<2021/12/24>
メディア連携委員 池沢 佳之(神奈川県支部)
「テレビの世界を知る」をテーマにしたセミナーが10月28日(木)夜、Zoomを利用したオンラインで開催されました。メディア連携委員会が企画・運営する2回目のセミナーで、今回も短期間の募集にもかかわらず、構成員約50人が参加しました。
講師は、毎日放送(MBS)報道情報局シニアプロデューサーの澤田隆三さん。澤田さんは入社後、報道部記者、ドキュメンタリー番組ディレクター、夕方ニュース番組編集長などを務め、奈良市の脳性マヒ夫婦の日常を描いたドキュメンタリー『映像’90ふつうのままで』(※)で1999年に国際エミー賞最優秀賞を受賞しました。
レクチャーは「放送局(テレビ局)のそもそもを知る」「報道番組と情報番組の違いを知る」「若者のテレビ離れとテレビ局の大人離れ」「放送の公共性はどこへ……」という順に進められました。全国放送とローカル放送、民放のネットワーク系列、報道番組と情報番組、それぞれの取材体制と制作の手順、さらにプロデューサー、ディレクター、構成作家、放送作家といった職種の役割についても説明がありました。
澤田さんが強調したのは「テレビを取り巻く環境が厳しい」「若者がテレビを見なくなった」という点。特に10代から30代の1日平均視聴時間が急激に減ったそうです。その一方で、視聴率調査が「世帯視聴率」から「個人視聴率」、さらに購買力のある年齢層に絞った「ターゲット視聴率」へとシフトしたことから、「テレビ局が若者にターゲットを絞った番組作りをしている。中高年は視野の外かも」と指摘しました。
テレビは身近なメディアです。しかし、知っているようで知らない内容がたくさんありました。ターゲットを絞った番組作りには、興味深さとともに怖さも感じました。若者に合わせた番組作りから、ニュースのワイドショー化も起きているようです。
放送の公共性や人権の関係では、BPO(放送倫理・番組向上機構)が苦情や問題の指摘を受け付け、勧告や見解の公表を行うことについても、解説がありました。個々の放送局だけでなく、BPOも私たちが意見を伝えるルートになるわけです。
レクチャー後の質疑では「薬物事件で白い粉や注射器の映像を使うのをやめられないか」という質問が出ました。澤田さんは「そういう映像がどんな影響を及ぼすのか、まだまだ認識されていない。勉強になった。テレビ業界全体に投げかけるなどして、番組作りの現場にわかってもらう必要がある」とコメントされました。
メディア連携委員会では、2022年2月26日(土)に、事件報道の在り方を中心にメディア関係者との意見交換会を開催する予定です。
(※)ドキュメンタリー『映像’90ふつうのままで』はこちら(MBSチャンネル)で視聴いただけます。