「第27回基幹研修(・)」と「第26回更新研修」をジェイエイ共済埼玉ビル(埼玉県)にて開催しました(開催案内)。日程は、基幹研修が2015年10月11日(日)、基幹研修および更新研修が2015年10月11日(日)、12日(月祝)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。
<第27回基幹研修・第26回更新研修> | ||
金成講師による講義1 | 全体会の様子 | 基幹研修代表者による修了証書授与 |
更新研修演習の様子1 | 更新研修演習の様子2 | 更新研修代表者による修了証書授与 |
NPO法人ヒューマンケアクラブ ストライド(東京都)/経験年数15年 森 隆憲
(第26回更新研修修了者)
今回の更新研修では、「当事者が地域で生きる」には、PSWとしてどのように当事者に働きかけ支援すればいいのかを考察したいと思い参加させていただきました。
私が勤務する事業所は、クラブハウスモデルを基盤にしている就労移行支援・就労継続B型をしている多機能型事業所です。地域柄、家族と同居しているメンバーが多く、今後5‐10年後のことを考えるとグループホームや一人暮らしの生活が待っていると思いますが、私たちの地域にはグループホームがそれほどないため、「親亡きあと」のことを考えると親は勿論、本人の生活が成り立たなくなると思い、更新研修の「ピアスーパービジョン」のための実践レポートは、このテーマで作成することにしました。
そんな中、研修で同じグループになった仲間が、「このレポートの内容を共有してみたい」と声をあげてくれました。そして、私のグループの仲間が様々な視点から「親亡きあとの話」をしてくれました。私は、その時、色々な意見をメモすることに一生懸命で頭の中を整理することができずにいましたが、数日が経ち「点と点」とが結ばれていきました。
それは、「PSWとしての仕事の仕方と当事者が地域で生きるためにPSWができること」でした。まず、「PSWとしての仕事の仕方」の視点から気づかされたことは、日本にある制度(グループホーム、ホームヘルパー、訪問看護など)だけに視点がいき、既存の制度で私が諦めていたことや、職場に人数が少ないためそこで自己完結して視野が狭くなっていたことでした。私は、既存の制度に囚われるのではなく、「こんな風な制度や仕組みがあったら便利だ」と私自らが考え、諦めずに提案する姿勢が必要だと改めて思いました。
次に「当事者が地域で生きるためにPSWができること」とは、この地域社会で起きている出来事から時代の流行や事象等にもっと深く関心を向けることだと思いました。つまり、私は、地域でどんなことが起きており、どんな変化をしているのか。そして、それが当事者たちにどのような影響を与えているのか。また、時代の流れの中で今注目されていることやホットな話題をつかむことによって、当事者の生きづらさを生きやすくするために貢献し、還元していくのかを考えていかなければならない。いや、「当事者」ではなく「市民」という言葉に置き換えるとより分かりやすくなります。これからは、私たちPSWという国家資格だけでは終わらない、一人の同じ「市民」という対等な視点をもつことが必要だと思うのです。
医療法人新生会 いしい記念病院(山口県)/経験年数17年 大川 寿美子
(第27回基幹研修3修了者)
精神科病院の相談員として働き14年が経ち、後輩の教育について考えていました。そのような時、基幹研修に参加しました。
研修の内容は、後輩教育に活かせそうな内容ばかりでした。職場に戻ってから、研修で学んだことを材料にして、後輩たちと『成年後見制度の成り立ちと精神保健福祉士のソーシャルワーク』をテーマに議論しました。議論に参加した後輩の藤川さんからは「精神保健福祉士のソーシャルワークはこんな風に続いていくんだ!この後、どんなソーシャルワークになるのか楽しみ。続きが聞きたい」という声があがり、研修の内容が精神保健福祉士をスクスク成長させていく様をみることができました。みなさんも、ぜひ、日頃の勉強会で使ってみてください。
もうひとつは、基幹研修に参加することが精神保健福祉士の成長に繋がると感じたことです。それは特にグループワークから感じました。グループワークでは、総合病院の若い精神保健福祉士から出された事例について、10年以上のキャリアのある精神保健福祉士が「専門性に立ち返り振り返ると、精神保健福祉士らしい関わりができている」と指摘していました。また、精神科デイケアで働く若い精神保健福祉士からの事例についての先輩のコメントは、「精神科デイケアの治療効果は精神保健福祉士だからこそ気づき意図的に関わることができる」という指摘がありました。日頃の業務を振り返る時、先輩の精神保健福祉士の助言が後進の成長には欠かせないことに気づきました。
さて、これらの気づきから今後の日本精神保健福祉士協会の課題について考えてみました。それは、専門性の追求と後進教育にあると私は考えます。ソーシャルワーカーと言われる国家資格者の中で、精神保健福祉士の仕事について特に“精神科ソーシャルワーカー”とされているのはなぜなのか、まずはこのことを精神保健福祉士が考え理解し共通言語で語れることが必要だと思います。ちなみに、当院の自主勉強会の今期の課題でした。次に、専門性や実践について振り返る機会を日常的に協会員に提供できる体制整備が必要だと思います。研修の場だけでなく、現場の今の実践を通して精神保健福祉士が考え成長していくことができるようなしくみができることを期待しています。
私の感想をもとに議論できればいいのですが。みなさんに会える次の機会を楽しみにしています。
<第27回基幹研修> | |||
北森講師による講義1 | 岡本講師による講義3 | 基幹研修代表者による修了証書授与 |
公益財団法人 西熊谷病院(埼玉県)/経験年数12年 織田 洋一
(第27回基幹研修2修了者)
私は2009年度に基幹研修を受けた後、日々の業務の忙しさを自分への言い訳にし、基幹研修以降は受講せずそのままとなっておりました。また、基幹研修の対象者は経験年数が「基幹研修修了後概ね3年度以内」とのこともあり、月日が経つにつれ徐々に参加しづらさが増し、参加できずにおりました。
しかし、今回は地元である埼玉県で開催されたため、思い切って参加させて頂きました。参加するまでは経験年数的に浮いてしまうかとも考えておりましたが、実際参加してみると経験が長い方も沢山いらっしゃったようでしたので、安心したというのが初めに受けた印象です。
基幹研修は「精神保健福祉士の専門性」「精神保健福祉制度・政策論」「精神保健福祉士の実践論」「演習」で構成されており、ソーシャルワーカーの専門性を学び考え、更に基幹研修で学んだ事を深める良い機会となり、また基幹研修から精神保健福祉制度・政策論が入っていることで、個だけを考えるのではなく、よりソーシャルな部分に焦点を当てられる内容となっていました。
演習では、「精神保健福祉士に必要な“ソーシャルな視点”」、「精神保健福祉士の専門性とは」をテーマに参加者6人〜7人でグループとなり話し合いを行いましたが、様々な所属機関、経験年数の方々で構成されていたことで、様々な側面からの意見を聴くことができました。
そこで、皆さんの話を聴くことにより、自分自身の精神保健福祉士としての専門性や考え方を俯瞰で捉えることができ、沢山の気付きを貰うことができたと感じます。また、所属や経験の違いはあるものの、精神保健福祉士としての基本的な考え方は変わらないことを再認識することができました。
私は2014年に埼玉県で開催された第50回全国大会・第13回学術集会に運営委員として関わらせて頂きましたが、その埼玉大会では「優秀なケースワーカーではあるものの、ソーシャルワーカーとして社会を変革していこうという意識を持ち合わせていない精神保健福祉士がふえているのではないか」との問題意識がコンセプトの一つとしてありました。
当時この言葉を聞き、私自身の業務を振り返った時に胸を打たれた記憶があります。また今回の基幹研修を受けて、この言葉を再度考える良い機会となりました。
今後も今回の基幹研修で学んだ“専門性”や“ソーシャルな視点”を持って業務ができているか自己点検しながら精神保健福祉士として業務を行っていこうと思わせて頂けた研修でした。
※ご報告いただいた方のご所属名と経験年数は、研修受講時の情報で掲載しています。