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東日本大震災復興支援委員会メッセージ

いわきから

 東日本大震災復興支援委員会 鴻巣 泰治

 私事ですが、2016(平成28)年4月に福島県内へ転職し浜通りにて仕事につきました。また、本年度より復興支援委員会に迎え入れていただき、本当に微力ながら活動をしています。
 年の瀬を迎えこの一年をどのように過ごしたのか振り返ってみると、まるで井の中の蛙だった自分に気がつく事ばかりです。私の私見ですが思いつくままに書いてみました。

 震災から5年9ヶ月が経過しました。2016(平成28)年11月末現在、福島県から他県に40,245人、福島県内に42,735人が避難生活をされています。福島県内には市町村災害公営住宅(地震・津波等被災者向け)が64地区2,807戸が計画され、2016(平成28)年11月末時点で60地区2,644戸が完成。また、復興公営住宅(原子力災害による避難者のための住宅)が70地区4,890戸が計画され、52地区2,576戸が完成しました。2017(平成29)年度中には全戸が完成する予定で、これらの動きに伴い仮設住宅等の閉鎖が進む訳です。
 法律的には災害公営住宅や復興公営住宅に入居した段階で、被災者という枠からは外れるそうです。避難者の数が減少して行くのは復興公営住宅等に住まわれた方だけではなく、避難指示の解除の動きに伴い帰還されている住民もおられます。

 数字の上では避難者が少しづつ減少し復興が進んでいるようにも思えます。しかし、コミュニティの再編を余儀なくされ人々が孤立化するのではと心配はつきません。このような流動的な状況下で誰がどのように支援活動を継続して行けるのかが問われています。
 福島県内の市町村等には元々コメディカルスタッフが少なく、各地に避難した方々に対応するためには派遣職員等に頼らざるを得ない状況が続いています。避難指示が解除されることに伴い、次々と避難自治体の役場が元の地に戻る動きが始まり、遠距離の通勤を余儀なくされる方も予想され自治体職員の疲弊がますます進むと言われています。
 そんな中、地域では様々な被災者支援団体が活動していますが、近々活動を終了する団体があることを伺いました。一定期間の活動後終結を迎える時期なのかもしれません。

 このような中で私が感じるのは、「戻っても戻らなくても何かを失う」ということであり、今後の生活のしかたを決断する事が困難な方がいらっしゃる事です。
 例えば「元の家に帰るべきか否か」「戻るためには修繕しなければならない」「壊すとすれば3月までに申し込まなければならない」「俺はどこに住めば良いのか」「どう生きていけば良いのか」等々の言葉を聞くことがあります。時間の経過と共に二極化が進んでいるといわれます。この5年9ヶ月間に「自宅の再建をされた方」「新たな場所で生活を始めた方」「新たな仕事に就かれた方」こういった方々がいらっしゃる反面、「決断が出来ずに悩んでいる方」「復興公営住宅に住み始めたものの今も戻るか戻らないかを考え続けている方」「自宅とは別の地に新たな家を構えたけれども、本当は戻りたいと言う気持ちに気がついた方」友人、知人、コミュニティ、仕事、ともすれば家族とも離れて暮らさざるを得ない状況は個々の境遇も異なり、これまで親しかった友人や親族との軋轢が生じ孤立感が深まるという状況は私の想像を遙かに超えていました。

避難生活の中での様々な問題
・再統合、離散(戻る・戻らないの葛藤、取り残された感)
・帰町する人、しない人との間に生じる心の格差
・情報の信憑性、捉え方、コミュニティの再分断

再外傷化
・一度落ち着いていた現象が再燃
・放射能不安
・コミュニティ内での軋轢、コミュニティの変化、コミュニティの再分断
・行政機関への怒り

ストレス状態の二極化
・健康面や生活面において、ますますの二極化が懸念
・被災、避難状況がより個別化・複雑化
・慢性化したストレスの症状化

支援者の疲弊
・帰還自治体職員の業務、負担増
・震災直後の避難による機能の分断から、帰還に向けた機能の再統合
・住民の避難生活の支援業務
・通常業務と住民の帰還を促進、復興業務、地域での業務の展開
・通勤の負担

 日々刻々変化する中で、様々な事がより深刻化しているように感じます。
 帰還によって再び、震災まもなくのような葛藤や、今一度残るか戻るかの決断に迫られることが、個人、コミュニティに起きています。長期化する原発事故の影響により、先が見えない、終わりが見えない状況なのです。喪失体験や、トラウマケアに加えて、自殺やアルコール問題への対応も大きな課題となっています。これらの事にどう活動して行くのか日々考えあぐねている毎日です。
 困った時には皆さんに協力を求めて行きますのでどうかよろしくお願いします。

すべての人にとって
来年は今年より良い年になりますように。

 
写真は、いわき駅前のイルミネーション「いわき光のさくらまつり」です。富岡町の夜ノ森のさくら並木をイメージした、光り輝く桜です