<2022/05/09>
日 時:2022年4月25日(月) 17時から18時まで
場 所:衆議院第1議員会館 地下1階「大会議室」
出席者:国会議員(代理含む)、ソーシャルケアサービス研究協議会関係団体、厚生労働省
1.開会
2.挨拶
田村憲久会長から、以下の通り挨拶がなされた。
児童福祉に関する議論のなかで、子ども家庭福祉の資格をどうするかが議論されてきた。国家資格化を強く主張する方々、一方で国家資格化しても虐待事案に十分対応できないのではないか、親と子どもの関係等、現場での能力を身につけなくてはならず、認定資格があるべきではないか、と主張する方々がいた。最終的には、認定資格によって、早急に能力のある方々を現場に配置したいとの思いで、法律改正に向かう議論となった経緯がある。まずは認定資格で対応しながら、それぞれどのような形がよいのか考えていく。今まで以上に、皆様方には養成校での研修等、児童福祉の分野にかかわっていただかなくてはならない。密に連携しながら、子どもの安心・安全、児童福祉の向上、子どもに限らず、皆様方の仕事のしやすい環境をつくることが我々の目標である。
3.団体より
『児童虐待におけるソーシャルワーカーの役割〜虐待発見から家庭復帰まで〜』
○子どもの虹情報研修センター センター長 川ア二三彦氏
児童福祉司の仕事について、事例を通じて報告がなされた。児童福祉司は子どもや保護者にとって利益になると考え、保護者と対立しながらも理解を得ようと取り組んでいること、大変な思いをしているが、長く続けていくことができれば醍醐味ともいえる貴重な仕事であることが述べられた。
○北里大学病院 医療ソーシャルワーカー 坪井ゆり氏
病院における児童虐待疑いのケース発見、医療ソーシャルワーカーの役割について、事例を通じて報告がなされた。出会う子どもたちの安全、幸せを守るためには、病院のみでは解決できず、支援機関につなぐことが重要な役割となっていること、医療ソーシャルワーカーは、地域のソーシャルワーカーと共通言語を用い、空白ができないよう連携をとっていることが述べられた。
4.役所より
○内閣官房内閣審議官 岸本武史氏
児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要について報告がなされた。ポイントは以下の通り。
1)子育て世帯に対する包括的な支援体制の強化に向けた「子ども家庭センター」の新設
子育て世代包括支援センターと子ども家庭総合支援拠点の一体化。
2)一時保護所及び児童相談所による処遇や支援の強化
一時保護所の設備・運営基準の策定、民間との協働による親子再統合の事業の実施、里親支援センターの児童福祉施設としての位置づけ。
3)社会養育経験者等に対する自立支援の強化
児童自立生活援助の年齢による一律の利用制限の弾力化。
4)児童の意見聴取等の仕組みの整備
入所措置や一時保護等の際、児童の意見を聴取することの法律上の明確化。
5)一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入
6)子ども家庭福祉の実務者の専門性の向上
実務経験者向けの認定資格の導入。取得状況等を勘案するとともに、業務内容や必要な専門的知識・技術、教育課程の明確化等の環境を整備しつつ、国家資格を含め施行後2年を目途として検討。
7)児童をわいせつ行為から守る環境整備
5.意見交換会
発言者:〇議員、●講師・SCSメンバー
<児童福祉司数、ケアについて>
〇一谷議員(維新):年間20万件の通報のうち、一時保護は2万7千件。@児童福祉司は足りているのか。人員不足によって対応が行き渡っていないのか。Aやるせない状況を児童福祉司が受けていかなくてはならず、その方々のケアも必要ではないか。
●川ア氏:@厚労省の努力により増員され体制整備は充実に向かっているが、件数が増加しており足りているかどうかは難しい問題。量と質を高めることが課題。A一時保護時の司法審査の導入といった制度改革は一つのサポートとなるが、保護者との対立の継続からバーンアウトする事例もあり、スーパーバイザーの存在、社会の理解が必要。
●坪井氏:病院では子どもの治療が主で、児童相談所でのストレスとは異なる印象。医療ソーシャルワーカーは、比較的保護者との対話が可能であり、関係者がかかわりやすくなるようつなぎ方を工夫できると考える。
<家庭へのかかわりについて>
〇遠藤議員(維新):児童福祉司が重要な役割と感じる一方、北海道の報道等を聞くなかで、どこまで家庭に入っていくことができるのか、実際の方法を紹介いただきたい。
●川ア氏:保護者の拒否がある場合、制度に基づき立入調査で入る。施錠により入れない場合も、家裁の許可による臨検・捜索がある。保護者との対立は避けられないが、子どもの保護の必要性に応じて、適切に制度活用しながら支援していく。
<データベース化について>
〇田村会長:様々な事例があるなかでデータベース化が必要ではないか。児相が関与した事例について、虐待が起こらなかった事例を含め、幅広く分析し類型化しないと難しいのではないか。虐待事案は、ソーシャルワーカーとしての能力だけでなく、親の思いや性格等、心理学を含む相当の能力が求められる。プレッシャーをある程度緩和するためにも、経験に代わるものを身につける必要があると思うが、考えを聞かせていただきたい。
●川ア氏:一部自治体でAI導入を始め、試行段階。それだけでは解決できず、個別的な対応は必要であり、児相と保護者との関係性も影響する。国の専門委員会において、深刻な事例から分析を行っている。基本は人間関係で、人格を使う業務でもあり、経験の蓄積は重要。新人がバーンアウトしないよう働き続けられるためにどうしていくか大きな課題である。
〇田村会長:虐待事案について適性性はあるか。
●川ア氏:一概には言えずなかなか難しい問題である。最後は子どもと家族のプラスになることを目指しており、スーパーバイザーがいて適切に対応できる職場体制がつくられることが重要。
〇田村会長:難しい案件は、親が嘘をつくであろう。それを見破らなくてはならないが。
●川ア氏:虐待事例はほぼ本当のことは話してもらえない。その中でどう事実を確認していくか、スーパーバイザーの研修でも検討している。
●坪井氏:大学病院の一部に部屋を用意したほうが良いほどに児相に駆けつけて対応していただいている。医療ソーシャルワーカーは通告して終わりでなく、先を見据えてつなぐことが必要である。
<国家資格化について>
〇一谷議員(維新):国家資格が必要という意見を先ほど笹岡氏から伺ったと思ったが、理由を教えてほしい。
●笹岡氏(SCS所属):そうではなく、私たちは国家資格を絶対に求めない立場です。制度改革のなかで、スーパーバイザーによってソーシャルワークを支えていく。親の嘘は誰にも見抜けない。見抜けていても相手は肯定しない。ソーシャルワーカーは心理学等を学び研修を継続して受けているが、駆け出しのソーシャルワーカーは、それでも及ばないということは、先生方のお力が必要。制度に位置づけていただくことによって、対応できるソーシャルワーカーが増えていく。
〇橋本事務局長:国家資格を求める立場の人もいる。我々は、社会福祉士・精神保健福祉士がいて、その上に子どもについてより深く学んでいただけるとよいのではないか、という立場がいる会である。
〇一谷議員(維新):賛成する。国家資格化すると分母が減るのではないか。
〇橋本事務局長:細分化することにどういう意味があるのか。私の考えで言えば、虐待の相手をするには、子どものことだけでなく家の中で抱えている問題そのものに対応する必要があり、子ども専門の資格化することには個人的に疑問を感じ、今のような取り組みをしている。
6.閉会の挨拶
橋本岳事務局長から、連休明けに国会審議があり、より良い制度、児童福祉、社会福祉をつくっていけるよう、引き続き協力いただきたい、との挨拶により閉会した。
(文責:ソーシャルケアサービス研究協議会)
地域共生社会推進に向けての福祉専門職支援議員連盟役員(敬称略)
顧問 | :尾辻秀久、福島みずほ |
会長 | :田村憲久 |
副会長 | :衛藤晟一、山本香苗、高橋千鶴子、古川元久 |
幹事長 | :阿部知子 |
幹事 | :東 徹、伊藤孝江、宮沢由佳 |
事務局長 | :橋本 岳 |
事務局次長 | :田畑裕明 |