<2005/03/11>
さる3月5日(土)、戸山サンライズ(東京都)にて、「権利擁護に関するシンポジウム〜安心して暮らせる地域ネットワークづくり−精神障害者の権利擁護をめぐって−」を開催しました。
当日は、61名の参加者にお集まりいただき、講演とシンポジウムの2本立てというプログラムで実施しました。
本ページでは、シンポジウムの様子につきまして、権利擁護委員会からの報告記事を掲載します。
▲大石氏による講演の様子 |
プログラム
* 講演「障害者の権利擁護システムについて」
<講師>大石剛一郎(弁護士/湘南ふくしネットワーク・オンブズマン)
* シンポジウム「権利をまもるネットワークづくり〜現状の問題点と課題〜」
<シンポジスト>
・「行政機関の立場から」
塙 和徳(埼玉県健康福祉部障害者福祉課精神保健担当)
・「自分らしく地域で暮らすために」
比留間敏郎(地域あんしんセンターたちかわ/社会福祉法人立川市社会福祉協議会)
・「自律支援センターさぽーとのサービスと可能性」
小和瀬芳郎(特定非営利活動法人自律支援センターさぽーと理事)
・「権利をまもるネットワークづくり〜現状の問題点と課題〜」
金成 透(社団法人日本精神保健福祉士協会 企画部 権利擁護委員)
<コーディネーター>
伊藤秀幸(社団法人日本精神保健福祉士協会 常任理事・企画部長)
(敬称略)
内容
<講演>
権利と権利侵害の基本的概念、湘南ふくしネットワーク・オンブズマンの活動、権利擁護システムについての内容であった。
権利侵害は本人に対し回復しがたい心身の傷痕を残すため、救済よりも防止が重要であり、三つの対策が考えられる。
第一に法律的側面では、差別防止法、障害者虐待防止法を作る事が重要である。第二に権利救済機関等で地域福祉権利擁護制度、成年後見などの色々なシステムを入れれば、どこかで権利侵害の芽を摘むことができる。ただし、権利救済機関でさえも、権利侵害を起こす構造的原因がある。第三に最も重要なのは、権利侵害を起こさない地域づくりである。
<シンポジウム>
塙氏:受診相談においては、周囲の困っている家族や住民などの主観で相談を進めるのではなく、必ず本人からの情報を中心にする必要性がある。精神病院の実地指導業務の中で、入院についてPSWは、本人が治療を理解するプロセスや入院同意のチェックに関わるべきである。また、社会の常識が医療では抜けているので、PSWは病院スタッフと共に考えていく視点が必要である。
比留間氏:地域あんしんセンターたちかわの事業内容について具体的事例を交えた説明。相談は金銭の問題だけでなく、サービスにつながっていなかったり、治療や服薬が上手くいかなかったりなどの様々な問題がある。今後の課題として、地域生活を支えるサービスが不足しているので対策を地域で協議する予定である。また、低所得者対象に東京都が成年後見制度活用制度を創設する動きもあり、あんしんセンターが法人後見を受ける事も検討している。
小和瀬氏:さぽーとのサービスとPSWへの期待について。特にPSW協会へは、法人後見受任への強い期待を語った。
金成氏:権利擁護委員会の活動経過と委員会が現在の権利の問題と捉えている事について以下の7点に集約した。1福祉サービスの第三者評価の必要性、2サービスの苦情解決の仕組みづくり、3病院機能評価への権利擁護の視点の盛り込み、4医療サービスにおける苦情対応の制度化、5成年後見制度の活用、6地域福祉権利擁護事業の活用、7医療における権利侵害への対応。
参加者のアンケートでは、協会に望む事として、1)権利擁護に関する継続的な研修、2)社会福祉士会等他団体との協働、3)法人後見受任があげられていた。