お知らせ

<2007/08/10>

【新潟県中越沖地震】現地視察報告

■視察概要  ■視察経過  ■新潟県精神保健福祉士協会会長(岡部正文氏)との話し合いから  ■考察


■視察概要

[視察者] 酒井昭平(新潟県支部、災害支援検討委員会委員)、廣江 仁(常任理事・総務部長、災害支援検討委員会担当理事)
[日 時] 2007年8月2日(木) 9時〜16時
[場 所] 茨内地域生活支援センター(柏崎市内)および柏崎市内、刈羽村内、出雲崎町、長岡市和島地区
[会 合] 新潟県精神保健福祉士協会会長(岡部正文氏)と、地震発生からの経過報告及び意見交換

■視察経過

8月1日(水) 23時30分 上越新幹線にて浦佐駅着、酒井氏と合流。酒井氏宅(魚沼市須原)に宿泊
8月2日(木) 07時20分 酒井氏宅出発
09時10分 茨内地域生活支援センター(以下茨内センター)着。岡部氏と挨拶のあと、市内視察(市役所、避難所、西本町付近)
10時40分 茨内センターにもどり、岡部氏と話し合い
13時10分 茨内センター出発、市内で昼食
14時00分 刈羽村到着。避難所、ボランティアセンター視察
15時00分 出雲崎町を経由し、長岡市和島付近視察後、帰途へ
19時00分 越後湯沢駅から新幹線にて東京へ

■新潟県精神保健福祉士協会会長(岡部正文氏)との話し合いから

[地震発生からの岡部氏活動経過]

7月16日(月) 地震発生後、センター職員4人にて、センター内・敷地の点検、片付け、避難所回り等を開始
7月17日(火) 柏崎厚生病院と合同で在宅の方の安否確認。入院及び入所(援護寮、老健)30人。新規の方も含まれる。新潟県(以下「県」)より、「こころのケアチーム」の拠点を打診され、受諾。「こころのケアチーム」は県内の人材(DR、PSW、NS、CPの4人)で構成
7月18日(水) 県より、障害者相談支援(3障害)の拠点を打診され、受諾。支援は8人体制を組み、県が県内相談支援事業の従事者に要請し、構成。ただし、身体・知的の活動は市役所をベースとした。二つの活動は2階のスタッフルームに設置し、1階の憩いスペースに「こころのケアチーム」の休憩所を作った。また効率的に両事業を進めるため、組織図(関係機関相関図)と基本ルールを作成。関係機関に説明
7月19日(木) 「こころのケアチーム」活動開始。障害者相談支援は、身体・知的障害者手帳所持者の安否確認開始。確認作業は、まず電話で確認。確認不可なら、避難所で確認(避難所には、避難者の氏名が張り出されている)。それでも確認できなければ、自宅へ行って確認という手順で実施。
7月20日(金) 県に対し、障害者相談支援にマンパワー補充要請。同時に新潟県精神保健福祉士協会(以下「県協会」)が協力可能であることを伝える
7月21日(土) 県協会臨時理事会にて、協力体制をとること決定。会員にFAXで協力要請と協力についてのアンケートを送信
7月22日(日) 柏崎市から精神保健福祉手帳所持者(320人)の確認依頼、受諾
7月23日(月) 安否確認の1次スクリーニング終了。2人の応援を受け、すべてのデータをPCに入力し、データベース(氏名、連絡先、今どこにいるか、自宅の状況、通院先、利用サービス、支援責任者名)作成にとりかかる
7月24日(火) 1次スクリーニングで上がってきた要支援ケースの2次スクリーニング開始
7月28日(土) 障害者データベース完成。これにより、各避難所等からの情報や問い合わせに迅速に答えることが可能となる
8月2日(木) 県より県協会宛に、長岡市和島地区を全戸訪問する際の協力要請が入る(この情報を受け、和島地区視察を行った)

[各種情報]

社会資源の物的被害については、精神障害では、二つあるグループホームのうち一つは大丈夫だったが、もう一つはダメージ大きく、修繕が必要だが、業者が間に合わない状態。援護寮に避難していたグループホームの入居者は、帰れる人はそろそろ帰す方向。知的障害のグループホームはダメージが大きい
地震後に入院等された30人は、1週間過ぎてから徐々に自宅に戻り始めている
県から二つの拠点を依頼されたのは、自立支援法の事業(退院促進、発達障害支援) を受けていた実績、保健所PSWとの関係、県担当者との日頃の関係などによる。自立支援法で行政の担当課が3障害一緒だったため、人集めがスムースだった
精神障害者で何らかの支援が必要と判断された人は200人。日に1〜2人は新規で精神科ニーズある人がでている
茨内センターの活動を県協会、旧社会復帰施設関係者が支援する形になっている
8月6日(月)に関係機関で集まり、今後日常にどのように戻していくか、またそれに伴うマンパワーの調整などを話し合う
茨内センターの通常業務は2割程度しか行えない。憩いのスペースはオープンさせたが、最近まで水もでなかったので、不便で来る人も少なかった。訪問を通常は50件行っていたが、今までの頻度での訪問は難しくなっている
県協会協力アンケート集計の結果、協力可能な会員が80人集まる。県からは文書にて、派遣要請届く。障害者相談支援に8月4日(土)から誰が、いつ入れるのかをリストにして県に渡し、その中から県が人選することになる(実質は県協会でメンバー構成を考えて人選している)。3人/日を予定。お盆にかけて、今まで入っている人を休ませる意味もある。「こころのケアチーム」への県協会からの派遣協力も打診したが、今のところ県から要請はない
今後については、仮設住宅への入居が開始する8月中旬には終息に向かうのでは(岡部氏見解)

[前回の中越地震の際の協会からの義援金について]

200万円ほど、残っている。その使途について、県協会内でも検討している

■考察

 街を見た印象では、能登と同じく古い建物が壊れており、新しい建物は比較的被害が少ない印象を受けた。ただ、戸数が多いこともあるが、能登に較べると被害を受けている家は多いように感じた。

 県との交渉や災害支援のコーディネートなど、今回の地震での精神保健福祉及び障害者相談への支援は、日常の地域活動、保健所、市役所等との連携、または岡部氏のアイデアや行動力によるところが大きい。また県PSW協会の協力についても、岡部氏自らが会長ということもあり、県と直接交渉できたことが、迅速で身の丈にあった支援活動につながったと思われる。

 また柏崎市では、人口や面積の規模に対して、社会資源やPSWの数が多く(主に柏崎厚生病院及び系列施設)、それもマンパワーの確保や迅速な対応につながったという背景もある。

 なにより、普段の実践の中で、どれだけ行政や地域と関係を持っておくことが大切なのかが、改めて確認できた。

 この中越沖地震において、日本精神保健福祉士協会のできる協力は、新潟県協会主催の災害支援に向かう会員向け研修会への講師派遣、義援金の呼びかけとなろう。あとは新たに新潟県協会から要望があれば、できるかぎり支援を行うという姿勢を新潟県協会に伝えつつ、全国の都道府県協会には情報提供などによって、興味を持ってもらうような呼びかけを続けるべきであろう。

以上(報告者:廣江 仁)


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