<2008/07/02>
※宮城県の岡ア支部長(本協会理事)から本協会に送信いただいたメール(7月2日、16時23分)を掲載いたします。本報告は、仙台市精神保健福祉総合センターの平泉武志さん(本協会構成員)から岡崎さんにご報告いただいた内容について、ご本人の了解を得て掲載しているものです。
また、岡崎支部長からは、宮城県精神保健福祉センター(二階堂次長)より、栗原市との打合せ(6月30日)で心のケアチームの派遣は7月1日をもって終了となったことの連絡を受けて、宮城県精神保健福祉士協会としても7月2日以降の体制を解除した旨をお知らせいただきました。
岩手・宮城内陸地震 心のケアチームボランティアについて(2008年6月30日)
派遣日:2008年6月30日(月)
実施時間:8時30分〜18時10分
活動場所:宮城県精神保健福祉センター、栗原市花山地区避難所(石楠花センター)、栗原市栗駒支所および栗駒地区避難所(伝創館)
チーム編成:精神科医、保健師、臨床心理士、精神保健福祉士(筆者)、県センター作業療法士の5人
【8:30〜9:00】
○県精神保健福祉センターにて打ち合せ。以下を確認。
・先週までは2チーム体制だったが、本日より1チームに縮小。
・午前は旧花山村の「石楠花センター」避難所で、午後は旧栗駒町の「伝創館」避難所で活動する。
・現在、避難所のニーズはどちらも少なくなっている。むしろ保健師の要請に応える形になろう。在宅者で保健師が気にしているケースもあるため、次第に地域へのアウトリーチの要請へと移行すると思われる。
・マスコミは減ったがまだだいぶいる。身分を名乗らず世間話をしながら近づいてくるなど、気づかぬうちに巧みに取材されてしまうことがあるので、注意が必要。栗原市では避難所の取材は一切断っているので、同じ対応をすること。
・現地の支援従事者のメンタルヘルス対策については、どう着手していいのかまだ不明。現地スタッフとしても、まず何より帰って寝たいという状況。
〔石楠花センターの状況〕
・支援予定ケースは現段階では無し。現地保健師と打ち合わせのうえ、支援ケースが出れば対応する。避難所内での面接希望は殆ど無い。
・個別訪問については、医師と保健師+1人で対応することになろう。他は避難所の中で待機して対応する形になる。日中は、一時帰宅や仕事などでかなりの人が出ている。100人規模の避難所だが、日中人数は大部屋に約20人、小部屋に5〜6人といったところか。昨日は結婚式(※新聞報道あり)、その前は葬式があるなど、地域の基本的な行事は行われている。よって、日中残っているのはほとんどが高齢者のみ。自分で相談を求めることは殆ど無い。声をかけていいかどうか、場の空気を読みながら対応すべき。
〔伝創館の状況〕
・支援予定ケースは現段階では無し。現地保健師と打ち合わせのうえ活動する。日中残っている人たちの状況は石楠花センターと概ね同様。石楠花センターが山の方にあるのに対し、ここは麓の方であり、日中動いている人は石楠花センターよりも多い。また、大部屋ではなく小さい部屋に分散しているので、巡回しづらいかもしれない。
・昨日あたりから15時くらいにはチームを引き上げている。それまでは定時の16時半まで居たが、こころのケアチームが残っているとかえって現地スタッフが気にしてしまい、負担になっているため、早めに切り上げることとした。本日もそうなるだろう。
【9:00〜10:00】
○車で石楠花センターへ移動。
・山道では道路が陥没している箇所がいくつかみられた。民家に時折ブルーシートがかかっており、災害の爪跡を感じさせた。
【10:00〜12:40】
○花山地区石楠花センターへ到着(避難者数109人)
※入り口に10人ほどのマスコミがテレビカメラを向けており、騒々しい雰囲気。敷地内に自衛隊の災害救援車両が出入りし、時折ヘリコプターの音が聞こえる。館内には各種災害情報が雑多に掲示され(その中に「心の相談窓口」の案内もあり)、被災状況を伝える写真、各地からの激励文が掲示され、様々な意味で非日常的な雰囲気があった。
○現地保健師との打ち合わせ及び保健師へのスーパービジョン
・本日の相談ケースは今のところ無し。配慮が必要と思われる7ケースについて保健師より報告があり、スーパービジョンを行った。
・本日の一時帰宅が昨日の雨の影響で中止となり、加えて小学校が学校行事の振替休日であり、いつもよりも人が多い。
・今朝救急車で運ばれた人がおり、避難者が動揺しているかもしれない。エコノミークラス症候群の報道もあったため、より不安が大きくなっている可能性もある。
・この救急車の件に加え、本日は大量の布団の一斉乾燥、散髪ボランティアなどがあり、これらをマスコミが狙っている。
※保健師より、職員派遣の日程表を教えて欲しいとの依頼あり。今週の派遣予定が伝わっていなかったらしい。せめて医師が来るか否かだけでもわかるとありがたいとのこと。
○避難所内巡回(状況・健康チェック)
○所定の部屋で相談窓口要員として待機
・避難所内の巡回を何度か実施。大部屋は避難者同士の話し合いの輪がいくつも出来ており、巡回はかえって不自然となる雰囲気もあったため、それとなく様子をみるなど慎重に実施した。輪に混ざらず一人でいる人もいたが、新聞を読むなど自分自身の時間を過ごしていた様子。小部屋では休んでいる人が多かった。
・来室相談ケースは0人。
【12:40〜13:15】
車で伝創館へ移動
【13:15〜16:40】
○伝創館へ到着。(避難者数約30人、ほとんどが耕英地区住民)
・到着段階では相談ケースは無し。
・こころの相談窓口開設の掲示あり。
○栗駒支所の関与困難ケースについて相談があり、医師と保健師が支所にて打ち合わせ。
・本ケースについては現地スタッフでフォローとの結論となる。
・その他配慮を要するケースも含めて計7名のスーパービジョンを実施。
○避難所巡回(状況・健康チェック)。
・避難者はほとんど各自小部屋にて休んでいる状況。慎重に様子をみる。
○現地保健師を通じての来室相談依頼が1人あり、面接相談を実施。
・事後にチーム全員でカンファレンス。見立てと今後のかかわりについて討議。
→現地保健師のフォローを継続予定。
【16:40〜17:40】
精神保健福祉センターへ車で戻る。
【17:40〜18:10】
精神保健福祉センター内にてミーティング。本日の活動報告。
【18:10】
活動終了。
〔全体を通じての所感〕
・大都市部と比較して、現地保健師の地域に密着した活動が有効に機能していた。このような現地保健師の活動をフォローしていく体制が、地域の特性上とても重要と思われる。
・避難者同士の自助の輪が全体的に機能している印象。避難所において外部の者が巡回支援することがややもすると大きな違和感を生む感がある。このことからも現地保健師等の活動との有効な連携が重要。
・現地職員の疲れが気になるところ。組織的対応が未実施であり、今後の課題になると思われる。
・災害により新たにこころの問題が発生するというよりも、元々何らかの問題を秘めていたケースが災害ストレスにより表面化してくるという印象があった。
・一部に情報の行き違いや誤り等があり、情報をコーディネートする重要性を感じた。
・急性期ニーズは収束しつつある印象。今後、中長期的なニーズへのフォロー体制に移行すると思われる。相談窓口の存在を避難所等でPRしてきたが、今後も相談窓口の設置およびPRを何らかの形で継続し、必要な人が相談にアクセスしやすい環境をつくることが必要。
(報告者:平泉武志さん/本協会構成員、仙台市精神保健福祉総合センター)