報告

第22回基幹研修23&第21回更新研修

「第22回基幹研修(23)」と「第21回更新研修」を国際ファッションセンター(東京都)にて開催しました(開催案内)。日程は、基幹研修2が2014年3月15日(土)、基幹研修3および更新研修が2014年3月15日(土)、16日(日)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。


<第22回基幹研修3・第21回更新研修>
齋藤講師による講義2 関原講師による講義3 基幹研修3演習の様子
基幹研修3代表者による修了証書授与 更新研修演習の様子 更新研修代表者による修了証書授与

・ PSWの魅力を改めて感じた更新研修

神奈川県支部/経験年数9年3か月 梶浦 佳代
(第21回更新研修修了者)

 現場から離れて約5年。結婚、転居、出産、育児と追われているうちに、障害者自立支援法から障害者総合支援法へ、精神保健福祉法の改正、と法律が変わり、現場が大きく変わっているのは予想され、話についていけるか心配でした。
 参加者は74名。関東圏だけでなく、遠方からの参加が多く驚きました。以前勤めていた地域である愛知県のPSWにも偶然出会え、懐かしい話もできました。
 精神保健福祉士の専門性の講義では、「自己決定」や「結果よりも過程が大切」という原点となる大切なことを再確認。制度・政策の講義では、法律の詳しい話が出てきたところで時間切れになってしまい、残念でした。しかし、「個別の実践を通して個別の問題を一般化・社会化していくことが大切」「一機関に所属するPSWでありつつ、大切な地域のマンパワーであるという視点をもつ」とのお話は、PSWの置かれている状況が厳しいものであるけれど、だからこそ大事にしたいPSWの視点だと感じました。また、実践論の講義では、「本人が自分で考えて自分で選んでいける、そのプロセスが大切。そのことは覚えていてくれているもので、考えて苦労して決めた今の生活だから大事にしてくれようとする。」「社会資源を作ってから、運営を続けていく中で赤字や、危機的状況になることもある。その時に支えとなるのは理念。何のために作ったのか、がないと続けていけない。経営の数字を読み込むことも必要。」とのお話が印象的でした。法律が変わったことで、ますます時間に追われるようになり、当事者の話にゆっくりと耳を傾ける時間が持ちにくくなった、という話をよく聞かれる今、現場で頑張っていける秘訣、PSWとして大切に守り続けたいことと話されているように感じました。演習、ピアスーパビジョンでは、どの現場も切羽詰った事柄と向き合い、取り組まれている話で、講義でも繰り返し出てきたPSWの置かれている状況の厳しさを感じました。そして、そんな中でも当事者の思いに寄り添いたい、何とかしたいと葛藤しながら向き合う姿勢に、こんな気持ちを持ち続けられるPSWでありたい、それこそPSWの魅力ではないかと思いました。話についていけないところもありましたが、皆さん丁寧に説明して下さり、感謝しています。
 今回、事前のレポート作成にあたり、現場にいた頃、感じていたことを文章化するいい機会になりました。そして、たとえ今、現場から離れていてもPSWとしてアンテナをはっていたいと思える研修でした。


・ 振り返る機会

医療法人 十全会 おおりん病院(福岡県)/経験年数6年(内、PSWとして4年) 廣見 慎哉
(第22回基幹研修3修了者)

 2014年3月15日、16日と東京都で開催された基幹研修3に福岡県から参加しました。会場である国際ファッションセンターからは、東京の新名所である東京スカイツリーを眺めることができ、研修を受けながら観光もしているような感覚も味わえ、なんと粋な計らいだろうと勝手に感じてしまいました。
 本題に入りますが、私自身は、自らの実践を振り返り、自己研鑽を目的として研修に参加しました。また、東京圏域の実情を知りたい気持ちや、そのフィールドで実践している仲間と知り合うことで、県域を越えた繋がりを持ちたいとの気持ちが強くありました。
 講義1の精神保健福祉士の専門性3では、西澤講師より、共通テキスト以外にも独自の資料を用いて、「穴の中に落ちた人をどのように救うか」を考えながら援助を形づくる枠組みについて理解を深めました。また、参加者からも意見を聞き、海外のソーシャルワークに関する書籍の紹介を交えられながら講義していただきました。
 講義2の精神保健福祉制度・政策論2では、齋藤講師より、共通テキストと独自の資料を用いて、ミクロ・メゾ・マクロによる視点の捉え方から、改正精神保健福祉法の保護者制度について、さらに、イギリス意思決定能力法におけるIMCAの活動についても講義していただきました。
 講義3の精神保健福祉士の実践論3では、関原講師より、共通テキストに沿って説明いただきました。基幹研修3に求められる課題として、「ソーシャルな」視点を意識した実践に挑戦する意義を再確認することや、現状を変えていく力を養う力が必要であることを学びました。
 演習3とピアスーパービジョンでは、精神科病院、保健所、地域活動支援センター、社会福祉協議会など、様々な所属機関の精神保健福祉士と意見交換を行ない、各自の取り組みやかかわりについて話し合いました。経験年数や教育課程、実践経過も様々な中、グループの中では「お互いのことを知りたい」や「日々の業務や苦労を分かち合いたい」などの気持ちから発言も活発となり、自然と笑い声が出るような状態でした。日々の業務・実践の中に「ソーシャルな」視点を意識していくためには、私たち自身のモチベーションやメンテナンスが大切であり、多くの人と繋がることで孤立しない状態を作ろうという意見を共有しました。
 今回の研修を終えて、日々多忙な業務の中で、どれだけ立ち止まり自身の実践を振り返る機会を持てるか、精神保健福祉士として研鑽していくことの大切さを再確認する機会となりました。研修に携わって下さった講師、研修委員の皆様に、心より感謝致します。ありがとうございました。
 最後に余談ではありますが、参加されている方の多くが東京圏域であったにも関わらず、研修・懇親会と参加する中、意図せず九州圏の仲間で集まることがあり、思わず笑ってしまいました。懇親会では、限られた講義の時間では、補足できない内容も多く、貴重な話を聞かせていただくこともできるため、研修の醍醐味の一つではないかと思います。


<基幹研修2
西澤講師による講義1 会場の様子 演習の様子 代表者による修了証書授与

・ 振り返りの大事さと“慣れ”の怖さを知って

西脇病院(長崎県)/経験年数3年 宮ア けい
(第22回基幹研修2修了者)

 2014年3月15日、東京都で開催された基幹研修2に参加させて頂きました。私は長崎県在住で、研修の募集があったときは、正直「遠いしどうしよう・・・」と逃げ腰でした。しかし、研修で少しでも多くの人たちと出会い、今後の業務に活かせたらと思い、参加に踏み切りました。
 講義2では西澤利朗先生に「精神保健福祉士の専門性2」をご講義して頂きました。講義の中で、援助関係の性質(一方的関係、相互関係、循環的関係、無関係)について学び、「自分の行っている援助は、援助の性質をきちんと考えて行っているのだろうか・・・」と思いました。気づかないうちに、自分の考えや価値観を押し付けていたかもしれません。
 講義2では齊藤敏靖先生に「精神保健福祉制度・政策論T」をご講義して頂きました。戦時下の精神病院の悲惨さや、三障害(身体・知的・精神)の中で、精神障害者の入院率が高いことや手帳の取得率が低いこと等を学び、日本の制度上の障害者の定義が狭いことを改めて感じました。また、ひきこもりと発達障害の関係や、臨床心理士と精神保健福祉士の面接の評価に差があることを知りました。
 講義3では元井昭紀先生に「精神保健福祉士の実践論2」をご講義して頂きました。講義の中で社会資源の活用について学び、「どの社会資源を活用するかは自分が決めていたかも・・・」と思いました。慣れにより、社会資源の強制を無意識のうちに行う可能性が誰にでもあると学んだことで、慣れの怖さを知ることが出来ました。
 演習2では「精神保健福祉士の専門性とは?」について意見交換をしました。専門性についてだけではなく、日々の業務の悩み等についても意見交換をすることが出来ました。私は所属機関が病院ですが、行政や施設に勤めている方の意見を聞くことで、それぞれの専門性の考え方・感じ方に違いがあることを知り、とても刺激を受けました。
 この研修で、私が強く思ったことは、日々の業務の振り返りの大切さでした。業務に慣れることは良いことだと思っていましたが、慣れることは価値観の押し付けや社会資源の強制に繋がる恐れがあります。振り返りをすることで、少しでもリスクを下げ、より良い援助に繋げていきたいと思います。
 最後になりましたが、研修に携わって下さった講師の方々、協会の方々に心より感謝申し上げます。


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