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<2004/05/19>

財政審、来年度予算について社会保障費抑制で取りまとめ

 5月17日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会(会長=貝塚啓明/中央大学研究開発機構教授・東京大学名誉教授)が開催さた。同審議会では、2005(平成17)年予算編成に係る基本的な考え方についての建議(意見書)をまとめ、谷垣財務相に提出した。(下記、資料抜粋参照)

 政府は5月11日の経済財政諮問会議で「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(骨太方針2004)の骨子案を提示しており、財政審の建議も踏まえ、6月初旬にも「骨太方針2004」を決定する予定となっている。

 いずれにしても、増加する社会保障費を抑制する方向で議論が進められており、国会で審議されている年金制度改革をはじめ、現在制度改正について厚労省において議論されている介護保険制度(2005年改正予定)、医療制度改革(2006年予定)にも影響を与えることは必至とみられる。(Asahi21≪F&M-Letter≫2004/05/17)

<参考>
・「平成17年度予算編成の基本的考え方について」(平成16年5月17日/財政制度等審議会 配布資料)
  → http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/top.htm

・「経済財政諮問会議」ホームページ(同会議の議事概要、配布資料等が閲覧・ダウンロード可能)
 → http://www.keizai-shimon.go.jp/index2.html


【資料抜粋】

「平成17年度予算編成の基本的考え方について」
(経済財政諮問会議/2004年5月17日)

(参考2)「平成17 年度予算編成の基本的考え方について」のポイント

 「2010 年代初頭のPB黒字化」、「政府の規模の上昇の抑制(潜在的国民負担率50%程度を目途)」との方針を確固たるものとすべく、徹底した歳出改革を推し進めるにあたり、財政の政策決定と執行に携わる者全てに厳しい反省と自覚を求める。

【総論】
1.当面の財政運営の考え方について
・現下の経済は、国主導の財政出動に頼らなくても、民需が主導する形で着実に回復。しかし、我が国の財政状況は極めて深刻。景気回復に伴い、仮に金利が急激に上昇すれば利払費が大幅に増加。財政健全化は急務
・17 年度予算編成においても、引き続き歳出改革路線を堅持し、国債発行額を極力抑制

2.持続可能な財政構造の確立に向けて
・社会保障、国と地方等の諸制度を、少子高齢化が進行しても維持可能とすることが重要
・制度改革を通じて、これまで伸びてきた社会保障関係費及び地方交付税交付金等を抑制
・財政健全化を達成したイタリア・カナダでは、社会保障制度改革等の結果、高齢化率の上昇にもかかわらず、社会保障給付額は抑制。我が国でも社会保障給付の伸びの抑制が必要

3.歳出改革の方向性について
・歳出の質を向上するため、メリハリを明確化、行政経費の見直しと削減を徹底
・公会計の整備に努めるとともに、「PLAN−DO−SEE 」のプロセスを強化すべき
・特別会計について、改革努力を継続するよう求める

【各論】
1.社会保障
・年金、医療、介護等を総合的に捉え、負担の総量を抑制(政府規模の抑制方針を踏まえた社会保障給付費の中期的目標の設定等)
・介護は、自己負担率の引上げ(2 〜3 割)、ホテルコスト・食費等の給付除外、保険免責制度の導入検討、低所得者の範囲の限定、保険者機能の強化、民間参入の更なる促進、総供給管理方式の導入等
・生活保護は、生活扶助基準の引下げ、母子加算等の廃止、地方公共団体による適正化、自立・就労支援の推進と生活保護費負担金の見直し
・医療は、次期制度改革において、公的保険がカバーする疾病、医薬品等の範囲の抜本的見直し、高齢者医療コストの縮減、都道府県単位の自立的な保険運営の確立等・雇用は、雇用維持支援・雇入れ助成から労働移動支援・ミスマッチ解消等へ重点化

2.国と地方
・国と地方の行財政改革に関し、国と地方の意思疎通、国民への分かり易い説明に努める
・地方の自立を実現するための改革の推進(補助金改革等による地方の権限・責任の拡大、地方交付税について財源保障機能の見直し等「自立支援型」改革)
・地方財政計画の地方公務員給与、地方単独事業等、歳出各項目の見直しによる地方交付税総額・地方財政計画規模の抑制、地方交付税の算定方法の単純・簡素化
・補助金改革は、「基本方針2003」や政府・与党合意(15年12月)を踏まえ、地方の自由度の拡大、国・地方を通じた行政のスリム化を図る観点から、個々に見直しを推進

3.公共事業
・社会資本整備の進捗や社会・経済の変化を踏まえ、今後は既存ストックの有効活用が重要な課題
・公共投資については、「改革と展望」にあるように、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安に引き続き着実に重点化・効率化。公共投資の対GDP比は、今後とも、主要先進国の水準も参考としつつ、中期的に引き下げていくことが必要
・効率化・透明化のため、公共事業コスト構造改革、事業評価等の取り組みを徹底

4.文教・科学技術
・義務教育費国庫負担制度について、「基本方針2003」等を踏まえ、地方の自由度をさらに拡大するための改革を推進
・現行法(人材確保法、義務標準法等)の廃止も含めた抜本的見直し
・国立大学法人については、効率的運営を求めつつ客観的かつ厳格な事後評価により支援の重点化を図るとともに、受益者負担の徹底等を踏まえ学生納付金標準額を設定
・科学技術予算は、民間の研究開発投資が困難な分野を厳選し措置すべき。重点4分野への絞込み、質の高い研究者等への的確な資金配分、中間評価に基づく施策の見直しが必要

5.防衛
・新たな防衛大綱及び中期防衛力整備計画の策定に際し、わが国の厳しい経済財政事情等を勘案し、自衛隊の既存の組織・装備の抜本的な見直し・効率化を行い、防衛関係費を抑制

6.政府開発援助(ODA)
・国益重視の下、徹底した効率化を図り、引き続きODA予算の規模を縮減
・国際貢献に関する財政支出は年々増大。ODAを含めこうした経費全体の圧縮を図る必要

7.農林水産
・施策の「担い手」への集中を基本とした農政改革の着実な推進
・農家への直接支払の導入については慎重に検討すべき問題があることにも留意する必要
・麦政策改革等による食糧管理特別会計の健全化、中山間地域等直接支払制度の抜本的見直し

8.エネルギー対策
・エネルギーの安定供給の確保や温室効果ガスの排出抑制等に適切に対応しつつ、事業の見直し等を通じた施策の効率化・重点化・特別会計の不用・剰余金の縮減

9.中小企業対策
・やる気と能力のある中小企業の自助努力への支援に重点化
・中小企業基盤整備機構は、独法の特徴を活かし事業を一層効率的かつ効果的に行うべき
・中小企業信用保険制度の部分保証や政策金融に関するリスクに見合った金利設定等の制度改善を図るべき

10.治安対策・司法制度改革
・治安関係部局につき、民間活力の活用等により効率的かつ機動的な体制作り
・司法ネットの効率化。司法修習生手当の貸与制化。裁判官・検察官給与の在り方の見直し


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