お知らせ

<2007/04/12>

【能登半島地震】石川県能登半島地震視察報告書

【報 告 日】2007年4月10日(火)
【報 告 者】廣江 仁(常任理事/総務部長)、酒井昭平(新潟県支部)
【視察用件】能登半島地震における被災状況、支援状況の把握
【視察期間】2007年4月1日(日)〜3日(火)
【視 察 先】輪島市門前町および周辺地域
【視察内容】石川県こころのケアチームに同行し、被災地の状況および門前町を拠点としたこころのケア活動の視察


石川県能登半島地震視察報告書(※1)

1.視察行程について

【4月1日(日)】
[18時40分]
 研修委員会に参加していた石川県支部(※2)の岩尾貴氏と羽田空港で合流し、空路金沢へ。
[21時45分〜23時]
 すでに同日午後電車で金沢に入り、七尾市を視察および情報収集(こころのケアチーム第一班の精神保健福祉士より)してきた酒井氏とホテルにて合流。岩尾氏から、現地の状況などについて説明を受け、日程等の確認を行う。<宿泊:金沢APAホテル>

【4月2日(月)】
[7時50分]
 ホテル出発。駅前でレンタカーを借り、石川県立高松病院へ向かう。
[9時50分]
 石川県立高松病院着。相談室にて、石井氏、岩尾貴氏、山川氏と会い、情報提供を受ける。
[10時35分]
 現地に向け出発。医師1人、山川氏、石川県精神保健福祉士会(以下「石川県士会」という。)派遣の精神保健福祉士3人(民間病院および施設所属)で構成された石川県こころのケアチーム第3班に同行する。
[12時10分]
 こころのケア救護所の置かれた輪島市門前保健センターに到着。石川県こころのケアセンター(石川県精神保健福祉センター)の精神保健福祉士(荒田氏)、能登北部保健センターの川本氏が全体の把握、各班への引き継ぎなどを担当。第2班は石川県立高松病院の医師1人、精神保健福祉士(島田氏)、石川県士会派遣の精神保健福祉士3人。早速、第2班から申し送りを受け、昼食。第2班は帰途へ。
[13時30分]
 酒井、公立能登総合病院から来ている医師に同行し、同日より14時から16時まで開設されるこころのケア相談のため輪島の避難所へ。しかし、避難所に連絡が届いておらず、避難している高齢者から話を伺う。
[14時30分]
 廣江、医師および精神保健福祉士2人に同行し、避難所になっている公民館へ。16時からこころのケアについて話してほしいという地元保健師からの依頼があって向かったが、避難所に入っている医療チームは把握しておらず、問題のある方がいないかの確認をして引き上げる。
[15時]
 知的障害者入所施設を訪問。地震後に変調のある方がいないか確認。グループホーム入所者に不安の強い方がいて現在施設に戻ってきているが、集団に入れば落ち着いているとのこと。
[15時45分]
 特別養護老人ホーム訪問。80人の入所者が8ユニットに別れて生活しており、施設職員同行でひとつひとつ回り、入所者に変調がないか職員に確認。不眠の訴えのある方2名から話を聞くが、地震前からあったなど他の要因によるものであった。建物自体が新しく非常に頑丈な作りになっており、まったく被害がなかったため、今までどおりの生活を送っている様子。
[17時00分]
 輪島市門前総合支所にて医療関係チームの全体ミーティングに参加。現地医師会長が進行役。各避難所には行っている医療チームから状況報告のあと、心のケアチーム、栄養士チーム、ヘルパーチームから活動報告。発熱、嘔吐、下痢の方が増えているとの報告あり。
[18時25分]
 こころのケア救護所にもどり、こころのケアチームでミーティング。本日の活動内容報告と今後の活動について検討を行う。夕食。<宿泊:門前保健センター2階こころのケア救護所>

【4月3日(火)】
[9時00分]
 輪島市門前総合支所にて医療チームの全体ミーティングに参加。各避難所の様子、各チームの夜間の活動内容を報告。避難所で下痢や嘔吐している高齢者にノロウィルスの疑いあるため検査していると保健センターより報告。
[10時00分]
 救護所に戻り、石川県こころのケアチームでミーティング。3月31日〜4月2日まで新潟県の先遣隊で来ていたチーム(臨床心理士2人、精神保健福祉士1人、事務?1人)が、そのまま滞在期間延長し、再開した保育園の子どものケアなどにあたることになる。
[11時00分]
 こころのケア救護所を出発。穴水方面を視察しながら、金沢へ。

2.視察期間の現地の状況について

[輪島市人口]34,000人(65才以上人口35%)
[避難所]輪島市、穴水町、志賀町、七尾市に合計34か所
[避難市民]<4/1>1,000人→<4/3>800人へ減少(<4/5>400人)
[精神障害者社会資源]輪島(旧輪島市)に作業所が1か所(被害なく活動)、穴水に支援センター1か所(七尾松原病院がクリニックとともに昨年設立)。
[精神科医療機関]石川県立高松病院、公立能登総合病院、七尾松原病院、穴水こころのクリニック、大和医院(門前)
[保健所]能登北部保健センター(輪島)、能登中部保健センター(七尾)
[派遣医療チーム]<4月3日現在>日赤愛知(名古屋第2)、日赤福井、金沢医科大、新潟保健師、福井保健師、日本看護協会看護師、県栄養士会
[精神科医療チーム]<地震発生から4月3日まで>石川県(県立高松病院、石川県士会)、全国精神障害者社会復帰施設協会石川支部、石川県精神科病院協会)、静岡県、兵庫県(先遣隊)、新潟県(児童)
[被災地(家屋損壊地域)]輪島市門前町、鳳珠郡穴水町、羽咋郡志賀町
[地震による被害]電気はすぐに復旧、寸断され通行止めになっている道路が少なく、鉄道は確保されている。山地の被害が少なく、通信手段も確保されているなど、家屋の損壊以外の被害が少ない。水道は一部地域を除き、一週間でほぼ復旧している。ガスは都市ガスでなくプロパンガスのため、大きな影響はない。

3.こころのケアチーム活動内容について

・地震発生から1週間で、各避難所を3度巡回。不眠のため数名に眠剤処方(精神障害のある方は地元保健師がかなり把握しており、自宅および避難所においてコンタクトをとり、病状の悪化がみられないことが確認されている)。
・障害者施設、高齢者施設等の巡回。
・地元保健師からの情報で必要に応じ、避難所訪問。
・避難所において、こころのケアについて講演。
・輪島ふれあいセンターにて14時〜16時、こころのケア相談実施。
・被災者向け広報誌に挟み込みでこころのケアについてのチラシ配布
・電話相談
※石川県こころのケアチーム構成メンバー:石川県こころの健康センター(医師1人、精神保健福祉士1人、保健師1人、事務1人)、石川県立高松病院(医師1人、精神保健福祉士1人)、石川県士会(精神保健福祉士3人)

4.今後の活動への日本協会の協力について(廣江、酒井、山川氏で検討)

[こころのケアチーム]
 当面、石川県こころのケアチームは県立県立高松病院スタッフ+石川県士会の精神保健福祉士を中心に構成。他県からの派遣は当面必要のない見通しで、日本精神保健福祉士協会(以下「日本協会」という。)からの人的支援の必要性低い。もし、石川県で人材不足となったら、日本協会を通じて近隣県に協力を仰ぐ。
[情報発信]
 被災地での支援状況について全国の構成員に対し、日本協会から情報を発信。特に今回は、こころのケアについて石川県の精神保健福祉士が翌日には現地入りし、早期の活動を開始。さらに、石川県こころのケアチームのメンバーは医者に加え、精神保健福祉士の構成割合が高く、石川県からの要請で石川県士会が調整した精神保健福祉士が加わっていることは特筆すべき。また地震発生1週間後に、石川県士会からの要請で日本協会の先遣隊が入ったことも今までの震災ではなかった点。
[経済支援]
 義援金による経済的支援が必要。石川県士会の精神保健福祉士派遣にかかる費用や報告集作成費用などが必要となる。また震災後に必要となる事業実施のためにも経済的支援が必要。

■所 感

・まず、地震発生直後に石川県こころのケアチーム受け入れ体制づくりのために現地入りした荒田氏(石川県こころの健康センター精神保健福祉士)、および石川県こころのケアチーム支援をいち早く石川県士会へ投げかけ、早期に石川県士会の精神保健福祉士について派遣調整を行った岩尾貴氏、さらには呼びかけに応じ、地震発生3日後にはこころのケアチームの一員として加わった石川県士会の精神保健福祉士の非常時における迅速かつ適切な対処行動は高く評価したい。

・阪神・淡路大震災や新潟県中越地震との違いは、建物の損壊等はあるものの死者1人だけだった点である。そのせいか、ストレス障害を呈するほどのトラウマとならなかったと思われる。1か月後にPTSDと診断される方は少ないと予想される。

・被災者の多くが高齢者であり、仕事や家の片付けなどできず、昼間も避難所で寝ている方も多い。避難所生活によるストレスは大きいと思われる。避難所で感染症による下痢・嘔吐などの症状を訴える方も増えており、衛生状態および栄養状態が心配される。避難所生活、仮設住宅での生活が長期となる方への丁寧な支援が求められる。

・子供が少ない地域ではあるが、ストレス反応を見せている子供もいるらしいので、子供への支援は継続して行う必要がある。

・倒壊した家屋は古い建物であったように見受けられた。比較的新しい家屋はまったく被害がないか、軽微な被害で済んでいるようであった。住宅再建への支援策を行政がいち早く打ち出したことは歓迎されるが、金額的に一軒家を建てるのは無理であるし、高齢者が新築の家を建てる希望をされるか疑問である。何らかの対策が必要と感じる。

・長期的には被災者の生活再建に関わる経済的・心理的問題、こころのケア問題が継続していくものと思われ、何らかの支援が必要である。石川県士会による活動を日本協会がどう支えるか、今後も連絡を取り合う必要がある。

・もともと社会資源の少ない地域であり、今後これを機に地域のメンタルヘルスを担う取り組みが実施されることを期待したい。

・今回、新潟県同様、近隣の顔のわかる地域での震災ということで、所在確認がとりやすかった点で、都市型震災との大きな違いを改めて感じた。それぞれのタイプの震災について、日本協会としてどのような支援のあり方があるのか、また常日頃どのような準備体制が必要なのかが今後の検討課題である。

(※1)事務局にて一部文言の整理等を行っています。
(※2)石川県支部は石川県精神保健福祉士会に担っていただいています。


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