、現場で働いている最中この言葉が頭に過ぎるようになりました。研修を受ける前、私がクライエントに対して『真心をもって接しているか。』と尋ねられれば、恥ずかしながら自信をもって「はい。」ということができなかったと思います。『誰のための支援を行うか。』といえば、当然クライエントのために支援を行うことになります。しかし、それには、利用者理解が不可欠であり、そこには『真心』がなくてはならないということを改めて実感しました。
また、『具体的な生活の場面で、どのようなことが権利にあたり、どのようなことが権利の保障にあたるのか、私たちのセンスを向上させることが求められる(生涯研修制度共通テキストp61)』とありますが、私には、このような専門職としての援助の『センス』が全く足りていないと気づかされました。『クライエントがどのようなことを求めているのか』というニーズを見極める力・『センス』を養うために、利用者理解のための傾聴・受容・共感という基本姿勢から振り替えらなければと感じました。
研修2日目では、“ソーシャルな視点を意識した実践”という討議テーマで事例検討を行いました。私たちのグループでは、クライエントやクライエントを取り巻く機関との『関係作り』『連携』をポイントに話合いました。PSWはクライエントが地域社会で生活することができるように支援することは必要です。しかし、(特に長期入院していた)クライエントが地域社会へ出ることは、大変な焦り・不安があると考えられます。討議の中で、実際に長期入院されていたクライエントが退院と決まった時、胃潰瘍になったという事例が紹介されました。ここでも、クライエントの気持ちをしっかりと理解してくことが必要だと再確認しました。『利用者理解』この基本的で見失いがちなことを疎かにしてはいけないと痛感しました。
現在の業務の中で、少しでも時間を見つけ頭と心の中で絶えず基本的な姿勢を見つめ直していきます。
伊丹市健康福祉部健康生活室障害福祉課(兵庫県) 鵜飼 彩子
100万ドルの夜景が綺麗でオシャレな神戸市の街で2日間にわたる基幹研修に参加しました。基幹研修まで読み替えができて本研修のみ受講すれば研修認定がとれるということで、本研修には全国の中堅の方々が参加していました。
研修の内容は精神保健福祉士の専門性、制度・政策論、実践論と演習・事例検討でした。
専門性の講義では協会の歴史から専門性を考え、専門性の要素、専門職として必要なこと、倫理綱領等について改めて振り返るものでした。これまでにも精神保健福祉士の専門性については十分に学習してきましたし、大学時代に仲間と議論し合うことで自己覚知する機会をもってきましたが、ここで改めて初心に戻り、自分の業務を客観的に見つめなおす機会となりました。
制度・政策論、実践論では、知っておくべき法制度やソーシャルな視点を意識した日常実践についての講義でした。法制度については、業務上必ずといっていいほど活用しているため、復習する形として学ばせていただきました。私たち行政機関の職員は法律を基本として仕事をしていますが、ただ単に法律に沿って支援すればいいというものではありません。法律をベースにしながらも視野を広げ、ソーシャルな視点でクライエントのニーズを捉え、それを集めて地域の状況や課題を見つけていくことにより、今後何ができるかを考えて行動していくことが大切だと思います。私はこの講義を聞きながら行政という立場で精神保健福祉士としてどのような役割を果たせるだろうか、どのようにクライエントのニーズに応えていくことができるのだろうかということを考えました。それを今後の日常業務の経験の中から探し出していこうと思いました。
これらの講義を踏まえ、演習・事例検討では全国の方々と数名のグループを作って話し合いました。前もって用意してきた事例検討では、各機関での取り組みや地域での課題が見えてきて、今後にも大変参考になりました。やはり講義だけではなく、グループの中でさまざまな地域の実践を聞き、議論することで自己の振り返りや業務の向上にもつながるので、とても重要な場だと感じました。最後に宮本常任理事もおっしゃっていましたが、迷ったら仲間に相談することは必要だと思います。同じ仲間と共に話し合い、支え合っていくことで、よりよい支援や実践ができると感じました。グループワークは本研修の中で最も自己覚知ができたと感じる場でした。
最後に、迷った時や立ち止まった時に学問に戻るという話を聞き、正にその通りだと感じました。私は特に専門職が少ない職場ですので、迷いや悩みというのは常に尽きません。業務を振り返り、反省する機会もなければ、自分の中だけで解決しなければならないことも多々あります。そのため、定期的に様々な研修会等に参加し、自分の実践を振り返る機会を設けるようにしています。やはり日々仕事として実践するだけでは本当の意味でクライエントのニーズに応えているとはと思いません。専門職とは常に自己向上や客観的視点を養うために積極的に学ばなければなりません。またクライエントにとってより良い支援を行うためにも学ぶ必要があります。真の専門職であり続けるため、この研修制度を精神保健福祉士の皆さんに大いに活用してほしいなと強く感じています。
今回の研修会を主催していただきましたスタッフの皆様、ありがとうございました。