お知らせ

<2023/08/08>

【構成員の皆さま】「北海道江差町の社会福祉法人あすなろ福祉会における「不妊処置」に関する声明」について

 2022年12月、北海道江差町の社会福祉法人あすなろ福祉会(以下「同法人」という。)が運営するグループホームにおいて、知的障害のある入居者に対して不妊処置を強制していたとの報道がなされました。本報道を受けて、北海道は同法人に対して2022年12月から障害者総合支援法に基づく監査を実施していましたが、この度、2023年6月21日に同法人に対して運営改善を求めた指導をしています。

 本協会を含むソーシャルワーカー団体で構成する日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)では、過去に旧優生保護法訴訟に対する声明の発出等を行ってきた経過があることから本件について協議し、ソーシャルワーカーとしての「声」を発信することを決議しました。社会正義、人権、集団的責任等のソーシャルワークの諸原理を追求するソーシャルワーカーとして、人々に根強く残る優性思想や差別思想と対峙する精神保健福祉士として、構成員のみなさまにおかれましては、ぜひこれらの課題に関心を寄せ続けていただきたく思います。

 関連して、本年2月には、構成員の皆さまに「障害者の結婚、出産、子育て」に関する情報提供・意見をお願いしておりました。複数の情報・ご意見をお寄せいただき、この声明文ではそれらの情報も参考にしています。情報提供等をくださった構成員の皆さま、本当にありがとうございました。当該情報については、投稿募集時に公表することの了承を得ておりますので、地域情報などの個別情報については一部加工したうえで掲載させていただきます。構成員の皆さまの実践の参考にしていただければ幸いです。


本協会構成員から寄せられた本事案に関するご意見 

○ 障害者同士または片方が障害者の結婚、出産、育児中の支援をしているが、障害があるなしに関わらず当人同士が決めること。本人の希望を聞き応援。育児の負担を減らせるようチーム支援をしている。障害福祉課やこども支援課、保健師、精神科病院の精神保健福祉士、ヘルパーなどと連携を取り、支援できている。

○ 十数年前、実習巡回の際に学生から「患者さんから同じ病院の患者さんと付き合っていると教えてもらった。しかし、病院には、患者同士の付き合いは禁止というルールがあり、破った場合は退院なので、指導者に言えない。」という相談があった。障害者の恋愛や結婚をよしとしない風潮が根強く残っていると感じた。

○ 同性介護の是非を、意見集約するイニシアチブを、当協会が、旗振り役で、障がい者の性の問題提起をすることを、提案します。差別云々の前に、足許にある、性の役割、性差の意識、そして性と切離せれない結婚等の問題に、精神保健福祉士として、ガイドラインを提示出来る矜持を、持つべきと、考えているからです。

○ 表記の件につきまして意見させていただきます。報道の中心となった法人が自分の地元にあります。当医療機関に受診や相談でよく連携をとっております。また幅広い支援体制を整備し、近隣地域の観光資源にも障害者支援として関わり、多くの方が利用し、お世話になっております。自分の家族も法人が委託運営している施設をよく利用し、その中で障害を持っているだろう職員さんが一生懸命働いている姿をよく見かけます。以前当該法人のスタッフが利用者への暴力事件のため逮捕された際には、利用者の家族を中心として地域住民が「事件を起こしたスタッフは普段真面目に働いており刑を軽くすることを求める」署名活動が起きておりました。今回の報道を受けて、自分の医療機関内でもさまざまな意見が起こりました。相談支援を担うSWとして患者さんから「あなたは報道についてどう考えるのか?」と聞かれることを想定して相談室内で意見交換を行いました。そこでは精神保健福祉士という国家資格者としての意見と、個人の意見が別々に存在することが語られました。また、地元の法人ということで「その法人との付き合いの継続についても検討するべき」という考えもあり、整理することにとても苦労しました。結論としては患者さんがどのような選択をする際でも、SWとして丁寧に専門的かつ客観的、現実的な情報提供を心がけること、また継続してモニタリングや相談支援に応じることを患者さん、そのご家族、通所、入所先の施設にお伝えすることを徹底することと共有しました。相手の法人に対して我々の存在を継続して表現していくことの意義を我々が強く認識していくために、技術も考え方もレベルアップすることで、権利擁護の一環になることを整理したところです。出産、子育て支援の観点からは自立支援協議会との連携も重要と考えます。その中で、自治体に対してサービスの拡充や創設を働きかけ、障がいを持っていても安心して家族を持てる環境作りについて協議を始めていくキッカケになっております。職能団体としてこのような情報収集に取り組んでもらえることに敬意を持って、意見を挙げさせていただきます。まとまりのなく、簡単なもので恐縮です。

○ まず、私の身近な状況を書かせていただきます。1)軽作業の作業所に通所する知的障害の女性。障害がわかった時に父親が家を出てしまい、以降母子家庭。女性が20代の頃、母親が避妊手術を受けさせました。女性の同意があったのかは不明です。2)B型作業所に通所する精神2級(双極性障害)の女性。結婚・出産し、サポートを受けながら暮らしています。3)母親が軽度の知的障害。お子さんがいます。貧困・ネグレクト傾向。公的支援利用の詳細は不明。学校関係、町会活動などはお子さんが窓口になっています。日常的な買い物なども、お子さんがしています。傍目には「助け合っている仲のよい家族」とのことです。4)統合失調症の男性(30代)。結婚・お子さんがいますが、男性は入退院を繰り返しているため、妻と妻の実家が生活を支えています。5)軽度知的障害。結婚・出産。結婚当初から夫の身体的・経済的DV。子育てができず、養護施設に預け、その後飲酒量が増え、アルコール依存症・糖尿病の診断。回復支援・治療中。障害の種類や程度といった個人因子と、周囲の理解や価値観・家族関係・経済的基盤・社会制度(アクセスのしやすさを含)・ジェンダーといった環境因子により、その実情は様々ではありますが、障がいのある方の結婚・出産・子育ては、現実に、様々な形ですでにあります。ありきたりな感想になってしまいますが、障害のある方が結婚・出産・子育てがしやすい社会は、誰もが結婚・出産・子育てがしやすい社会だと思いました。まずは実情を明らかにすることだと思うので、このような調査はとても良いことだと思いました。

○ 旧優生保護法の下で不妊手術を強いられ、去年3月11日の賠償命令はまだ記憶に新しいが、そのようなことが未だにあるとは考えもしていなかった。日本は先進国で遅れていると言われているが、他にもあると思うと末恐ろしい。この事件を最後にしなければならない。

○ 迅速な意見募集の運動に敬意を表したいと思います。私事ですが2020年ごろから旧優生保護法の裁判に関心を寄せ、地裁と高裁で裁判を傍聴しました。原告が被害を語る場面を目の当たりにし、語り継ぐだけでなく、どのような形で今に受け継がれているかについて、精神保健福祉士が敏感である必要を痛感しました。そして、原告が声を上げるまでの経過には、施設の職員や家族の話を一緒に話を聞いてくれる周りの関わりがあってこそという実態を知りました。そう考えれば、やはり私たちの役目はまだまだ終わっていないと思います。しかし、このテーマに関しては高校までの基礎教育や、精神保健福祉士の教育にも十分な学びの機会がなく、やっとカリキュラムされつつある状況と思われます。早急にいい・悪い、違憲・合憲といった価値や判断をたどりつくのではなく、精神保健福祉士自身がこのテーマを、身に引き寄せ、周囲と対話する段階もプロセスとして重要と思っています。そして、多様な意見を認め合うことも一つの正義と思っています。全国規模や裁判が起こされている都道府県単位の支援団体主催でオンライン学習会も行われていますが、実際に参加していても、正直申し上げると精神保健福祉士の方の参加が少ないと感じているところです。最後になりますが、私自身がこのテーマに関心を寄せ、身に引き寄せる活動ができたのは、精神保健福祉士協会のスーパービジョンの利用がきっかけでした。利用者さんからパートナーとの妊娠についての相談を受けたこと、自身の家族史が優生保護法の加害者側であったことといった混沌をスーパーバイザーとの対話で整理することができました。この場を借りてスーパービジョンの仕組みを作ってくださった先輩方にお礼申し上げます。この件に関しては取り組みを文書にまとめる必要性も感じています。

○ 私は、福祉型障害児入所施設に勤務している。その中で感じた障害者の結婚、出産、育児について考察を述べさせて頂きたい。障害を理由だけではなく、虐待、養育不足で入所してくる児童は年々増えてきているように感じる。障害児については放課後等デイサービスが学校や家庭以外の教育、療育、居場所として現在、提供されており、ここ数年で多くの市町村で軒並み開所されてきた感がある。多くの保護者がそれの恩恵に預かっていると思うがやはりそれでも、養育が難しい子がこちらに入所してくる。その多くは障害を持つ親なのである。はっきりと障害を持っているとわかる親もいれば、面会、面談を繰り返し、なかなか理解が進まない事がわかると恐らく…といった案配で親に障害を持っているのが疑われる事も少なくない。そうしてその多くのこどもは18歳までここで過ごし、成人施設へ入所、あるいは就労しながらグループホームに入居という流れが既定路線化している。ごく少数が親元に帰ることが出来ることもあるが、それは「稀」という状態である。日本の障害児施策として、また児童福祉の観点から、この施設は相応だと考える向きもあるが、障害児に対して「家庭的な育ち」を提供しているとは言い難い。職員配置は基準に沿っているものの現実には、手厚いものとはいえず、職員の専門性の乏しさなど、重層的に問題を孕んでいる。また児童相談所も、入所させたはいいがそれ以降、入れっぱなしにするケースも少なくない。親との面会ができない、子のつなぎが難しい、理解もなかなか進まず、その中で漫然とこどもが成長していくといった状態もしばしばである。ほとんど、家族の再統合というのは非現実的なものになっていると感じる。障害者であれ、健常者であれ何人も結婚や出産の自由を保障されることは憲法において当然の権利と理解している。だがしかし、現実にはその生まれたこどもたちが一番苦労している事実を認識していただきたい。子どもの権利を保障されなくて、結婚、出産を問うことは全く本末転倒であるとここで質しておきたい。

以上


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