報告

精神保健福祉援助実習における「認定実習指導者養成」モデル研修を受講して

2010年2月20日(土)、21日(日)、東日本(文京学院大学・本郷校舎)と西日本(神戸女子大学教育センター)の2会場に分かれて、「精神保健福祉援助実習における「認定実習指導者養成」モデル研修」を開催しました。ここでは、各会場の修了者からの報告記事を掲載します。

東日本会場
       
開会挨拶をする鈴木理事 講義1 演習 修了証書の授与
西日本会場
       
講義1 演習 全体会での各班発表 修了証書の授与

・ 東日本会場:『認定実習指導者養成』モデル研修に参加して

秋田県立リハビリテーション・精神医療センター(秋田県)/経験年数9年 佐藤 篤

 今雪の残る地元秋田から参加した研修会は、気温のみならず、参加者のみなさんの熱気で非常に熱い2日間でした。

 私の所属先では2010年度に初めての実習生を受け入れることになり、学生時代や初任者の頃の記憶を呼び起こしながら実習指導のイメージをふくらませているところでした。そのような中で今回の研修が開催されることを知り、経験則だけでなく、日本精神保健福祉士協会や日本精神保健福祉士養成校協会で考える現場実習のあり方について、カリキュラムや教育内容、実習指導に求めるポイントなどを学んだ上で、現場サイドの一方的な価値観や思いのみで指導にあたることを避けたいと考えたのが受講のきっかけです。

 何度か日本協会の研修には参加させていただきましたが、どの研修でも「自己の再確認」「自己覚知」を経験し、またそれを繰り返しながら現場へフィードバックしていくことの重要性をいつも再認識させられていますし、今回もそのとおりでした。

 中でも経験をしっかりと意識化・言語化することや、実習生に答えを与えるのではなく、「なぜ?」「どうして?」を考える機会を提供したり、気づきのヒントを出しながら一緒に考えることで、実習生の自己覚知を促すのが目的であるという点が重要なのであろうと感じてきました。この点については、自分自身の実践の中でも常に意識的に取り組まなければならないポイントだと、あらためて感じたところです。

 個人的にはスーパービジョンの展開についてもっともっと研鑽を深めなければならないという課題をいただいて帰ってきました。また、実習指導を経験することで、指導者側の自己覚知にもつながり、実習生同様、精神保健福祉士としてのさらなる成長につながるのでないかと感じ、今後も後進の成長を後押しすると共に、自身や同僚の成長のためにも実習指導に取り組めればいいなと思いました。

 ゴールも明確な答えもないと思いますので、まずは初めての実習生と肩を並べて現場実習を作り上げていければと考えています。最後になりますが、今回も有意義な研修会でした。開催事務局並びに講師の皆様、また演習グループでご一緒させていただいた参加者の皆様には特に感謝申し上げます。ありがとうございました。


・ 西日本会場:『認定実習指導者養成』モデル研修に参加して〜実習生に伝えること〜

たけとう病院(福井県)/経験年数7年 後藤太一

 私はこれまで、実習生の指導に直接かかわることはほとんど経験がありませんでした。上司や同僚が担当してくれていたことが理由に挙げられますが、自分自身のかかわりや実習生を指導するということに自信がなかったことも否めません。今回のこの研修に参加したきっかけは、実習指導に対しての基礎を学び、今後の受け入れに対しての自信をつけたかったことが一番にありました。

 今回の研修では、2日間の期間中に4コマの演習が講義と講義の間に組まれており、事前の講義内容を自分やグループメンバーの言葉で復習できました。さらにはグループリーダーが現任の理事の方ということもあり、新カリキュラムについてより詳しい話を聞くことができました。国や政府と全国協会の話し合いは、雲の上でのことと思いがちでした。しかし、私たち現場から声をあげることがとても重要なのだと実感しました。

 演習の中で、「実習で何をどこまでやるべきなのか」と言う共通の疑問がありました。受け入れ施設によって、今のままの指導で良いのかという悩みが多く聞かれました。また、実習生側について、「精神保健福祉士か社会福祉士か、どっちつかずで来ている人がいる。」という現状があり、受け入れ側にすればモチベーションにかかわる問題であるとのことでした。

 私自身これまで現場実習について、「専門職養成のため」とか「即戦力の同僚を育てる」というようなイメージを持っていました。今回の研修で思い直したことは、自分がそうであったように、この実習が専門職への通過点でしかないということでした。仕事に就いてからの実践の中で、日々成長していけることが必要であり、そのスタートラインに立つための手助けになれれば良いのだと考えました。実習生には現場を体感してもらい、「(精神保健福祉士という)仕事の魅力を伝える」ことが重要なのだと。さらには実践に触れる中で、実習指導者の姿から「こういう風にしているのは、こういう意味があるから」というソーシャルワークの根拠となる部分を伝えていくことが必要なのだと考えました。専門性の根っことなる、価値と倫理について伝えていかなければいかないのです。そのためには、普段のかかわりや業務のなかでも、その根拠を意識し考えを深めておくことが必要なのだと改めて考えました。

 そしてもうひとつ、そのためには実習指導者としてスーパービジョンを実践していく必要があるということを学びました。今井先生の講義を受け、そんなに難しいものではない、むしろ意識して行っていかなければならないものだと実感しました。スーパービジョンは「どういう目的で、どういう構造で展開されるか。スーパーバイザー・バイジーの両方が理解していることが大切」で、実習生にもその意味を伝えておくことが必要なのだそうです。まずは、『Why?』ではなく『What?』で問い直すことで、実習生自身の振り返りに意識的に「かかわり」を持ちたいと思います。

 今回はモデル研修ということではありましたが、実践の再確認や新しい発見、新しい仲間との出会いがり、とても充実した2日間でした。諸先輩方が実践を積み重ね精神保健福祉士が国家資格化された今日、私たちのかかわりは「私のやり方」ではなく、理論・体系化されたものでなければいけないと教えられました。実習生を指導するという立場に立つためには、まずは自分自身のかかわりを日々意識して見つめ直すことが必要なのだと改めて感じました。


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