「地域精神保健福祉委員会で考えるPSWの視点」

・クライエントとの関わりを通して広がる視点
・ケースワークにおける関係の時系列変化
・PSWのスタンスからみた視点の比較
・コミュニティーワーク実践におけるPSWの視野


図1:クライエントとの関わりを通して広がる視点
図1

 上記の図は、PSWがクライエントと同じ目線に立ちながら、クライエントの周りに広がる資源や地域を見据えていくという視点が重要であるということを表している。PSWは一人のクライエントに関わりながら、時間的経過や、信頼関係の深まり、表出するニーズの受け取り、クライエントの生活圏域、地域の社会資源の質や量などの要因から視点が広がっていく。

【 人 】
 左の人は所属機関等を通して関わりを持つクライエント、右はPSW。

【 円 】
 クライエントの立っている足元から広がる円は、クライエントを取り巻く人、精神保健分野における社会資源、地域社会にある社会資源をイメージしている。

【 点線 】
 PSWから横に伸びる点線はクライエントと関わるケースワークの視点を現わし、クライエントを生活者と捉え同じ目線に立ち、関わっている。
 また、PSWから下方向に伸びる点線は地域をアセスメントする視点の広がりを示し、PSWがクライエントと関わることによってできる信頼関係の深さや関わりが大きくなるにつれ、クライエントを取り巻く状況が幅広く見えている。


図2:時系列変化を加味したPSWの視点
図2

ケースワークにおける関係の時系列変化

【A 軸】
 クライエントとPSWの継続的なかかわり。表出されるニーズに対して両者は課題を共有、解決に向けた協同の取り組みが行なわれる。この一連の経過の中で信頼関係は徐々に深まりをみせる。

【B 軸】
 A軸が進行するに連れ、クライエントの生活における様々な側面が明らかとなる。PSWはクライエントの生活を幅広く見渡し、全体的な把握が可能となる。

【C 軸】
 B軸の拡大により、個々に必要とされる社会資源やサービスが明らかとなる。それに伴いPSWも地域を幅広く見渡す必要性が生じ、地域全体で求められる社会資源も明らかとなる。

地域社会全体の時系列変化
 それぞれの地域にはその地域に固有の歴史がある。精神保健福祉に関する社会資源も次第に増えたりして変化していく。PSWは、地域における資源の増減を過去から現在、現在から未来へと続く流れの中でとらえていくという視点を持たねばならない。

反映
 各クライエントとの関係から、今後必要とされる社会資源・サービスを考え、それらを反映させた地域社会の将来像を描いていくことが、特に地域のPSWには必要である。


図3:PSWのスタンスからみた視点の比較
図3

「A」のスタンスは所属機関内の資源やクライエントへ向けた視点のみの状態
 所属機関(病院・各種施設・関連グループ)内における目の前の業務に集中している場合、この状態となる。当然、すべてのPSWは多少の差はあっても、業務をこのスタンスでこなすことになる。しかし、このスタンスに終始していては、地域をとらえることはできない。視野の狭窄が起きやすく、利用者の社会参加が制限されたり、PSWの活動も限定的になりやすい。

「B」のスタンスは所属機関内だけでなく、外部の資源にも視点が向けられている状態
 所属機関から地域に一歩踏みだし、地域の資源をある程度見渡せる位置にスタンスをとっている。利用者のニーズをとおして、地域の資源とつながったり、地域の各種委員会、会議等でつながりをもつケースが多い。このスタンスでは、所属機関(及びその利用者)の利益と地域の利益のすり合わせを行う。そこにはPSWとしての倫理観と所属機関のニーズとの葛藤が起きやすい(たとえば、利用者にとっては他所の施設を利用したほうが望ましいが、所属機関のニーズから自施設を利用してもらうなど)。

「C」のスタンスは所属機関にとらわれず、外部の資源を広範囲にとらえ、地域を見渡している状態
 所属機関の利益を超え、地域の社会資源の現状を踏まえた上で地域の将来像を描くことが出来る。所属機関さえも、客観視することが求められる。ケアマネジャーや公的機関のPSWに特に求められるスタンス。ほとんどのPSWはどこかの機関に雇用されている為、このスタンスに常に身をおくことは非常に難しい。

 当委員会では、「地域のPSWとしての視点」には、所属機関にかかわらず、C のスタンスで地域をアセスメントできる柔軟さを持つことが含まれていると考えた。


図4:コミュニティーワーク実践におけるPSWの視野
図4

△前のページへ戻る