<2004/01/05>
日本精神保健福祉士協会 会長 高橋 一
わが協会は、1964年の創立、1997年の国家資格化を経て、今年は社団法人化が見込まれる年である。今年行われる第40回富山大会が当協会の発展にとって大きな節目になることを期待したい。
しかし、わが協会の節目節目が、PSWとして精神障害者の生活を支える社会的役割を果たしてきたとは言えない。今までPSWがPSWの利益になる活動をし、会員の間で議論してきたことはたくさんある。今年発行予定の協会40年史に詳しく書かれると思うが、その時代に流されたと思われる点も多い。法人化というのは、団体として社会的責任が生じる。時代に流されたとは書いてないが、厚生省監修の精神保健福祉士法詳解の1ページに、「我が国の精神衛生法以後の精神保健施策は、収容主義であった」と読める一文がある通り、精神衛生法以降、精神科病床は増え続けた。最近、厚生労働省は精神科病床を減らすと言っているが、わが国の地域保健医療計画では、精神科は一県一圏域であるので、地域差のある精神科病床は、統計的に見てもまだまだ増床されてしまう可能性はあるだろう。
精神保健福祉士が社会的地位を確立したならば、その本務である精神障害者の社会復帰と人権擁護を推進しなければならない。先日ある会合で、ハンセン氏病の権利とそのスティグマを取り除く活動をされた大谷藤朗先生が「ハンセン氏病の人権問題で未だに私に相談がくる。私は80歳になった。もう若い人が人権問題に取り組んでほしい」としみじみ語っておられた。厚生労働省も人権に関して、1990年頃には「人権」という言葉は「ギラツク」と嫌っていたが、最近できた地域福祉権利擁護事業では、その厚生労働省自身が「人権」という言葉を「財務省」が予算をつける関係で使った方が良いと言ったと関係者から聞いた。
当協会が団体として社会的責任を持った暁には、精神障害者の社会的地位の向上に積極的に取り組めるような社会的活動を行える新しい年にしよう。
(PSW通信128「巻頭言」/2004.1.1より)