公益社団法人日本精神保健福祉士協会 刑事司法精神保健福祉委員会 主催

<刑事司法福祉ZOOM勉強会>
「【刑事】司法に福祉が必要となったわけ」 終了後のご報告

第2回(12月5日開催分)

【参加者の感想】

 第1回に続き、2回目も参加させていただきました。
 今回も有意義な時間でした。1時間半の限られた枠の中で、3人の実践されている専門職の方の講義を聞くことができ、グループワークでは講義で得た気付きを分かち合う時間を持つことができました。遠く離れた地域の方と話すことができるのはZOOM研修の利点と感じました。
私は、地域包括支援センターに勤務しています。高齢分野ですが、地域の相談を丸ごと受け止める窓口故に、雑多な相談が寄せられます。虐待対応ケースでは、警察・裁判所・弁護士との連携も多く、職員に刑事司法の知識が必要と感じています。今後もこのような分野を学べる機会があれば積極的に参加したいと思います。
 本勉強会では福祉職なら当たり前の支援が、刑事司法の中ではまだまだ浸透していない現状を学びました。高齢者を30〜60日も拘置所に留置すればADLが下がり歩けなくなる・認知機能が低下する方がいるのは福祉職なら周知している事柄です。逆に刑事司法分野の専門職からは福祉の人は話が通じないと感じられる面があると思います。多職種間で、お互いが得意領域を認め合い、連携することで目の前の人を支援していく姿勢があらためて大切と感じました。

(吹田市 吹三・東地域包括支援センター 大阪府支部 廣瀬英理子)

  


【講義後の質問と回答】

テーマ:「更生保護に福祉が必要となったわけ」
講師:西崎 勝則(奈良保護観察所、刑事司法精神保健福祉委員会 助言者)

 

1) 保護司になるには具体的にどうすればよいのでしょうか?

(回答者:西崎勝則)

 保護司のなり手不足は深刻な問題であり、保護司に御関心をいただけることは、大変ありがたく思っております。
 さて、保護司は、保護司法の定めにより、保護観察所の長において、保護観察所長が設置する保護司選考会の意見を聞いた上で法務大臣に推薦し、その推薦者のうちから法務大臣が委嘱することとなっております。
 したがって、保護司になることを御希望される方は、まずは、お住まいの地域を管轄する保護観察所(企画調整課)にお問い合わせください。

全国の保護観察所の一覧(法務省WEBサイトへリンク)
 なお、同じく保護司法第3条には、保護司の具備条件として、
  一 人格及び行動について、社会的信望を有すること。
  二 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。
  三 生活が安定していること。
  四 健康で活動力を有すること。
 が求められています。

さらに、保護司の欠格事由についても、保護司法第4条に規定していますので、御留意願います。
保護司法(e-GOV法令検索へリンク)

 

2)保護観察官で精神保健福祉士の資格を取得している人のデータはありますか?

(回答者:西崎勝則)

 法務省保護局によると、全国の更生保護官署(保護観察所・地方更生保護委員会)に配置されている保護観察官のうち、精神保健福祉士の資格を有している者の数は把握できておりませんが、更生保護官署職員に対し、精神保健福祉士の資格を取得するための専門学校等への受講に係る経費を国費で支弁する取組をここ5年ほど進めており、この取組により、年間10名ほどの職員が精神保健福祉士の資格取得に至っているとのことです。
 これに限らず、更生保護において、精神保健福祉分野に明るい人材の必要性は高まっており、精神保健福祉士の活躍の場として、更生保護も視野に入れていただければと思います。

 

3)医療観察法対象者の家族支援について、もう少し詳しく聞きたいです。

(回答者:向井克仁)

 「処遇実施計画」「個別治療計画」に基づいて、定期的なスタッフとの面談や社会復帰調整官の訪問に加え、その他各機関においては具体的な個別支援がなされている機関もあります。
 広島県においては、県内の指定入院・通院医療機関、保護観察所等のスタッフが定期的に開催している勉強会を母体に家族教室を企画・実施しました。当時、家族支援の必要性を感じつつも、機関ごとでの具体的支援が難しかったこともあり、勉強会を母体に県内合同で企画。周知は、社会復帰調整官から声掛けを行い、計6回、延べ50名程度のご家族にご参加頂きました。
 運営は勉強会スタッフが担い、内容は毎回講義+座談会形式で行いました。初回は医療観察法の理解が曖昧であったこともあり、保護観察所から制度説明等を行い、その後の座談会では、医療観察法により社会復帰の難しさや、ご本人への具体的なかかわりの悩み等が共有されました。2回目以降は、座談会や実施後のアンケートの内容を基に、運営側で企画し、ストレスとの上手な付き合い方、就労支援について等をテーマに実施しています。 就労支援の回では、医療観察法の処遇終了後、具体的な一般就労へつながった方の具体的な体験談等もありました。
 医療観察法のご家族は疾患等への誤解や偏見に加え、対象行為の特殊性等から外部に支援を求めることが難しい方も多く、孤立感や疎外感を抱える傾向にあります。また、対象者については法に基づいて具体的な支援が図られますが、ご家族については具体的な取り決めがない状況です。このような家族教室は最大の支援者でもあるご家族の疾病や法制度等の理解を深め、悩みを共有する場として有効な支援であると思います。

 

4)保健所で働いています。26条通報で帰住地未定の方について、支援が必要に感じたことが何度もあります。通報を受けると、措置診察が必要かどうかという対応しかできないため、消化不良感を持ちながら対応することも。参加者の方で、出所者の支援にかかわっている実例があればお聞かせください。

(回答者:喜多見達人)

 私は矯正施設に勤務していますが、直接26条通報の担当ではなく、担当している刑務官から相談を受けている実例から回答させていただきます。ご質問いただいた方の期待に沿う内容ではないかも知れないことを最初にお詫びいたします。
 26条通報をご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので条文を記載いたします。

 

※精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
第二十六条 矯正施設(拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院をいう。以下同じ。)の長は、精神障害者又はその疑のある収容者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめ、左の事項を本人の帰住地(帰住地がない場合は当該矯正施設の所在地)の都道府県知事に通報しなければならない。
一 本人の帰住地、氏名、性別及び生年月日
二 症状の概要
三 釈放、退院又は退所の年月日
四 引取人の住所及び氏名

 

 法律に定められた通りの項目に限り、通報することが正しい手続きなので、質問者の方がおっしゃられた通り、措置診察の要否しか対応いただけないこととなります。実際に措置診察となるケースは極めて稀であり、受刑前の生活環境の観点から地域での福祉的支援につなぐ必要性を感じても、本人同意の仕組みが整備されておらず、個人情報保護の観点から保健所を含めて地域の支援機関に情報共有が困難な現状です。刑務官と相談し必要性は認められても、法律や通達の定めにない動きが取れない消化不良感は矯正施設側の担当者も持っています。私のお話した内容は26条通報に該当する事例ではありませんが、法律や通達が未整備であっても福祉的支援につなげる必要性から本人同意を得た後に支援した事例です。ほんの少しずつでも福祉的支援が出所後に必要と思われるケースは、法律や通達が未整備であっても外部の支援機関、ソーシャルワーカーにつながっていく意識をもっていきたいと考えております。

 


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