お知らせ

<2021/01/05>

【報告】介護福祉士資格の社会的評価の定着に向けて第3回総会開催−地域共生社会推進に向けての福祉専門職支援議員連盟−

 ソーシャルケアサービス研究協議会(会長:白澤政和氏)が支援する、超党派の「地域共生社会推進に向けての福祉専門職支援議員連盟」(以下「福祉専門職支援議連」という。)(会長:田村憲久衆議院議員)は、地域共生社会を推進していく担い手として、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士(以下「福祉専門職」とする。)の人材を確保し、様々な領域で配置義務がなされ、かつ待遇をも含めた社会的な評価を高めていくことを課題にした議員連盟です。福祉専門職支援議連は、2020年12月2日に第3回総会が「介護福祉士資格の社会的評価」をテーマに開催され、約50名の国会議員及び秘書の方が出席しました。

 第3回総会は福祉専門職支援議連事務局長の橋本岳衆議院議員の進行のもと、最初に福祉専門職支援議連会長代行の衛藤晟一参議院議員から開会の挨拶がなされました。衛藤晟一会長代行は、冒頭に地域共生社会の実現のためには、福祉専門職が制度横断的な課題への対応や社会資源の開発などの役割を担うことが重要であり、その為に、それらを支援する福祉専門職支援議連の趣旨を改めて強調しました。また、今回は、ソーシャルケアサービス研究協議会構成団体や関係省庁から介護福祉士の社会的評価をテーマについて、要望などを聞き、意見交換をしたいと話されました。

 次に、配付資料にもとづき、公益社団法人日本介護福祉士会会長(以下「介士会」という。)の及川ゆりこ氏から、「介護福祉士資格の社会的評価の定着に向けた要望」と題し、介護福祉士の登録者数などの現状、介護福祉士の責務などを述べた上で、介護福祉士の制度上の位置づけが弱いこと、これを明確に位置づけることで、介護福祉士の資質の向上、定着の促進につながり、それらにより介護サービスの向上や国民の福祉の向上が実現できると述べました。そのうえで、社会保障審議会各種部会・委員会・分科会などの報告書や意見書などにふれ、それらには一定のキャリアを積んだ介護福祉士の必要性、人材の定着、資格の価値の向上、加算のあり方や人材育成の仕組みづくりなどの必要性が説かれており、介士会としてもキャリアモデル検討のための調査研究事業などに取り組んでいることを述べました。さらには、総務省「日本標準職業分類」に介護福祉士をはじめ福祉専門職が位置付けられていないことにふれたうえで、要望事項として、1)介護福祉士の制度的な位置づけと評価の明確化、2)各団体が行う現任研修と法定研修との読み替えの検討、B職業分類への福祉専門職の明確な位置づけの3点を要望しました。
 続いて、公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会(以下「介養協」という。)事務局長の山田洋輔氏から、「介護福祉士に関する要望事項」と題し、いわゆるコロナ感染症対策についての介護福祉士養成カリキュラムの充実、介護福祉士のさらなる格付けや資質向上の推進に向けての必置義務など含めた「1)介護福祉士の専門性向上について」と、介護福祉士養成施設の外国人留学生の増加や重要性が高くなっていることに鑑み、外国人留学生の円滑な受け入れの仕組みや日本語教育の充実などを含めた「2)外国人留学生の受け入れについて」の2点を要望しました。

 これら要望に対する現状の取り組みとして、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室長の川端裕之氏(以下「厚労省福祉人材確保対策室長」という。)より、介護人材確保などの取り組みとして養成施設卒業者への国家試験義務付けに係る経過措置の延長や介護福祉士の役割の明確化や資格の価値を高めるためのキャリアモデルの検討、いわゆるコロナ感染症なども含めた感染予防教育プログラム課題抽出のための研究事業への取り組み、外国人介護人材支援としての介護の日本語学習支援等事業、受け入れ施設等環境整備事業などが報告され、介護報酬改定については厚生労働省老健局総務課長の竹林悟史氏(以下「厚労省老健局総務課長」という。)より、令和3年度の介護報酬改定に向けた基本的視点として、感染症や災害への対応力強化や介護人材の確保、介護現場の革新などを据えているとし、具体的には消費税を財源とした介護職員の更なる処遇改善の取り組み、それらに係る処遇状況等調査、サービス提供体制強化加算の充実に向けた見直しの検討などが報告されました。続いて職業分類については、総務省政策統括官(統計基準担当)室・総計審査官室参事官の二橋宏樹氏(以下「総務省統計基準担当参事官」という。)より、日本標準職業分類の概要説明が述べられ、介護福祉士については、「Eサービス職業従事者」の「36介護サービス職業従事者」として位置付けられている旨報告され、国家資格で職業を分類し位置付けるには業務独占であれば明示することになっている旨報告され、今後については関係府省から要望があれば検討することになると述べられました。これについて、橋本岳事務局長より、日本標準職業分類には「B専門的・技術的職業従事者」に「16社会福祉専門職業従事者」が位置付けられているが、これと先ほどの介護福祉士の位置づけについて補足説明が求められ、これについては「16社会福祉専門職業従事者」とはケアマネなど相談援助などを行う職業を位置付けており、「36介護サービス職業従事者」については、施設等での介護や居宅等でのホームヘルプなどを位置付けている旨補足説明が述べられました。

 意見交換においては、後藤田正純衆議院議員より、外国人介護人材について、それら人材が都市に集中する点や、介護福祉士の処遇改善については、本日の報告にある取り組みとは別のキャリアライン制度に基づく取り組みとの整合性や一本化について、さらには介護福祉士の組織率についての質問がありました。続いて、安藤高夫衆議院議員より、タスクシェアリングが議論されている中で、地域共生社会や包括ケアの構築のためには一人で何役も担えるような仕組みづくりが必要ではないか、介護だけではなくある程度の医療や保育もできるというような仕組みが利用する高齢者のとっては良いのではないか、あるいはそのような議論をしているのか旨意見がありました。
 これらに対し、介士会の及川ゆりこ会長より、介護福祉士の組織率については約3%であること、キャリアラインについては業務の標準化が趣旨であり、介士会としては介護過程をしっかりと展開できるのが介護福祉士であるということで趣旨が異なると考えている旨回答がありました。また、介養協の山田洋輔事務局長より、外国人介護人材が都市での就職を希望する傾向はあり、各学校では地元での就職促進を行っている旨回答がありました。続いて、厚労省福祉人材確保対策室長より、外国人介護人材が都市に集中することについては、介護人材の人手不足は都市も地方も同様であり、地域医療介護総合確保基金を活用して各都道府県において外国人介護人材に対するマッチングの支援に取り組んでいると報告されました。日本人の人材においても福祉系高校の卒業者が地元に定着するための取り組みを概算要求している旨回答がありました。また、タスクシェアリングについては、福祉系の資格取得の際には、ダブル資格やトリプル資格取得促進のために重複する科目の免除などを行っており、また医療系の資格については研究事業を展開している旨回答がありました。厚生労働省老健局総務課長からは、キャリアライン制度については、介護分野の実践的職業能力のひとつの評価であり、現場で任意で取り組んでいるものであり、一方、特定処遇改善加算は、すべての事業所に対し統一的な仕組みを取り入れようとした際に、法律の基づく資格である介護福祉士であり、経験や技能の質ということで客観的に勤続10年以上という基準を設定した旨回答がありました。
 続いて、畦元将吾衆議院議員より、現在、いわゆるコロナ禍により学生がアルバイトできない状況であり、厳しい状況であるので、このような状況に対する具体的な支援について質問がありました。これに対し、厚労省福祉人材確保対策室長より、外国人留学生への財政的な支援は従来からの課題であり、地域医療介護総合確保基金を活用して奨学金をメニュー化しており、利用促進のためにPRをしている旨回答がありました。
 また、自見はな子参議院議員より、職業分類については介士会からの要望を実現してほしい旨発言がありました。また、介護福祉士資格取得の経過措置について団体としての考えはどうなのか、処遇改善のための介護報酬の要望は必要ないのか旨質問がありました。大串正樹衆議院議員からは、職業分類について、昭和35年の制定であり、今の時代にそぐわない考えに基づいており、職業は新しい価値を生み出すという現代的な趣旨での分類が必要と考えるが、分類の改定には時間や労力を要するのか旨質問がありました。福祉専門職支援議連事務局次長の田畑裕明衆議院議員からは、いわゆるコロナ感染拡大により、各国からの入国が制限される中で、来年の外国人の養成施設入学者数の激減について懸念があるが、介養協としてどのように捉えているのか考えを聞かせいただきたい旨質問がありました。
 これに対し、介養協の山田洋輔事務局長より、介護福祉士資格取得の経過措置を延長していただ
いた背景として外国人留学生の介護福祉士合格率は低いことがあるが、今後、資格取得の経過措置はないものと考えて、協会としても外国人留学生の合格率や質の向上等に取り組んでいきたい旨発言がありました。併せて、いわゆるコロナ感染拡大により入国が制限されるなかでの、外国人入学者数などのへの懸念については、介護福祉士養成施設への入学者は、日本にある日本語学校からの入学者が多く占めており、日本語学校での在籍の期間は約1年半の者が多いと想定しており、そのような意味では、来年の4月に影響がでるものの、問題は再来年の4月に更に大きな影響が出ると考えており、それについては協会内で検討していく旨回答がありました。また、介士会の及川ゆりこ会長より、介護現場では、辞める人がいる一方で、介護の仕事を始める人は少なく、また、休暇等もなかなか十分に取れない現状であり、ワークライフバランスをさらにしっかりと考えていきたい旨回答があり、処遇改善のための介護報酬の要望については、常に要望している旨回答があり、さらなる支援をお願いしたい旨発言がありました。また、介護福祉士は常に研鑽する義務があるが、なかなか研修に参加できない、オンラインも環境が整っていない現状があり、今後もさらに取り組んでいきたい旨述べられました。さらには介護福祉士の必置義務についても検討してほしい旨述べられました。
 職業分類については、総務省統計基準担当参事官より、分類の直近の改正は平成21年に行われており、その際に「Eサービス職業従事者」の「36介護サービス職業従事者」を位置付けたところである旨回答がありました。分類の改定については10年スパンで行われており、そのスパンとその際の社会経済情勢に併せて改定している旨回答がありました。また、改定に際しても有識者の意見を仰ぎ、あるいは労働行政と積極的に意見交換をしながら改定を行っている旨回答がありました。また、介士会からの要望についてはしっかり受け止めるが、分類上、資格と職業が1対1であることが望ましいという考え方であり、慎重な検討が必要であると考えている旨回答がありました。

 活発な意見交換がなされていましたが終了時間が近づいたため区切りをつけて、最後に福祉専門職支援議連顧問の福島みずほ参議院議員より、活発な議論が展開され奥が深い課題であった旨挨拶をいただきました。今日の要望をしっかりと受け止め、待遇改善、地位の向上などの実現のために、この超党派の福祉専門職支援議連としても取り組んでいきたい旨挨拶があり締めくくられました。

(文責:ソーシャルケアサービス研究協議会)

最終更新日:2021年1月8日


地域共生社会推進に向けての福祉専門職支援議員連盟役員(敬称略)

顧問 :尾辻秀久、福島みずほ
会長 :田村憲久
副会長 :衛藤晟一、高木美智代、高橋千鶴子、古川元久
幹事長 :阿部知子
幹事 :東 徹、伊藤孝江、宮沢由佳
事務局長 :橋本 岳
事務局次長 :田畑裕明

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