報告

「課題別研修/ソーシャルワーク研修2017・冬〜知識や技術を高めよう〜」を受講して

2017年12月10日(日)、昭和女子大学(東京都世田谷区)にて、「ソーシャルワーク研修2017・冬」を開催しました。ここでは、ご寄稿いただいた修了者からの報告記事を掲載します。


・ テーマ1 実践を見える化する方法を学ぼう!

       
山口講師による講義「量的研修の実例」 坂本講師によるグループワークの説明 発表の様子 代表者による修了証書授与

■もっと早くこういう研修に参加しておくべきだった

公益財団法人 井之頭病院(東京都)/経験年数13年 前沢 高志

 2017年12月10日にソーシャルワーク研修2017・冬「実践を見える化する方法を学ぼう!」に参加しました。私自身が日々の実践の中で感じていた疑問を明らかにするための研究に取り組んでいたところでしたので、この研修を知り、「もっと早くこういう研修に参加しておくべきだった」と思いながら、すぐに申し込みました。
 研修は1日がかりで、全国から約50名の方が参加されていました。

 午前は主に講義で、まず研究の基礎的な枠組みについて、次に文献研究の方法について教わりました。そこでは先行研究を調べる意義や信頼できる文献の探し方、また実際に自分のスマホを使ってデータベースから文献を探してみるなどをやりました。その後、質的研究と量的研究の概要と実例について教わりました。まず研究をする意義から始まり、何が質的データで何が量的データかということや、それぞれの調査の具体的なポイント、また調査のまとめ方までわかりやすい内容でした。

 午後はグループワークで量的研究と質的研究について体験しました。量的研究のグループワークでは例をもとにリサーチクエスチョンを決め、調査項目や調査方法、倫理的な課題のクリアの仕方や分析方法など研究計画をグループで相談しながら立てるものでした。この計画を立てるのが非常に難しく、途中まで計画を立てては誰のための調査かを考えなおしたりしている間に時間になり、まとめるまでには至りませんでした。

 質的研究のグループワークではインタビューデータから調査目的に沿ったものを抽出し、それをコーティングし、カテゴリ化するというものでした。ですが、複数のデータからどのような概念を抽出するか、どのような言葉で表現するかというのは実際にやってみるとこれもまた非常に難しいものでした。

 1日の研修を通して、研究の意義や具体的な方法などを丁寧にわかりやすく教わり、また同じ目的を持つ全国の仲間と出会い、私の研究へのモチベーションは上がりました。一方で実際にやってみることで難しさを痛感し、私の足りない点をたくさん、ほんとにたくさん教えてもらいました。そういう意味でも今回この研修に参加できて本当に良かったと思いました。そしてやっぱり「もっと早くこういう研修に参加しておくべきだった」と思いました。
 今回このような研修を企画してくださり、ありがとうございました。


・ テーマ2 ソーシャルワークの視点から日常業務を再構築しよう〜「精神保健福祉士業務指針」を活用した専門性の確認〜

       
開講式 岩本講師による講義1 赤畑講師による講義2 演習の様子

■業務と理念、自分の原点

食工房ゆいのもり(東京都)/経験年数1年8か月 本橋 剛

 私は就労継続B型と就労移行支援の2つの機能を持つ事業所で働いています。当事業所では主にパン製造・販売・カフェ営業などを作業として行っています。私は事業所の職員として利用者との面談や個別支援計画作成の他、パンの製造販売、地域のイベントでのパン販売などの業務を行っています。入職1年が過ぎてから、利用者支援から授産活動など、多岐にわたる業務の中で精神保健福祉士(以下PSW)の仕事とは、どこからどこまでなのか?PSWとして自分は何ができているのかを考えることが増えました。そんな時に今回の研修を勧められ、受講を決めました。

 現在、PSWは職域が多様化しています。業務の多様化、多職種との連携、制度の整備により事業所から求められる役割の変化がある状況です。その業務の中で「ソーシャルワーカー・PSWとして」の視点を意識して業務を捉えていくことがPSWには求められてきています。研修の中でそれを意識する演習として、自らの業務を「PSWの専門性、視点」を軸に見直し、業務指針を基にシートに書く作業を行いました。自分の仕事をPSWの仕事として目に見える形で確認ができたと考えます。私が元々PSWを志したきっかけとなった「well-being」や、「人と環境の相互作用に着目する」などの理念・視点を再確認できたと感じます。このことで、私は業務の中で理念が漠然としてしまっていたことに気づくことができました。私が利用者と行うパン製造作業も、個人に焦点を当てればアセスメントやリハビリテーションの一環となる作業です。単に1つの作業をその作業として捉えるのではなく、利用者を中心として多角的に捉えていくことが大切になると気づくことができ、このシート作成をする意義を感じました。

 今回の研修ではグループによって行われるワークがメインでありました。そのグループで悩みや、どんな業務に疑問を感じるかなどを話し合い考えることができたと感じます。グループによるワークは自分一人で考えるだけでは見えない視点も知ることができるので大変良かったと感じます。今後は研修で学んだ方法で、業務指針を活用しながら業務を行っていき自分の原点を忘れないようにPSWとしての活動を続けていきたいと思います。


・ テーマ3 精神保健福祉士による災害支援活動

       
開講式 松田講師による講義「被災地支援活動概論」 全体会 代表者への修了証書授与

■ 研修を通した自身の経験の振り返り

東京都立松沢病院(東京都)/経験年数13年 堤 豊治

 研修の参加動機は、過去に参加した災害支援活動に対する気持ちの整理をおこないたいと思ったためです。2011年3月に起こった東日本大震災の災害支援で2度の現地派遣を経験しましたが、いずれの活動においても「精神保健福祉士として何もできなかった」との不全感を感じていました。その後、日々の業務の中でいつのまにかそのような気持ちも埋もれていましたが、機会があれば支援活動に携わった方々の話を聞きながら自身の経験や思いを客観的にとらえ直してみたいと考えていました。

 今回の研修ではこれまでにない新しい取り組みとして、被災地支援活動概論(講義)と応援(支援をおこなう側)の立場からだけでなく受援(支援を受け入れる側)のグループワークをおこなわれていました。

 被災地支援活動概論では、国内の災害関連法制度や被災地支援の具体的な考え方や方法としてのスフィア・プロジェクトやサイコロジカル・ファースト・エイドなどについての講義を受けました。私が災害支援に参加した当時は支援活動全般に関しての基本的かつ整理されたものに触れる機会は少なかったと思いますが、東日本大震災を契機として活動についての基礎的な導入論の整備も進んでいることを知りました。

 また午後からおこなわれたグループワークでは、受援について初めて考える機会となりました。応援側と受援側それぞれで起こっていることを知ることやそのことを想像しながら活動をおこなうことは、精神保健福祉士にとって重要な視点である「連携」を考える上でも大事なことだと思いました。

 今回の研修で特に印象に残ったのは、支援活動に参加した方ばかりでなく職場の中で派遣者を送り出す立場だった方、個人的なボランティアとして携わってきた方、熊本地震で受援に携わった方など、様々な立場の方のお話を聞くことができたことです。一般的に、災害支援では実際に支援に携わった人の話題が中心という印象があると思います。しかし、その活動を支えるために様々な立場や役割を持って関わっている人たちがいることを知ることで「支援者だけではない別の視点や立場」を感じることができ、これまでとは違う面から自身の経験を振り返る機会となったと思います。


・ テーマ4 退院後生活環境相談員の業務と視点を見直そう

開講式 演習V 演習W 演習W

■地域のPSWが“退院生活環境相談員”というフレームを通して学んだこと

NPO法人リカバリー トラヴァイユ・それいゆ(北海道)/経験年数11年 檜垣 知里

 私は就労継続支援B型事業所「トラヴァイユ・それいゆ」という事業所を拠点として、さまざまな被害体験を背景に精神疾患や障がいなどの困難を有する女性への援助、それぞれの利用目的に応じ、メンバーとともにお弁当づくり、企業からの下請け作業、刺子やパッチワークなどを取り入れたベビーキルト、小物などの製作を行っています。そのような現状に身を置く私にとって、本研修会のテーマ“退院生活環境相談員の業務と視点”について、これらを“見直す”ことはおろか、そもそも自分の実践や関心をこのテーマにいかに寄せていくことができるか、少し不躾な言い方ですが自分にはどこか関係のない領域に足を踏み入れるような戸惑いがありました。参加動機も不純なもので、本来参加を予定していた研修会の定員超過に泣き、東京行きの飛行機と宿の手配だけが整い予定がぽっかりと空いてしまった12月10日。この日を、なんとしても学びたいモードの熱を冷まさずに埋められる機会はないかと尋ねた先輩、本研修の講師を務められた常任理事の尾形さんのいつも変わらぬ気さくさとスマイルに魅せられ参加を決めたのでした。

 前置きが長くなり、企画運営に携わられた講師の方々が、練りに練られた細やかなプログラムの全容に触れる感想をこの場でお伝えすることができないことが心残りですが、私の日常業務とはずいぶんと距離がある“と思いこんでいた”退院生活環境相談員という業務や視点を見直すことが、PSWという仕事をクライエントの場から改めて俯瞰して振り返る機会となったことは非常に大きな収穫でした。

 医療機関のPSWとしての業務と地域の事業所のPSWとしての業務には、冒頭に述べた日々のルーティーンやクライエントと関わる場面、時間の共有の仕方にはいくつもの違いがあります。“医療機関で働いたことがない私”という約11年の経験値が時にコンプレックスとして感じられることもありましたが、それは経験を補う努力と研鑽次第。それ以上に大切なことは、医療と地域は分断されていないこと、クライエントの人生や生活において医療も地域も地続きの場であること、そのとある地点で私たちはPSWとしてクライエントと出会い、かかわり、互いの変化と成長をめざしてともに在るということでした。あたりまえだったはずのことに目が開くような感動を得ることができた研修であったことに感謝を込めて。10年たっても何年たっても、あたりまえのことを今日一日、大事にして現場に居続けるPSWであれたらと思います。 


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