<2019/09/26>
2019年8月29日(木)、TKPガーデンシティ栄駅前(愛知県名古屋市)にて、本協会設立55周年記念企画として、アンナ・シャヤット博士(ジョージア大学スクール・オブ・ソーシャルワーク学部長兼教授)をお招きした公開講座「What is social workers?」を開催しました。ここでは、企画者からの報告記事を掲載します。
満席の会場 | アンナ・シャヤット博士による講演 | フロアとの質疑応答 | 質疑内容を確認している様子(右:水藤昌彦教授) |
理事 山田真紀子
大阪府地域生活定着支援センター(大阪府)
昨年の12月頃、当日逐次通訳を担ってくださった水藤昌彦教授(山口県立大学)と別件でお会いしていた時に、アンナ・シャヤット博士(以下、アンナさん)のTEDプレゼンテーション“Social workers as Super Heroes”のYoutubeを見せていただき、衝撃を受けたことを覚えています。「ソーシャルワーカー(以下、SWer)ってこんなにかっこよかったっけ!?」と同じ職種であることが恥ずかしくなるぐらい、堂々と仕事内容を語っているアンナさんに見入ってしまい、ぜひこの方のお話しを本協会構成員にも共有していただきたいと思い、柏木会長にご相談させていただいたのがきっかけでした。また今回は、藤原正範教授(鈴鹿医療大学)が会長をつとめる日本司法福祉学会の基調講演で日本にお招きするタイミングに合わせて設定することも条件だったため、同時期に本協会の第55回全国大会・第18回学術集会の開催に合わせた企画が叶う運びとなりました。
企画が決まってからというもの、海外から講師をお招きした経験のない私は、宿泊、滞在期間中のアンナさんのスケジュール、食事、それにまつわる税金、さらには英語!?という難題が重なり、抜けがないかドキドキしながらあらゆる方々に調整いただき、なんとか講演前日を迎えることができました。講演前日はアンナさんが数日前から大阪に滞在し、大阪医療刑務所や浅香山病院を見学していたこともあり、更生保護施設「和衷会」を見学していただきました。本協会の司法精神保健福祉委員会のオブザーバーである安田准教授(國學院大學)に通訳をお願いし、施設内の見学、成り立ち、日本での更生保護施設の役割などを説明していただきました。100年続く歴史ある日本で最大規模の更生保護施設であり、各種プログラム(酒害教育、薬物防止など)の実施や、協力雇用主(出所者の雇用受け入れ)との連携、また最近では高齢者や障害者の受入も増え、困難な支援が増えている実情など、アメリカと比較しながら興味深く聞き入ってくださっていました。
当日は200名弱の参加者で会場は埋め尽くされ、一般市民から本協会構成員まで全国各地の方々の興味関心がうかがえました。講演内容は、基本的なソーシャルワークの定義、価値、原則、理論的な枠組みから、社会的課題への取り組み、役割などであり、中でも新たなニーズのある領域の紹介として、図書館や不動産会社でのSWerの活躍が説明されていました。個別支援はもちろんのこと、コミュニティそのものを変化させていくことが重要であり、本来、SWerが解決すべき課題はあらゆる生活場面にあり、問題認識がない人こそ、私たちが現場に出向いていき、環境を改善していくような予防的視点も持ち合わせていく必要があると思いました。また、“クライアントをエンパワメントする”という言葉を当たり前に使っていましたが、その言葉そのものが支援者との上下関係をつくり、あたかも支援者が主導的にクライアントのチカラをつけるような印象を与えがちですが、本来はクライアントが自らエンパワメントできるような環境や状況をつくることが私たちに求められていると教えられました。
私が感動したアンナさんのプレゼンテーションは、実はおばあさんにSWerの仕事を説明するコンセプトで作られたそうです。どおりで、わかりやすい!実はとてもシンプルで、生活者に密着した、誰もが気軽に相談できる存在であることこそ目指すべきSW像であるこということなのです。研修の最後には、“A world where social work is no longer necessary ”(ソーシャルワークがもはや必要とされない世界)、SWerとしては存在意義を主張することは実はナンセンスであり、自然とSWerがフェードアウトする社会こそ、私たちが目指すことだとメッセージをいただきました。ご協力いただきました皆様、心から感謝いたします。アンナさん、大きな学びを与えてくださり本当にありがとうございました。Big thank you!
※アンナ・シャヤット博士の講演動画を近日中にYoutubeの本協会公式チャンネルにアップロードする予定です。