<2021/10/22>
メディア連携委員 杉山 詔二(千葉県支部)
9月27日(月)夜、初めてのメディア連携セミナーがZoomを利用したオンラインで開催されました。短期間の募集にもかかわらず、構成員40名が参加しました。
企画・運営にあたったメディア連携委員会は、報道機関との相互理解・協力やメディアの活用を図るため、今年度に新設された委員会です。
第1回セミナーのテーマは「メディア理解の基礎知識」。委員長の原昌平さんが講師として、新聞報道を中心に話しました。原さんは読売新聞大阪本社の社会部、科学部などで長年、記者として活躍し、1997年には大和川病院を含む大阪・安田病院グループの人権侵害、劣悪医療、巨額不正を暴きました。昨年6月まで当協会の相談役で、現在は「相談室ぱどる」を堺市で開業。認定NPO法人大阪精神医療人権センターの理事も務めています。
レクチャーは、マスメディアの役割、記事・紙面はどうやって作られるか、記者の仕事と価値観、新聞・報道の課題など、多岐にわたりました。当日の新聞紙面も示しながら「新聞各紙の形は似ているが、内容はずいぶん違う。きっちり読まなくても、興味を持った記事を読めばいい」「たまたま目にした情報も重要」と読み方を伝授しました。
原さんが強調したキーワードをいくつか拾うと、「報道の主な機能は社会事象の伝達と生活に役立つ情報の提供」「新聞は毎日、名誉棄損している。名誉を傷つけても違法ではないと法律的に解釈される場合がある」「記者はネタがほしい。できたら特ダネ」など。
紙面ができるプロセスについては「記者が書いた原稿がそのまま載るわけではない。デスクが手直しし、何人もの目を通る。紙面作りは、基本的には記者が集めた材料をもとにしたボトムアップ」とのこと。「たとえば社会部の捜査機関担当記者は連日、夜討ち朝駆け。相手が家に帰ってくるまで寒い夜に電柱の陰に身を潜めて1〜2時間待ったりする」「毎日毎日、他社との競争の結果が出る」と厳しい仕事ぶりを伝えました。
記者にとって最大の職業倫理は、情報提供者を守ること。「たとえ裁判所の命令でも情報源は明かさない。明かさないと民事、刑事で不利になる場合でも、明かさずに損害賠償、刑務所行きを覚悟する」と記者魂を解説。
「ジャーナリズムの使命は世の中を良くすること。とりわけ権力の監視と、弱い人々を助けることが大事だ」と、不正や人権侵害をただす役割を強調しました。
精神障害と事件報道に関しては、「客観的な事実を伝えるのが報道の基本。診断名、入通院歴は外形的には事実ではある」としたうえで、「たとえ事実でも、病気と障害と犯行の関係は簡単にはわからない。急いで伝えると、犯行と関係ないかもしれず、結果的に真実と違う報道になるおそれがある」と指摘。含蓄のある言葉が多く残りました。
この後、小グループに分かれて活発に意見交換を行い、質疑応答でも多くの質問を受けました。参加者アンケートでは、内容への関心、セミナーの満足度は高かったようです。
次回は、10月28日(木)に第2回セミナー「テレビの世界を知る」を予定しています。